聴覚過敏のある自閉症息子との車移動は私語厳禁!お気に入りのDVD中は「静かにしてください!」と怒られて…
ライター:まゆん
自閉スペクトラム症がある太郎は、この春から中学生。
太郎はきっと私より何倍も何十倍も音が聴こえている。同じ音が聴こえてるとも限らない、違う音に聴こえてるかもしれない。私が思うよりも大きく聴こえたり、高く聴こえたり、綺麗に聴こえたり、うるさく聴こえたり。
今日は幼少期のエピソードを1つ書きたいと思います。
監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。
1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。
幼少期の太郎と聴覚過敏
自閉スペクトラム症のある太郎には、小さいころから聴覚過敏があった。今回は幼少期のエピソードを1つ。
車の中での過ごし方に困っている保護者の方は多いと思う。そこで利用されるのが動画や音楽、おもちゃ、絵本、などなど。
太郎には、お気に入りのDVDがあった。同じ映像を車で何百回と観たことだろう。それがないと、チャイルドシートに座らせてもシートからはみ出そうとしたりモゾモゾしたり癇癪を起こしそうになったり…。「お気に入りのDVD」は私と太郎にとって素敵な存在だった。
そのDVDを流すだけで、太郎はピタッと静かに表情柔らかく車内で過ごせていた。「まるで魔法だな」そう思っていた。
車の中での過ごし方に困っている保護者の方は多いと思う。そこで利用されるのが動画や音楽、おもちゃ、絵本、などなど。
太郎には、お気に入りのDVDがあった。同じ映像を車で何百回と観たことだろう。それがないと、チャイルドシートに座らせてもシートからはみ出そうとしたりモゾモゾしたり癇癪を起こしそうになったり…。「お気に入りのDVD」は私と太郎にとって素敵な存在だった。
そのDVDを流すだけで、太郎はピタッと静かに表情柔らかく車内で過ごせていた。「まるで魔法だな」そう思っていた。
しかし、このときの暗黙の共通認識が私たち家族の中で1つあった。
『太郎が車内でDVDを観ているときは、私語はなるべく禁止』
太郎は動画にすべての感覚を集中させる。今はやりの『全集中』とはこのこのか。集中してるときに私とばあばが私語をするものなら、「うー!うー!うー!!」とか「静かにしてください!!」とかやや泣きべそ気味に言ってきた。
ほかのタイミングでも、ばあばと面白い話をして笑っていたら「笑わないで!!」「うー!んー!」とまた泣きべそ気味に身体を揺すっていた。
『太郎が車内でDVDを観ているときは、私語はなるべく禁止』
太郎は動画にすべての感覚を集中させる。今はやりの『全集中』とはこのこのか。集中してるときに私とばあばが私語をするものなら、「うー!うー!うー!!」とか「静かにしてください!!」とかやや泣きべそ気味に言ってきた。
ほかのタイミングでも、ばあばと面白い話をして笑っていたら「笑わないで!!」「うー!んー!」とまた泣きべそ気味に身体を揺すっていた。
家族は特性を理解しているけれど
私たちの私語が雑音として入ってきてお気に入りのDVDの邪魔になってしまうのだろう。私たちの声も大きかったのかもしれないが、観ているDVDはもう何百回も繰り返し観ているもので流れは分かっているはずである。
私たち家族は太郎の特性を理解してるので「ああ、ごめんごめん、話したいことがあったからね、今から静かにするね」と言えるが、ほかの場面で通用するのか…うーんと心配にもなった覚えがある。
ちなみに保育園ではというと…例えば楽器演奏に関して、太郎が「自分が奏でる音さえもうるさい」と私に伝えて来たことがあった。
自衛隊の航空ショーを見に行った際には爆音でパニックになり、私が追いつけないほどの全力疾走でその場から逃げ出そうともしたこともあった。私も航空ショーを見に行ったのが初めてで、あんなに爆音がするとは思ってなかった…完全に情報収集不足だった。
私たち家族は太郎の特性を理解してるので「ああ、ごめんごめん、話したいことがあったからね、今から静かにするね」と言えるが、ほかの場面で通用するのか…うーんと心配にもなった覚えがある。
ちなみに保育園ではというと…例えば楽器演奏に関して、太郎が「自分が奏でる音さえもうるさい」と私に伝えて来たことがあった。
自衛隊の航空ショーを見に行った際には爆音でパニックになり、私が追いつけないほどの全力疾走でその場から逃げ出そうともしたこともあった。私も航空ショーを見に行ったのが初めてで、あんなに爆音がするとは思ってなかった…完全に情報収集不足だった。
とりあえず、車移動にはお気に入りのDVDセットが必須であった。外出先で大人しくしなければならない場合は止むを得なくそれを見せていた。教育的にどうなのかと悩むこともあったけれど…。
これは、太郎が4~6歳ごろまでの話。今は周りの話を中断するような発言はなくなっている。でもきっと雑音には思ってるのかな?
あのころが懐かしい。
これは、太郎が4~6歳ごろまでの話。今は周りの話を中断するような発言はなくなっている。でもきっと雑音には思ってるのかな?
あのころが懐かしい。
あとがき
年齢を重ねるごとに他人との会話にも入ってきて、人が笑っていると一緒に笑うようにもなりました。それがここ数年の話です。太郎も成長したんだなぁ…としみじみと感じたところで今回のコラムを終わらせていただきます。
(執筆/まゆん)
(執筆/まゆん)
(監修:鈴木先生より)
自閉スペクトラム症があるお子さんの聴覚過敏は、大人になってからも続くことが多くあります。ただ、経験により子どものころよりは我慢ができるようにはなっていきます。どうしても我慢できなくなったら、そのときは自分の意思でその場から去る、去りたくなければイヤホンをつけて音楽などを聴くといった対応があります。
自閉スペクトラム症がある人は住宅・旅館・レストラン・電車内・教室などあらゆる場面で周りの会話や音が気になるため、静かな環境が望ましいといえるでしょう。最近では住宅や車は密閉性が高くなり、外の音が聞こえにくくなってきて聴覚過敏の人には住みやすい環境になってきているのではないでしょうか。一方では周りの音が遮断されることで聴覚過敏が強くなってしまう傾向もあるように思います。
自閉スペクトラム症があるお子さんの聴覚過敏は、大人になってからも続くことが多くあります。ただ、経験により子どものころよりは我慢ができるようにはなっていきます。どうしても我慢できなくなったら、そのときは自分の意思でその場から去る、去りたくなければイヤホンをつけて音楽などを聴くといった対応があります。
自閉スペクトラム症がある人は住宅・旅館・レストラン・電車内・教室などあらゆる場面で周りの会話や音が気になるため、静かな環境が望ましいといえるでしょう。最近では住宅や車は密閉性が高くなり、外の音が聞こえにくくなってきて聴覚過敏の人には住みやすい環境になってきているのではないでしょうか。一方では周りの音が遮断されることで聴覚過敏が強くなってしまう傾向もあるように思います。
「親も神経質になって当然」なASD息子の感覚過敏事情。でも息子やっぱり息子は可愛くてーー小児科医のアドバイスも
感覚過敏な高校生のリアルな日常。「周囲と同じようにできない」悩みながら見つけた感覚回避の工夫
コロナ禍の「マスク問題」。感覚過敏のある娘が断固拒否…困った母の作戦とは