幼児期、激しかったASD息子の癇癪。パニックで固まる…を経て、大爆発がなくなったターニングポイントは?

ライター:丸山さとこ
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小学5年生のときに「もしかして、自分の表現って人より激しいのかな…?と思った」と言う息子は、そこからグッと落ち着いていきました。今でもイライラすることはありますが、癇癪というほどの大爆発は起きなくなり本人も楽になったそうです。

そんな彼と一緒に、”癇癪を起こしていたころ”とターニングポイントについて振り返りました。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

イライラすることはあるけれど、癇癪は落ち着いてきました!

イライラすることはあっても癇癪の大爆発は滅多になくなりました
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周囲と自分の反応の違いに気づいたコウ

小学5年生のときに「あれ?みんな自分と同じような状況でも怒ったり泣いたりしてないな。もしかして、自分の表現って人より激しいのかな…?と思った」と言うコウはそこからグッと落ち着いていきました。

今でもイライラしたり突っかかってきたりすることはありますが癇癪というほどの大爆発はなくなり、周囲の人はもちろん本人も「楽になった」と言います。

コウと癇癪のこれまでを振りかえると見えてくる「ターニングポイント」

そんな風に過去を振り返ってサッパリと語る彼の癇癪の歴史はそこそこ長く、ブリッジしながらキーキー叫んでいた保育園児のころから始まっています。(今思うと、乳児のころに反り返って泣いていた姿も癇癪だったのかもしれません)

小学校に入学してから2年生までは癇癪よりもパニックになることが多かったコウは、思うようにならないときや上手くいかないときは青ざめて震えながら固まっていました。泣きながら頭や腕を床に打ちつけることもありました。

しかし、2年生の後半からは再び癇癪を起こすようになり、”言葉を使った癇癪”が増えてきました。
新しく始まった”言葉を使った癇癪”の激しさに驚く私
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今振り返ると、コウはそのあたりから癇癪を起こしながらも少しずつ周囲を見られるようになったのだと思います。

前述の「もしかして自分の表現って人より激しいのかな?」という発言も、癇癪を起こす自分や周りの子ども達を客観的に見られるようになったからこそ出てきた言葉だと考えると、癇癪を起こしつつも、落ち着いたあとでそのときの状態について会話ができるようになった小学2年生辺りがターニングポイントだったのかもしれません。

コウと私、それぞれが振り返る「なぜ癇癪は落ち着いていったのか?」

癇癪よりも便利な”言葉を使って訴える”手段を学んだコウ

パニックについて「心や思考が遠心分離機にかけられる感じ?回されてバラバラになっちゃう」と言う彼。その彼にとって、癇癪は「『あー!』ってムシャクシャする感じ」なのだそうです。
癇癪は「ムシャクシャする感じ」と言うコウ
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そのためか、小学2年生以降の『言葉を使った癇癪』に対しては、声をかけることがある程度有効でした。

話しかけて気をひいたり交渉に持って行ったりできるようになったことで、少しずつ「癇癪を起こすよりも、気持ちや考えを言葉で訴えた方が自分にとって得になる」と学んでいったのではないかな?と思います。

「絶対!」から「諸行無常」へ変わっていったと言うコウ

コウに「自分としては、癇癪が減ったのはなぜだと思う?」と聞いてみると、「昔は何かにつけて”絶対”と思っていたけど、今は”諸行無常(※)”と思っているからじゃないかな?」との答えが返ってきました。

※諸行無常:この世のすべてが常に移り変わり、永遠に変わらないものはないということ。
「絶対〇〇」から「諸行無常」へと変わっていったと言うコウ
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確かに、”言葉を使った癇癪”を起こしている最中のコウは「絶対〇〇なのに!」と言って引きませんでした。

絶望して泣きわめく彼に「そうなの?お母さんには絶対○○とは見えないな」「そうなの?それは困ったね」と感想を伝える形で見守り、会話が始まるのを待ったこともたくさんありました。

そうして予定を変更したり「もうダメだ!」と泣きながらも作業を続けたりすることで、「予定を変更しても大丈夫だったな…?」「もうダメだと思ったけど、案外そうでもなかった!」と感じる経験が増えていったそうです。
「もうダメだと思ったけど…案外そうでもなかった!」と実感するコウ
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日常生活でのさまざまな経験や、対話や読書で知ったことなどが合わさっていく中で、コウは次第に「絶対〇〇だ!」という考えから「物事は諸行無常だな」という実感を得ていったのかもしれません。

一難去ってまた一難!? 癇癪が落ち着いたら増えてきた「まあいいか」

そうして『めでたしめでたし』となれたら何よりでしたが現実はそう上手くいかず、今度は”絶対”による癇癪が減った代わりに”まあいいか”によるミスやトラブルが増えたコウに振り回されるようになったので、一難去ってまた一難という感じのこのごろです。

そんなコウも、最近は「『融通がきかない僕』と『抜け道を探す僕』のどちらも人の話を聞いていないね」と自分の姿を振り返るなど、新しい視点を獲得しようと模索している様子が見られます。
「融通がきかない僕も、抜け道を探す僕も、どちらも人の話を聞いてないね」と気づいたコウ
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彼が今後どのような考えを持つようになるのか楽しみにしつつ、「これからも『今度はそうきたか~!』って振り回されたりするんだろうな」と思う私です。
「やっぱ諸行無常じゃない?」「諸行無常は無法地帯ではないからね…?」
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執筆/丸山さとこ
(監修:井上先生より)
幼児期以降の癇癪の多くは、何かの不都合に対して「人に伝えたい」という思いがお子さん自身にあると思います。その気持ちを癇癪という行動で表すのではなく、言葉にして伝えられるようになったのはすごいことです。

丸山さんが癇癪の際にされていたような、お子さんが言葉にできるまで待つこと、癇癪を言葉にすることができたときや、感情をコントロールできたときに肯定的な対応をしてあげることは大事になってくると思います。「癇癪であらわす」よりも「言葉にして伝える」ということが、周りの人も理解しやすく、自分とってもメリットがあると分かってくることが大事です。癇癪が起きているとき、親も感情的になってしまうこともあると思いますが、一度子どもの気持ちを肯定して、ルールを伝えるなど、冷静に対応できたことがよかったのだと思います。
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