子どもの癇癪とは?何故起きるの?原因や背景を専門家が解説――マンガで学ぶ子どもの癇癪
ライター:マンガで分かる発達障害のキホン
「マンガで学ぶ癇癪」今回は、子どもの癇癪は何故起きてしまうのか?原因や癇癪が起きてしまうまでの背景などを解説します。
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
子どもの癇癪(かんしゃく)とは?何故起きるの?
癇癪(かんしゃく)とは、声を荒げて泣いたり、激しく奇声を発したりするなど興奮を伴う混乱状態を指します。気持ちのコントロールがうまくできないときに起こりやすく、コミュニケーションの手段として習慣化することもあります。成長に伴い、生理的な不快感に基づく癇癪から学習性の癇癪へと変化します。
癇癪(かんしゃく)とは、声を荒げて泣いたり、激しく奇声を発したりするなどの興奮を伴う混乱状態を指します。怒りや不安などの感情を持つこと自体は誰にでも起こる自然な現象ですが、気持ちのコントロールがうまくできないときに癇癪は起こります。
具体的な癇癪行動としては以下のような状態がよく見られ、子どもによって一人ひとり異なります。
・床にひっくり返って泣きわめく
・物を投げたり、自分の頭をものにぶつけたりする
・周りの人を殴ったり蹴ったりする
それまでは問題なく穏やかに過ごしていた子どもが突発的に癇癪を起こすこともあります。また過度な場合だと癇癪を起こしているときに、自制できない衝動的な行為として自分を傷つけてしまったり(自傷行動)、物を壊したり、他者を傷つけてしまう(他害)こともあります。
癇癪は、乳児期には空腹や眠気、痛み、おむつが濡れたりといった不快な刺激や状況によって不快な刺激や状況によって生理的に引き起こされるものですが、成長に伴って子どもにとっての何らかの不都合を親や周りの人へ伝え、それを取り除く社会的なコミュニケーションの機能をもってきます。
例えば、おもちゃを取り上げられてしまって癇癪を起している子どもの状況を考えてみましょう。おもちゃを取り上げられた子どもにとっては「おもちゃが自分の手元からなくなったこと」が不都合なことです。そのおもちゃを取られたという状況をなくすために、手段として癇癪を起こすという行動の流れになります。
ですので子どもの癇癪をただ「怒っている」「泣き叫んでいる」という単なる一つの行動ではなく、「不都合な現実(原因)」→「不都合を取り除く方法(手段)」→「目的の達成」というグループ化された行動のまとまりとして捉えていくことが大切です。上の例でいうとおもちゃを自分の手元に取り戻すことが「目的の達成」です。
もう一つ大切な点は、癇癪を起こす子ども自身も怒りの爆発を抑えられず困っている場合があるということです。泣き叫ぶ子どもを見ると「どうして早く泣き止まないの?」とイライラすることもあるかもしれませんが、癇癪がひとたび始まると本人も感情を抑えようとしても抑えられないのです。詳しいことはあとで述べますが、これは子どもの癇癪を理解するために重要な、もう一つのポイントとなります。
癇癪は赤ちゃんから幼児期、児童期にも見られ、思春期や大人になっても続くこともあります。発達段階やその場の状況によって原因は異なるものの、癇癪が起きているときには、「何か不都合を取り除こうとしている」そして「困っているよとサインを発している」という二つの点を思い出してみてください。
具体的な癇癪行動としては以下のような状態がよく見られ、子どもによって一人ひとり異なります。
・床にひっくり返って泣きわめく
・物を投げたり、自分の頭をものにぶつけたりする
・周りの人を殴ったり蹴ったりする
それまでは問題なく穏やかに過ごしていた子どもが突発的に癇癪を起こすこともあります。また過度な場合だと癇癪を起こしているときに、自制できない衝動的な行為として自分を傷つけてしまったり(自傷行動)、物を壊したり、他者を傷つけてしまう(他害)こともあります。
