どうして癇癪がおさまらないの?3歳息子との寝かしつけドライブで「母親失格」と涙した日々

ライター:まゆん
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太郎は小学6年生。自閉症スペクトラムがあり、特別支援学級(情緒クラス)に在籍しています。今回は、保育園から指摘を受ける前までの話です。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

癇癪に困り果てて

保育園3歳未満児クラスまでの太郎は、保育園側からは特に問題になる行動はないということで指摘されることはなかった。

しかし、家での太郎の行動に私は手を焼き続けていた。一番困っていたのは癇癪で、一度癇癪が起きると手もつけられないくらいだった。耳が痛くなるほどの大きな泣き声とともに、手足をバタバタさせたり、床や壁に頭を叩きつけたり、なだめようと声をかけると余計にエスカレートした。
一番困っていたのは癇癪で、一度癇癪が起きると手もつけられないくらいだった。
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太郎との夜のドライブ

思い出に残っているのは、連日寝る前に癇癪が起きる時期があり、夜のドライブに2人で行っていたことだ。

泣きわめく3歳の太郎をチャイルドシートに乗せ、車を走らせた。車を走らせると数分後にはいつも静かになり、ヒックヒックと泣き声もおさまっていた。
泣きわめく3歳の太郎をチャイルドシートに乗せ、車を走らせた。
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家の近くには夜になるとイルミネーションが点灯する大きな家があった。そこを通るのが日常だった。まだ涙が流れた痕が残っている太郎もそこを通ると、「あった あった!」と嬉しそうに反応していた。

チカチカとついたり消えたり、いろいろな色が点灯していた。それを太郎は真剣に見ていた。
チカチカとついたり消えたり、色々な色が点灯していた。それを太郎は真剣に見ていた。
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私はゆっくりゆっくり車を進めた。イルミネーションで太郎の瞳についてる涙もキラキラとしていた。ああ、よかった、泣き止んだ…。

なぜ癇癪を起こしているのかハッキリとわからず、わが子とどう向き合えばいいのかと私は日々悩んでいた。仕事の疲れや育児への不安。そして余裕がないことでの苛立ちでギリギリの状態だった。

「さっきはついつい乱暴に抱っこしちゃったな…」車に乗せるために太郎を抱きかかえた際に、乱暴ぎみに抱っこしてしまったのだ。『静かにして静かにして静かにして静かにして!!!暴れないで!!!』心の中でそう叫んでいた

ときには一緒に泣きながらドライブをしたこともあった。
ときには一緒に泣きながらドライブをしたこともあった。
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そんな中でのイルミネーション。

そして太郎のキラキラした瞳と、「あった!あった!」という高くてかわいい声。
太郎のキラキラした瞳と、「あった!あった!」という高くてかわいい声。
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私は何をこんなにイライラしていたのだ、こんなにかわいいのに…母親失格ではないのかとまた涙が流れた。

機嫌がよくなった太郎を乗せて、太郎が好きな音楽をかけ、太郎が寝るまでドライブは続いた。瞼を閉じて眠る太郎を見ると、癇癪を起こしていたとは思えないくらい表情が柔らかかった。長いまつ毛は涙で濡れていて心が痛くなった。

チャイルドシートから下ろすために抱っこしても起きることもなく、私の肩に顔をのせ気持ちよさそうに眠っていた。小さな太郎を抱き抱え家に着くと母が心配そうに迎えてくれた。「大丈夫?」と。
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母の奥には太郎を寝せる為の布団が用意されていた。ああ…助かるな…。このころの私は、こうしてさり気ない母のサポートに何度も助けられていた。『1人では育てられないな…』そう思いながら感謝していた。

太郎を寝かせて、ようやく一息。そして私は自分の気持ちを母に話す。癇癪を起こすのはなぜなのか、どこか具合いでも悪いのか、異常なのか正常なのか、異常とはなにか正常とはなにか、話はどんどん深く、広がった。答えはなかったけど、母との話で私の気持ちは穏やかになった。しかし「発達障害」という言葉が頭をよぎる毎日だった。

それから数ヶ月後、太郎は年少クラスになった。年少クラスになって間もなく保育園側から太郎の行動に対する指摘があった。「集団行動に参加しない、突発的に園庭の滑り台まで飛び出る、1人保育士がついていないと作業が厳しい」という内容であった。

やはり…そうか…という納得と、なぜか動悸が止まらなかった。

あとがき

発達障害かもしれないと思っている自分と、大丈夫そんなことないと思っている自分がいました。もっと正直に言うと、発達障害であって欲しくないと思っていたのだと思います。「普通」に育って欲しいと願っていたのです。「普通」から外れることが怖くて、嫌で、太郎に対してイライラしていたのだと…。今だからそう冷静に振り返ることができます。

自閉症スペクトラムが、私と太郎の「普通」になるまで、私はこうして不安と苛立ちの中でもがいていました。

執筆/まゆん
(監修:井上先生より)
親御さんが、この記事のように診断前の出来事や自分の気持ちを振り返ることは、つらく大変なことだと思います。発達の偏りや遅れに気づいてから専門機関に相談に行かれるまでの間は、「相談したい気持ち」と「否定したい気持ち」の葛藤に悩まれていたと推察します。最初の相談は気持ち的にハードルが高いと思いますが、まず身近な人に(この記事ではお母さん)自分の不安について話すことから始めてみるとよいですね。
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