「100回書け」で勉強嫌いに…ひらがな学習「負のループ」に陥らない!覚えやすい教え方と添削の工夫

2021/10/03 更新
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「覚えるまで、100回書きなさい!」、
「もっときれいに書きなさい!」
「ほら、そこ違うでしょ、書き直し!」

親は良かれと思って ついついこれらの言葉を口にしてしまいますが、子どもはどう感じているでしょうか。

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立石美津子
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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 客員研究員
応用行動分析学をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のための様々なプログラムを開発している。

ひらがな学習について、特別支援学級の先生の言葉

私の友人に、現役の特別支援学級の先生がいます。その友人が「ひらがな負のループ」について教えてくれました。

①字がうまく書けない
②ひたすら書く、注意される→でもうまく書けない
③取り組みが嫌いになる
④うまく書けないので、さまざまな書く学習でつらくなる
⑤学習に苦手意識をもつ
⑥さらに注意される


ひらがなは、小学校に入ってすぐに学ぶもの。そして、今後ずっと使い続けるさまざまな文字の初期段階。
これが嫌いな取り組みになることで、子どもは別の場面でもつらくなってしまうのだとも教えてくれました。

字は一生付き合っていくもの。ひらがなの学習での「できた」が、カタカナや漢字を始めるときにも「やってみよう」という気持ちの基礎になります。そういう意味でひらがなは、とても大切な第一歩です。けれども、いまだ「書いて覚える」文化は根強くはびこっています。10回、20回、覚えられない子には30回、40回と、ひたすら書かせて覚えさせる場面はまだまだ多くあります。

実際、私も現場で、そうしてきた経験があります。でも、指導の中で、書く回数と、覚えるスピードは、必ずしも比例しないようにも感じていました。

保育園、幼稚園で

幼児教室で教える著者
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私は長年、幼稚園・保育園で年中児、年長児にひらがなを教える仕事をしていますが、直されたり注意されたりして、「よし頑張ろう」と奮い立つ子に出会ったことがありません。
細かすぎるチェックの例
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また、
「まるで、虫眼鏡でチェックするかのような添削をする」
「消しゴムを使って、何度も書き直しをさせる」
「他の子と比較して評価する」

これらも同様に「文字嫌い」の子をつくってしまう要因となると感じていました。

印象に残る教え方が必要

そこで、苦行にならない文字の教え方を考えてみました。

例えば…

「5」の書き順の覚え方

小学生になっても、数字の「5」の上の部分の横棒を先に書いてしまう子がいます。筆順を「1番→2番…」と教えても、子どもにとっては単調でつまらない覚え方なので、すぐに忘れてしまい、また同じ間違いをします。
5の書き順の教え方
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このようなときは「お出掛けゴーゴー(55)! 出掛けるときは最後に帽子をかぶるよね。ここ(5の横棒の部分)は“帽子”なの。だから、先に“体”を書いて、最後に帽子をかぶろうね」。

こう教えると、書き順を覚えられなかった生徒がすぐに正しい筆順をマスターしたのです。
絵描き歌の要領で教える
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「も」の筆順

次に、ひらがなの「も」。これも筆順を間違えて覚えている子が多い文字です。カタカナの「モ」は横棒が先ですが、ひらがなは「し」のようなクルンとした部分を先に書き、次に横棒を2本書きます。

でも、筆順を「1番→2番→3番」と練習しても、子どもはすぐに忘れてしまいます。「尻もちドーン、でも、腕2本で何ふんばるよ!」と覚えると忘れないようです。
「も」の教え方
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「よ」

小学校では、ひらがなの「よ」の結びの部分を「リボン結び」と教えることもあるようです。ですが昨今、子どもたちにとってリボンはどのくらい身近なものでしょうか。具体的な形が思い浮かぶ子は少ないようです。

あるとき、年中児17名に「これなにに見える?」と聞いてみました。すると「おたま!」と言う子が結構いました。そこで「最後は『おたま』を書いてね」と教えると、子どもたちは実にきれいにお玉を書くことができました。
「よ」の教え方
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「あ」 

「ここ何に見える?」と子ども達に聞いたら、「魚」「タケノコ」などの答えの中で、圧倒的に多かったのが「マヨネーズ」でした。そこで。私は「ここはマヨネーズの形にしてね」と教えました。
「あ」の教え方
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受験勉強で使った「年号の覚え方」と同じ

どうして、これらの教え方で正しい筆順をマスターできるのか、考えてみました。それは子どもたちの印象に残りやすいからだと思います。

歴史の年号を語呂合わせで覚えた経験が私にもあります。例えば、「遣唐使が廃止されたのは894年」と覚えても忘れてしまうので、「船酔いで吐くよ(894)、遣唐使廃止」と覚えました。

個人の経験に結びつけながら覚えるエピソード記憶をうまく活用しながら覚えるのもいいと思います。子どもに文字を教えるときは、印象深くて面白い教え方を工夫することで、勉強を苦行にしないですむのではと感じます。

添削の仕方の工夫

添削のしすぎも避けたいものです。子どもはダメ出しをされすぎると、学習意欲をなくしてしまうからです。
真っ赤に添削された「ほ」
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子どもの書いた文字を真っ赤っかになるまで添削するのではなく、書かれた中で一番うまく書けた文字を見つけて花丸をしてあげると、子どもは意欲的に文字を練習するようになると感じています。
よくできた文字にはな丸を付ける例
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こんな歌を作ってみました。自分が言われる側になったらと想像したら…子どものやる気を引き出す関わり方ができるのではないかなと思います。

「0点とったら怒鳴られて
30点とっても怒鳴られて
60点とったら 平均点以下だと 怒られて
90点とったら、”なんでこの10点 取れなかったんだ”と叱られて
やっと100点取れたら「これを維持しなさい」と釘を差された!

ああ何をやっても 僕の母さんはダメだし母さん
ああ、僕はゴールの見えないマラソン選手
これじゃ、人生楽しめない!」

執筆/立石美津子

(監修者・井上先生から)
文字は読めても書くのに苦労するという話は、学齢期のお子さんの相談を受けている中でよく上がってきます。
ひらがなの学習などでつまづかない工夫はとても大事です。修正の仕方も大切で、消しゴムで消すことが不器用で苦手なお子さんや、消してから書き直すことに抵抗感があり新しいプリントを使ったほうが学びやすいお子さんなどもいます。学校の先生方にも理解が広まり、宿題の出し方などにも工夫があるとよいと思います。ご家庭でも、タブレットやパソコンなどで合理的配慮をお願いする前に、今回紹介されたような覚えやすい工夫を試し、お子さんに合う方法を見つけるのも大事だと思います。

このコラムを書いた人の著書

動画でおぼえちゃう 笑えるひらがな
立石美津子
小学館クリエイティブ
子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方
立石美津子
すばる舎

このコラムの著者親子がモデルの本

発達障害に生まれて
松永正訓
中央公論新社
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