症状が悪化

会社を休んでいる間、娘は不調の大きな原因であるSNSを一切見ませんでした。
趣味にも打ち込めない。唯一、他人とのつながりだったネットも遮断。行くところもすることもない。会社に通っていないので話し相手は母親である私だけ。時間と体力が有り余る娘の相手を一日中するのは、それはそれは大変でした。

気分のアップダウンも大きく、楽しそうに話していたかと思えば、急に落ち込んだりする娘に振り回され、私は対応に手を焼きました。

「会社や仕事が嫌いなわけではない。けれど体調を崩して会社を早退してしまうことが申し訳ないと感じている。かといって以前のようにフルタイムで働く自信がない」

娘には嘔吐や希死念慮の症状も出始めました。

長引く娘の休職に心身ともに限界を迎えてしまった私

それまでは私は、“家を娘にとって居心地の良い場所にしよう”と努めていました。
娘の話し相手になったり、平常を心掛けて接したり。ときには娘の気持ちが上がるように、意識して盛り上げるような発言をしたり。

でも娘の休職が長引くにつれて私にも疲れが出始め、会社とのやり取りや支援者との連絡、娘の体調・経過記録をつける作業が徐々につらくなっていきました。
入社1年目のときに構築された娘を支えるチーム体制があるのにも関わらず、娘が自ら支援者に相談しようとしないことにも歯がゆさを感じました。

「娘は、受動型でもともと自分から行動を起こすタイプじゃない」
「不調の大きな原因が仕事上のことではなくプライベートなことだったので支援者に相談しづらかったのかもしれない」
「コロナ禍で以前ほど身動きが取れないから仕方ない」
私はなるだけポジティブになろうと自分を鼓舞しました。

でも、だんだん
「どうして娘は私にしか相談しないのか」
「支援者に直接会うことはできなくても電話やメールでも相談はできるはず」
「家には娘以外の家族もいる。私が娘だけにつきっきりになるわけにはいかない」
「学生なら“あと何年間で卒業”といった終わりがある。でも卒業後の人生はずっと続く。この状態は一体いつまで続くのか」
と思うようになり気分がふさぐようになりました。

そして娘が休職して1ヶ月ほどが過ぎたころから、私は何もする気が起きなくなってきました。
娘の経過観察の記録も、病院のつきそいも、娘の話し相手になるもの嫌になってしまったのです。
実際嫌になってやめてしまったのか、疲れ果ててできなくなってしまったのか、その辺りの記憶は曖昧です。記憶が抜けているということは、当時の私は相当まいっていたのでしょう。
私は支援者の方々に「疲れて果ててしまいました」と連絡をしました。

動いてくれた支援者の方々。そして…

それからは、卒業校の先生と基幹相談支援センターの支援員さんが娘の対応をしてくれるようになりました。

娘の卒業した高等特別支援学校は、卒業後3年間は就労定着支援を担うことになっていました。(4年目以降は地域や民間の就労定着支援事業所に移行する)
娘はこの年ちょうど卒業3年目で学校の支援が受けられる最後の年度でした。
3年の間に娘を知る先生の多くが別の学校に異動になっていましたが、幸いにも娘と相性が合う先生がまだ学校に勤務していました。

支援者の皆さんはかつて構築したチーム体制で、娘のケアにあたってくださいました。
それまで私が段取りしていた娘との面談も、私を通さず直接本人やり取りをしてくれるようになりました。

しばらくすると娘自身も私の変化に気がつき始め「家が居心地悪い」と言うようになりました。
そしてコロナの感染対策に注意を払いながら、支援者に相談に行くようになりました。

一方で私も、支援者との面談を行い『暫定6ヶ月』という休職期間を、ただ漫然と過ごすだけではなく、娘が前向きになれるような見通しや目標を“失敗した場合のフォローも考慮しつつ”考え始めました。

それが『グループホーム入居』に向けた取り組みでした。

その具体的な内容はまた別の機会に書いていこうと思います。

執筆/荒木まち子
(監修:三木先生より)
このケースで一番ポイントになっているのは、娘さんが「家が居心地が悪い」とちゃんと思えたこと、言えたこと、そして自分から解決のためのアクション(支援者に相談するために出かける)が取れたことです。自分自身で何がしんどいか分かること、それを解決するために人に頼るという選択肢が取れたことは娘さんの武器ですね。
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