癇癪は、乳児期には空腹や眠気、痛み、おむつが濡れたりといった不快な刺激や状況によって不快な刺激や状況によって生理的に引き起こされるものですが、成長に伴って子どもにとっての何らかの不都合を親や周りの人へ伝え、それを取り除く社会的なコミュニケーションの機能をもってきます。
例えば、おもちゃを取り上げられてしまって癇癪を起している子どもの状況を考えてみましょう。おもちゃを取り上げられた子どもにとっては「おもちゃが自分の手元からなくなったこと」が不都合なことです。そのおもちゃを取られたという状況をなくすために、手段として癇癪を起こすという行動の流れになります。
ですので子どもの癇癪をただ「怒っている」「泣き叫んでいる」という単なる一つの行動ではなく、「不都合な現実(原因)」→「不都合を取り除く方法(手段)」→「目的の達成」というグループ化された行動のまとまりとして捉えていくことが大切です。上の例でいうとおもちゃを自分の手元に取り戻すことが「目的の達成」です。
もう一つ大切な点は、癇癪を起こす子ども自身も怒りの爆発を抑えられず困っている場合があるということです。泣き叫ぶ子どもを見ると「どうして早く泣き止まないの?」とイライラすることもあるかもしれませんが、癇癪がひとたび始まると本人も感情を抑えようとしても抑えられないのです。詳しいことはあとで述べますが、これは子どもの癇癪を理解するために重要な、もう一つのポイントとなります。
癇癪は赤ちゃんから幼児期、児童期にも見られ、思春期や大人になっても続くこともあります。発達段階やその場の状況によって原因は異なるものの、癇癪が起きているときには、「何か不都合を取り除こうとしている」そして「困っているよとサインを発している」という二つの点を思い出してみてください。
癇癪を起こす原因は?
その場の状況や子どもの気質によって、癇癪を起こす原因はさまざまです。癇癪を起こす子どもにはどのような背景があり、癇癪がどのような目的を達成するための役割を果たしているのかを考えていきます。
生理的な刺激に基づいた癇癪
子どもが生まれてからしばらくの間は、保護者の養育のもと、眠ったり、おっぱいを飲んだりします。その際に「眠たいのに眠れない」、「お腹が空いた」、「痛い」、「オムツか濡れた」などの生理的な不快を泣くことで表現します。
赤ちゃんが泣くと、保護者はあやしたり、ミルクをあげたりといった生理的な不快を解消するお世話をします。この関わりによって、赤ちゃんはコミュニケーションを学んでいきます。ですので、赤ちゃんが癇癪を起したり泣いたりすることは、この時期に必要なことです。
※自閉スペクトラム症のある子どもの中には、感覚過敏がある場合が多くあります。周りにいる子どもが大丈夫な刺激でも、過敏に反応して癇癪を起こしてしまうことがあります。
赤ちゃんが泣くと、保護者はあやしたり、ミルクをあげたりといった生理的な不快を解消するお世話をします。この関わりによって、赤ちゃんはコミュニケーションを学んでいきます。ですので、赤ちゃんが癇癪を起したり泣いたりすることは、この時期に必要なことです。
※自閉スペクトラム症のある子どもの中には、感覚過敏がある場合が多くあります。周りにいる子どもが大丈夫な刺激でも、過敏に反応して癇癪を起こしてしまうことがあります。
学習性(社会性)の癇癪
1歳ごろになると、保護者のしてほしいことと子ども自身がしたいことが違う場合があることをぼんやりと分かり始めるようになります。このころから、保護者の行為に対して拒否的な反応を示すようになっていきます。癇癪を起してしまうのは、どうしても不都合で回避したい出来事があるようなときでしょう。
これらの反応は、自分が保護者とは別の意図をもった人間であるということを子どもが学習し、次第に気付いてきたという成長のあらわれです。これはだいたい1歳ごろから始まるとされており、2・3歳になると言葉も加わって「いやっ!」といいながら自分の意見を主張します。これがイヤイヤ期といわれる時期です。周囲の人と言葉でコミュニケーションができる子どもであれば、苦痛や拒否、要求などを適切に表現して伝え、助けを求めることができるでしょう。
