6歳で発語ゼロの自閉症息子。いつか話せるようになる?絵カードを使ったほうがいい?親ができることはーー児童精神科医 三木先生に聞いてみた!
ライター:ぼさ子
自閉スペクトラム症と知的障害のあるほぺろうは現在6歳ですが発語はゼロ。「いつか必ず喋る」と発達クリニックで言われたりしますが、正直そうなる想像ができず…。そして発語したとしても意思疎通として言葉を使いこなすのは難しそうです。一体何をどこまでやれば良いのか?ゴールはあるのか?先の見えない発語の悩みを三木先生に相談させていただきました。
監修: 三木崇弘
社会医療法人恵風会 高岡病院 児童精神科医
兵庫県姫路市出身。愛媛大学医学部卒・東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科博士課程修了。早稲田大学大学院経営管理研究科修士課程修了。
愛媛県内の病院で小児科後期研修を終え、国立成育医療研究センターこころの診療部で児童精神科医として6年間勤務。愛媛時代は母親との座談会や研修会などを行う。東京に転勤後は学校教員向けの研修などを通じて教育現場を覗く。子どもの暮らしを医療以外の側面からも見つめる重要性を実感し、病院を退職。
2019年4月よりフリーランスとしてクリニック、公立小中学校スクールカウンセラー、児童相談所、児童養護施設、保健所などでの現場体験を重視し、医療・教育・福祉・行政の各分野で臨床活動を行う。2022年7月より社会医療法人恵風会 高岡病院で児童精神科医として勤務。
6歳で発語ゼロ、たとえ発語しても言葉でのやりとりは難しそう
わが家の息子ほぺろうは現在保育園の年長さん。自閉スペクトラム症と中度知的障害の診断を受けています。
ほぺろうはもう6歳ですがいまだに発語がなく…。私としては「喋ったとしても意思疎通として言葉を使いこなすのはまだまだだろうな。だったら発語にこだわらなくてもいいかも…」という気持ちもありつつ、「どこが痛い、具合が悪いくらいは教えてくれるようになってほしい」という願望もあります。
なので発語を促すべく『言葉を浴びせる』ことも日々行っていますが、言葉以外のコミュニケーションに力を入れるべきか悩んでいます。
ほぺろうはもう6歳ですがいまだに発語がなく…。私としては「喋ったとしても意思疎通として言葉を使いこなすのはまだまだだろうな。だったら発語にこだわらなくてもいいかも…」という気持ちもありつつ、「どこが痛い、具合が悪いくらいは教えてくれるようになってほしい」という願望もあります。
なので発語を促すべく『言葉を浴びせる』ことも日々行っていますが、言葉以外のコミュニケーションに力を入れるべきか悩んでいます。
ほぺろうはツールに頼ると発語しなくなるかも?
ぼさ子(以下、――): 以前「ほぺろう君は絵カードなどに頼りきると発語しなくなるかも」と言われた経緯があり、わが家では積極的には絵カードを使用していません。もっとちゃんと取り組んだほうが良いでしょうか?
三木先生:言葉以外の方法となると、『ジェスチャー』や『ハンドサイン』などがあって、喋らないお子さんのいる家庭で使っている方は多いですね。言葉以外のツールを使うことで喋らなくなってしまうかは正直分からないですが、障害のあるお子さんに限らず1~2歳くらいの子どもだとほかの簡単なツールがあると言葉が伸び悩むというのは理屈としては分かります。
ですが、言葉を使う必要性は何か?と考えると「思っていることを伝えたい・相手のことを分かりたい」という『意思疎通したい』欲求なんですね。
それに、『頭の中のことを相手に伝える→相手のことを受け取って理解する』という複雑なコミュニケーションが必要・できるという感覚が分からないと、そんなに複雑な意思疎通をする必要性を感じないものです。例えば、絵カードやジェスチャーならしてくれるけど言葉は使わなくてもいいや~くらいのニーズレベルのお子さんだと、絵カードがなければコミュニケーションしなくていいと思っちゃう…なんてことも見られます。
三木先生:言葉以外の方法となると、『ジェスチャー』や『ハンドサイン』などがあって、喋らないお子さんのいる家庭で使っている方は多いですね。言葉以外のツールを使うことで喋らなくなってしまうかは正直分からないですが、障害のあるお子さんに限らず1~2歳くらいの子どもだとほかの簡単なツールがあると言葉が伸び悩むというのは理屈としては分かります。
ですが、言葉を使う必要性は何か?と考えると「思っていることを伝えたい・相手のことを分かりたい」という『意思疎通したい』欲求なんですね。
それに、『頭の中のことを相手に伝える→相手のことを受け取って理解する』という複雑なコミュニケーションが必要・できるという感覚が分からないと、そんなに複雑な意思疎通をする必要性を感じないものです。例えば、絵カードやジェスチャーならしてくれるけど言葉は使わなくてもいいや~くらいのニーズレベルのお子さんだと、絵カードがなければコミュニケーションしなくていいと思っちゃう…なんてことも見られます。
『理念より行動』、良い体験の積み重ね
三木先生: ほぺろう君はジェスチャーで意思を伝えてくるんですか?
――「ちょうだい」と「ごめんなさい」の2つだけです。
――「ちょうだい」と「ごめんなさい」の2つだけです。
三木先生:二ーズからやっているのか、ものごとがスムーズに進むからやっているのか。『理念か行動か』という議論が子育て全般でよくあるんですけど、子どもは小さければ小さいほど『方法から入らざるをえない』んですね。
なんかよく分からないけどこの行動をしたら褒められた→またやろうみたいな。現象からスタートするものなんです。やりとりする経験を積み重ねることで「人とコミュニケーションするのっていいかも!」と思える貯金をしています。
絵カードにしろジェスチャーにしろ、やりとりした結果が自分にとって気持ち良いものでなくてはならないので、ほぺろう君に合ったツールを使いながら欲求を満たしてあげて、やりとりが楽しいという経験を積んであげると良いでしょう。
自閉の窓が開いたときの経験が心地よければ、閉じていた窓が開きやすくなったり窓が大きくなったりしますよ。
なんかよく分からないけどこの行動をしたら褒められた→またやろうみたいな。現象からスタートするものなんです。やりとりする経験を積み重ねることで「人とコミュニケーションするのっていいかも!」と思える貯金をしています。
絵カードにしろジェスチャーにしろ、やりとりした結果が自分にとって気持ち良いものでなくてはならないので、ほぺろう君に合ったツールを使いながら欲求を満たしてあげて、やりとりが楽しいという経験を積んであげると良いでしょう。
自閉の窓が開いたときの経験が心地よければ、閉じていた窓が開きやすくなったり窓が大きくなったりしますよ。