母の財布からお金を何度も盗むADHD息子「遊ぶお金が欲しくて」「小遣いが少なすぎる」開き直る様子に母は…?

ライター:かなしろにゃんこ。
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ADHDのある息子は、友だちから誘われると我慢ができません。遊びに行くためのお金が欲しくて、お小遣いが足りなくなると私の財布から勝手にお金を持ち出すという行為を繰り返していました。
持ち出す金額は千円~二千円です、家計にも響いてきたので持ち出されない対策をすることにしたのですが…。

この記事ではADHDの中学生のお子さんのお金問題の体験談を、専門家の対策と共にご紹介します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

我慢できずお金を使ってしまうADHD(注意欠如多動症)の中高生、どのようにお金の管理をすればいい?

本人が欲しいものがある場合に、我慢できずに買ってくれるまで要求し続ける、金銭感覚が身についていないなどの悩みを聞くことがあります。できるだけ低学年のうちから、金銭感覚とセルフコントロールを学んでいくことが望ましいと思います。
さまざまな方法がありますが、ここでは欲しい場合にその都度購入するのではなく、お手伝いや望ましい行動によってお小遣いを得られるような仕組みをつくること、お小遣い帳やアプリを活用することで、金銭理解を学ぶことをおすすめします。

お金に関して、自分のもの他人のものという所有の概念を身につけさせるためには、自分の財布や貯金箱をつくって本人に管理させること、買い物へ行く場合は、その中から支払うようにさせることを習慣化していくことが大切です。
お小遣いは定期的に一定額を渡すことが多いと思いますが、週に1回の方が月1回よりも管理がしやすく、お小遣いが貯まるまで待ってから欲しいものを購入するという習慣も学びやすくなると思います。また、お手伝いをすることで、歩合制のようにお小遣いが得られる仕組みにしていくことで、労働と報酬の感覚も学んでいくことができます。
井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授)
井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授)
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以下から、ADHDのお子さんのお金トラブル体験談をご紹介します。終わりにある専門家のコメントと共にご覧ください。

友達と繁華街に出かけて遊びたい!

友達とゲームセンターで遊ぶ息子
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中学生くらいになると買いたい物が今までよりも高額になり、「欲しい物を買うには、今あるお小遣いだけでは足りない!」というお子さんも多いのではないでしょうか。そんなときに親の財布から「ごめんなさい、少しだけ…」と言ってお金を持ち出してしまった…なんてことは誰でも一度はあるかもしれません。しかし、わが家のリュウ太は一度では済まず、中1から中3までたびたび繰り返していました。

部活がない日によく、リュウ太はよく友達に繁華街のゲームセンターなどに遊びに行こうと誘われていました。しかし、毎月お小遣いをもらってはすぐに散財するタイプのリュウ太。友だちに遊びに誘われても万年お金がない状態です。
お小遣いの前借を断られ怒る息子
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でもリュウ太は誘いに弱く、誘われると絶対に行きたくなってしまい我慢ができません。私にお小遣いの前借交渉をしつこくしてくることもありました。

はじめのうちは前借交渉にも応じていたものの、月3千円のお小遣いだったリュウ太にとって、2千円以上の前借りは、次の月のお小遣いで返済できる額ではなくなるため応じませんでした。

「今月は、もう前借りはさせられません」と私が言うと、リュウ太はすごく不機嫌になり怒り出します。
お財布からお金が減っていることに気付く母
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「友だちと約束したから断れない。お母さんが貧乏なせいだ」とか「あとでお手伝いするから貸してくれよ。ケチだなー!」など、お願いしているはずなのに、暴言も挟んできます。

今までの経験からこういうときに「あとでお手伝いする」と言っても口だけで、実際はお手伝いをしないというのは百も承知でした。私が交渉に応じないでいると「じゃぁ、もういいよ…」と言うリュウ太。諦めたという態度を示しながら居間で大人しくゲームをはじめるのですが、私がトイレや庭仕事などで居間から離れたあとに「オレ、ちょっと出かけてくる〜」と出ていきます。