前に述べたように、乳児期の不快な状況に対する生理的な泣きは、成長とともにコミュニケーションの機能を持つようになります。特に言葉をまだ覚えていない乳幼児期の子どもの場合には、泣き叫んだり、暴れたりするなどの行動によってしか、自らの気持ちを伝える手段がありません。このような学習性の癇癪には、大きく分けると注目、要求、拒否の3つの場合があります。
【注目】注目を引きたい、かまってほしい
【要求】物が欲しい、活動を行いたい
【拒否】活動をやめたい、ある状況を避けたい等、嫌だという気持ちを伝えたい
つまり過去に、癇癪を起こすことによって結果的に要求を叶えたり、嫌なことしなくて済んだりしたといった経験があった場合にはコミュニケーションの手段として癇癪が習慣化してしまっていることが考えられます。
例えば、癇癪を起こすと母親が駆けつけて抱きしめてくれた、癇癪を起こしておもちゃを貸してもらったなど、親にとっては癇癪をやめさせようとしてとった行動が、子どもにとっては「癇癪を起こすことで望ましい結果が得られる」というご褒美になっていることもあるのです。癇癪はそれぞれの子どもの状況において別々の原因がありますが、こうした経験が重なることで、かまってほしいときに行うコミュニケーション行動として「泣き叫ぶ」「暴れる」ことが学習され、定着してしまっている可能性もあります。
これらの反応は、自分が保護者とは別の意図をもった人間であるということを子どもが学習し、次第に気付いてきたという成長のあらわれです。これはだいたい1歳ごろから始まるとされており、2・3歳になると言葉も加わって「いやっ!」といいながら自分の意見を主張します。これがイヤイヤ期といわれる時期です。周囲の人と言葉でコミュニケーションができる子どもであれば、苦痛や拒否、要求などを適切に表現して伝え、助けを求めることができるでしょう。
前に述べたように、乳児期の不快な状況に対する生理的な泣きは、成長とともにコミュニケーションの機能を持つようになります。特に言葉をまだ覚えていない乳幼児期の子どもの場合には、泣き叫んだり、暴れたりするなどの行動によってしか、自らの気持ちを伝える手段がありません。このような学習性の癇癪には、大きく分けると注目、要求、拒否の3つの場合があります。
【注目】注目を引きたい、かまってほしい
【要求】物が欲しい、活動を行いたい
【拒否】活動をやめたい、ある状況を避けたい等、嫌だという気持ちを伝えたい
つまり過去に、癇癪を起こすことによって結果的に要求を叶えたり、嫌なことしなくて済んだりしたといった経験があった場合にはコミュニケーションの手段として癇癪が習慣化してしまっていることが考えられます。
例えば、癇癪を起こすと母親が駆けつけて抱きしめてくれた、癇癪を起こしておもちゃを貸してもらったなど、親にとっては癇癪をやめさせようとしてとった行動が、子どもにとっては「癇癪を起こすことで望ましい結果が得られる」というご褒美になっていることもあるのです。癇癪はそれぞれの子どもの状況において別々の原因がありますが、こうした経験が重なることで、かまってほしいときに行うコミュニケーション行動として「泣き叫ぶ」「暴れる」ことが学習され、定着してしまっている可能性もあります。
まとめ
子どもの癇癪の原因は一人ひとり違います。乳児期には生理的な不快感や状況によって引き起こされる生理的な刺激に基づいた癇癪が多いですが、成長するにつれて学習性の癇癪へと変化していきます。
まずは子どもがどのような状況で癇癪を起こすことが多いのかを理解し、癇癪が起きる前に子どもの癇癪の原因の「不都合」や「困り」をできるだけ取り除くこと、癇癪に変わる適切なコミュニケーションを教えていくことがポイントです。
まずは子どもがどのような状況で癇癪を起こすことが多いのかを理解し、癇癪が起きる前に子どもの癇癪の原因の「不都合」や「困り」をできるだけ取り除くこと、癇癪に変わる適切なコミュニケーションを教えていくことがポイントです。
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