できないことは恥ずかしいことじゃない

話をする広野さん
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広野さんはなぜこれほどまでに明るく前向きなのか。どうやら心理学の勉強をした上で、「訓練をした」という。
「世の中落ち込むことばかりでうまくいくことよりも失敗することの方が多いんです。でも、いちいちそれを真に受けて反省して頑張ろうと思っても、また失敗しちゃうんです。そんな人生を普通のメンタルでやっていけない。いちいち落ち込んでいたら生きていけないだろうってことで、それを転換して、できる方に目を向けるように、自分を変えていきました。とにかく、自分が快適に生きていける状態がどこか?が大事であって、みんなと同じようにできるかは関係ないんです」(広野さん)
できないことを「否定しない」。それは2人の娘の子育てでも実践していた。娘には、自身の障害のこともオープンに話した上で、スーパーの惣菜を買うなど家事をなるべく減らし、対話の時間を増やした。時には、娘が母である広野さんのサポートにも回った。現在、長女(25)はIT企業でデザイナーの仕事に就き、次女(23)は海外の大学に進学し、心理学を学んでいる。
2人の娘と広野さん
広野さんと2人の娘
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「個を重視する世の中になりましたよね。個の時代というか。発達障害のある人たちが受け入れられるような方向に行っている気がします。でも、例えば子どもに発達障害があると診断されて、周囲に分かってもらわなきゃとか、説明しなきゃとかやっちゃうと、子どもの自尊心が下がるんですよ。あ、人と違っちゃいけないんだ、って。でも開き直って、文句ある人は近寄ってこないで!ぐらいでいいんです。分かってくれる人とやっていけばいい。大人が変わらないと子どもが変わりませんから。発達障害のあるなしに関わらず、娘たちにはやりたいことを自由にさせてあげたいと思ってきましたし、すべての子どもたちにそういう環境があることを願っています。発達障害のある子どもが生まれるということは、楽しいんだって思ってほしいです」(広野さん)

桑山知之プロフィール

筆者
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平成元年愛知県名古屋市生まれ。
慶應義塾大学経済学部在学中からフリーライターとして活動。
2013年に東海テレビ入社後、東京支社営業部を経て、報道部で記者/ディレクター。
2018年から公共キャンペーンのプロデューサーとして「いま、テレビの現場から。」や「見えない障害と生きる。」、「この距離を忘れない。」といったドキュメンタリーCMを制作。
主な受賞歴は、日本民間放送連盟賞CM部門最優秀賞、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDSゴールド、JAA広告賞 消費者が選んだ広告コンクール経済産業大臣賞、ギャラクシー賞CM部門優秀賞、広告電通賞SDGs特別賞など。

東海テレビ 公共キャンペーン・スポット「見えない障害と生きる。」

取材・文:桑山知之
取材協力:若者支援ネットワーク研究会in東海
(監修・井上先生から)

広野さんのお話のように、発達障害がある人に対する支援や制度、仕組みは少しずつ充実してきています。しかしながら、現在そうした支援や制度を利用しようとすると、その多くは発達障害があるという診断や障害者手帳などが必要です。これを第一段階とすれば、その次の段階は発達障害の診断がなくても、その支援を必要とする人が必要な時にいつでも受けられるような支援や制度が広がっていくことではないかと思います。このような「障害という診断を必要としない社会」から最終的に「障害のない社会」につながっていくのだと思うのです。
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