そうです!私が見ていない隙に財布や小銭貯金からチョロッとお金を取って出かけてしまうのです。

小学校高学年〜中学の「お金使いたい期!」親の財布からこっそりと…

そんなことが何度かあったので、私は用心して財布を肌身離さず持ち歩くことにしました。トイレにもお風呂にも、寝るときにも枕元に置いて寝ました。必死です(笑)!
家の中でも財布を肌身離さず持ち歩く母
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小銭貯金もやめて、家の中に小銭を置かないことにしました。対策をしたおかげで息子にお金を勝手に持ち出されることはなくなってきました。

ところが、私がウッカリ財布を風呂場に持って入るのを忘れてしまったとき、風呂場から出て居間に向かうと…
息子が財布から勝手にお金を持ち出そうとしているところに遭遇!
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息子が私の財布からお金を勝手に持ち出そうとしていました。犯行現場をバッチリ見られた息子は、慌てましたが、手にはしっかりお札が握られており、言い訳できない状況です。

私は「お金を財布から盗っているのバレてますからね。リュウ太が今までも勝手にお金を持ち出していたこと知ってたよ」と言いました。すると「だってさーお小遣いが月3千円って少なくない?友だちの家はみんな5千円とかもらえてるのにオレの小遣いが少なすぎるんだから仕方ないだろ」と言うリュウ太。開き直って謝りませんでした。
開き直る息子
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さらに、「あのさー、財布持ち歩かれると困るんだけど」とさらっと言いました。

私は一瞬「……は???何が困るって???」と思いましたが、“お金が持ち出せなくて困る”という意味だと理解しました。
盗人猛々しいとはこのことか!なんと情けないトホホ…(泣)。

勝手にお金を持ち出す行為への注意と共に、悪いことを正当化するような発言をしてはいけないと教えることが必要だと思いました。

私が「リュウ太の今の発言は泥棒が『盗みに入れないので玄関のカギを開けておくように!』と言うのと同じなんだよ」と伝えると「へーそうなんだ、でも友達との交際費は必要なんだよ」とお金の交渉を続けるのでした。

息子も必死です。明日友達とどうしても出かけたいみたいです。(一緒に行けなかったらどうしよう…)という不安があるんだろうな…と伝わってきました。
お金について論争する親子
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お小遣いはいくらが適切なの?と悩む母
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友達と出かけて、ある程度お金を使いたい年頃なんだよね…。自分も10代のときはそうだったのでよく分かります。

確かにリュウ太にとって月に3千円のお小遣いは周りの友達に比べて少ないのかもしれません。夫が息子のお小遣いの金額を決めていたので私は口が出せずにいました。本や文具など欲しい物があれば交渉次第で息子に買っていたので、困ることはないだろうと思っていたのです。

息子の気持ちも考えて、仕方なく夫には内緒でお小遣いを月5千円にアップすることにしました。そして、前借交渉も毎月2千円までOKにしました。次の月に返済できないものは、16歳からはアルバイトをして返してもらうことにしました。

それからはお財布からお金を盗む行為はなくなりました。

でも正直この時期の子どもの対応ではどうするべきだったのか、今でも正解が分かりません。
甘やかすことになっていないだろうか?
お小遣いは値上げせず月3千円で我慢させるほうがよかったのか?


子どものお小遣いの話はママ同士でもあまり話題には上らないので、ほかの家の子は決められたお小遣いできちんと我慢ができるいい子なのかしら?と不思議でなりません。

執筆/かなしろにゃんこ。
(監修:井上先生より)
家庭の中でのお金のトラブルは相談の中にもよくあがってきます。お小遣いの金額というのはわが家ルールで決められていると思いますが、交際費は付き合う友達にもよるでしょう。親に内緒で財布から持ち出す行為は、絶対によくないことを本人に分かってもらうことが必要ですが、本人も親も感情的になってしまうと納得のいく結果が得られなくなってしまいますね。お金の価値を理解してもらうためには、「前借」ではなくお手伝い(労働)をしたあとに決められた報酬を受け取るという約束(労働契約)がよいと思います。場合によっては、仕事の出来栄えによる評価を併用してもよいかもしれません。お金の使い方やルールは将来的にも大切なので、本人が納得できるよう丁寧にお話していけるとよいと思います。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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