6歳自閉スペクトラム症の息子は「おもちゃは片づけない!」何故?動機づけのヒントは?頑なな心に必要なことはーー児童精神科医 三木先生に聞いてみた!

ライター:みん
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自閉スペクトラム症のある6歳のPは、絵本のお気に入りのページを開けたまま置いておきたい、おもちゃも出したまま置いておきたいなど、絵本を閉じたりおもちゃを片づけたりすると癇癪を起こしてしまうので、私は片づけたくても片づけられないという悩みがあります。

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監修: 三木崇弘
はりまこどものこころ診療所 院長
愛媛大学医学部卒。医学博士(東京医科歯科大学)、経営管理学修士(早稲田大学)。2013年より国立成育医療研究センターで児童精神科医として勤務。2019年よりフリーランスとして医療・教育・福祉・行政の現場で働く。2022年より地元兵庫県姫路市にUターンし、2025年4月「はりまこどものこころ診療所」を開設。

いつか片づけができるようになる?

みん(以下、――):自閉スペクトラム症のある6歳のPは、自分の身近なところにお気に入りの絵本やおもちゃを置いておきたいようで、いつも机の上やベッドの上にそれらを並べていっぱいにしています。寝るときも寝るところがないくらいおもちゃを広げてその上で毎日寝ています。片づけようと頑張ってみたのですが、片づけたら片づけたでパニックになってしまうので、安心して遊んだり寝たりするために今はもう片づけないようにしています。いつか片づけができるようになるのでしょうか?
片づけるとパニックになり困っている。
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三木先生:何かで片づけの動機づけをすることが大事ですね。でも家で片づけをするモチベーションや理由をつくるのは難しいですよね。外(療育園)では、片づけに苦痛を感じている様子はあるのですか?

――外(療育園)では嫌そうにしながらも習慣づけとしてできてはいます。
片づけないと給食が食べられない、外へ遊びに行けないなど、療育園で過ごしていると片づけをする理由があるので、何とかしぶしぶと片づけをしているようです。

なので、家でも同じように、片づけたらおやつが食べられる…など動機づけをしようと頑張ってはみましたが、出しているおもちゃの量が量なので、全部片づける気にはならないみたいです。でもそれなら私が片づけをしてしまおうとすると、「それは片づけないで!」と怒ってしまいます。
園では片づけできるが、家では片づけできない。
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もうすぐ小学校1年生のPに効果的な動機づけは…

三木先生:いきなり全部を片づけるのは難しいと思うので、段階的におもちゃの数を減らしていくのはどうでしょう? 最初は例えば10個あるとしたら、そのうちの2つは片づけて、8個は置いておいて良いことにする。次のステップで7個…次は6個…と最初から全部片づけようとしなくてもいいかもしれません。

おもちゃを8個に減らしたら しばらく8個で様子をみて、8個に慣れたらまた減らしていくなど、スモールステップで徐々に習慣づけをしていく。あとはおもちゃを減らしていく場合、可能であればルール説明をあらかじめしておくと良いと思います。

1週間前くらいから「この日からおもちゃを減らしていくよ」と確認をするなどですね。また、何であれ理由があると人は納得しやすいので、例えば「7歳になったから片づけしようね」と言ってみるのはどうでしょう?本人が急に変わるというよりは自覚やマインドの問題で、その子が納得さえするなら大人から見たら納得できないような理屈でも動機づけをすればOKだと思います。

――なるほど!例えばPはもうすぐ小学校1年生になるので、「1年生になったんだから」という動機づけの仕方も、もしかしたら効果的かもしれません。

三木先生:環境も大きく変わり良いタイミングだと思うので、今から「1年生になったらどんな風にする?」と親子で話し合い本人のモチベーションを上げてみては?気分を上げることができれば理屈が真っ当じゃなくても良いと思います。「小学生は10個しかベッドにおもちゃを置かないんだよ!」などと伝えてもいいかもしれません。良いこだわりに置き換えてくれたら良いのですが…。

また、本人の中にあるこだわりの総量は変わらないと言われているので、いかに害がない社会適応的なものにこだわりの内容を置き換えられるかがポイントですね。

――そうですね!片づけを頑張る理由を与えるのは良いかもしれませんね!
スモールステップや動機づけをする。
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なぜ片づけたくないのか

三木先生:それから、ベッドに物をたくさんおいて寝るというのは、何かが体に触れてた方が良い場合もあるかもしれません。布団で優しく包み込んであげたりすると落ち着くかもしれませんね。

――たしかにPは狭いところにお気に入りのものをたくさん入れて、感情が不安定になったときなどは、そこで過ごすことで気分を落ち着かせたりしています!もしかしたらベッドにも自分なりに落ち着く空間を作っているのかもしれません。

三木先生:例えば片づけのエリア分けをしてあげるように、ベッドもエリア分けをして「ここからはお母さんのスペースだからはみ出たらおもちゃは片づけるよ」と伝えて、でも自分のスペースなら置いても良いとしていくのも良いかもしれません。あとは少しずつベッドの上のおもちゃを減らしながらもそれは捨てずにとっておいて、ベッドの上ではなく、寝る場所から見えるほかの場所に置き「ほかのおもちゃもPくんのことを見てるよ~」と伝えることでベッドに置かなくても安心につながるかもしれません。

――時間はかかるかもしれませんがやってみようと思います!それにしても、そもそもPは何故このように片づけたくないというこだわりがあるのか?単純に片づけが面倒くさいというだけではない理由があるのでしょうか。どうして?と不思議に思うことがあります。

三木先生:やはりPくんはいつもと同じ状況が落ち着くのではないでしょうか?目の前からなくなっても隠れているだけでそこにあるということが理解できる(例:いないいないばあで顔がかくれてもその下に顔があることがわかる)、上に物を被せても見えなくなっただけでそこに物があると認知できるのが大体1歳過ぎたあたりくらいなので、そういう発達段階が原因で不安になることはあるかもしれません。本のページを閉じたくないのも、見えていないとお気に入りのページがあるのかないのか?分からなくなってしまうのかもしれません。

――そうかもしれません!Pがまだそこまでの発達段階になっていないのも理由なのかもしれません。例えばPはテレビが消えると不安になります。もしかしたら消したらもう見れなくなってしまうと思っているのかもしれないですね。片づけや絵本を閉じるのが嫌なのもそれと同じ心理で自分の目の届くところに見えていないと、ないものと思ってしまい不安になるのかもしれません。何だかとても腑に落ちました!
片づけをしたくない理由を考えてみる
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