不安が強い、自主性がないわが子。やる気を引き出すために保護者ができることは?発達障害児の教育の専門家が子どもを伸ばす秘訣を語る

ライター:発達ナビ アライアンス プログラム
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うちの子不安が強くて…。勉強へのやる気が出ない…。保護者の方のそんな悩みにお応えすべく、発達障害のあるお子さんの教育のプロフェッショナル2人の対談をお届けします。今日から活かせる関わり方のヒントとして、ぜひ参考にしていただけたらと思います。

目次

LITALICOに通うお子さんの保護者に多い、こんな悩み

発達障害のあるお子さんの力を伸ばすために大切なことが、家庭学習での保護者の関わり方。

そもそも、子どもが何が分かっていないのかが分からないんです」「不安が人一倍強くて、自分から分からない勉強を進めていくのが苦手で…」「将来何がしたいのと聞くと、別にと答える。漠然と不安です」etc。そんな悩みの声に対して、保護者として大切にしたいことを考えたいと思いました。

そこで今回は、eラーニング教育サービスを家庭学習教材の中で先駆けて2008年より提供し、不登校や発達障害のあるお子さんのサポートをされてきた『すらら』の子どもの発達支援室室長である佐々木章太氏に、発達障害のあるお子さんの教育の専門家であるLITALICOジュニアスーパーバイザーの永塚健氏が、お話を伺いました。
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左:永塚健氏、右:佐々木章太氏
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現在約5千人のお子さんが家庭学習に活用している『すらら』は、利用者の約6割が不登校や発達障害のあるお子さん。『すらら』が培ってきたノウハウの中には、子どもの学ぶ力を伸ばしていくためのヒントが、たくさん散りばめられているはずです。
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発達が気になる子どもの教育の専門家と、発達支援の先駆者が語る「子どもが伸びる保護者の共通点」

永塚氏:保護者の関わり方について考えていくために、まずは『すらら』について教えてください。単刀直入に、どうして『すらら』は不登校や発達障害のあるお子さんに支持されているのでしょうか?

佐々木氏:『すらら』が家庭向けに学習教材の提供をはじめたのが2015年ごろなのですが、実を言うと当時は発達障害についてあまり理解をしていませんでした。ただサービスを開始してみると、不登校や発達障害のお子さんの会員さんが多いと。どうやら『すらら』の教材設計が、不登校や発達障害のあるお子さんに求められているのだと、会員さんに教えていただいたんですよね。
すらら佐々木様取材風景
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永塚氏:『すらら』の教材そのものに、不登校や発達障害のあるお子さんと相性が良いポイントが詰まっていたと。

佐々木氏:そうですね。やはり大きいのは「無学年式」です。会員さんの中には勉強において一度挫折をしているお子さんも多く、遡り学習ができる「無学年式」が選ばれるきっかけとなっていました。元々は『すらら』の前身の会社がフランチャイズで個別指導塾をやっていたので、そもそもベースに「無学年式」の考え方があるんですよね。

一方で、個別指導塾を運営する中で、提供できる学びが先生の質によって左右されてしまうのがネックと感じていました。そこで、2007年ごろにe-Learningに注目して法人向けに教材の提供を始め、いよいよ2015年から「無学年式の家庭学習教材」という形で、一人ひとりの学びに向き合ってきました。無学年式は、どこにつまずいているかを探す旅に出るための、力強い仕組みだと思います。

永塚氏:集団ではなくて、今のあなたと向き合うという「無学年式」は、発達障害のあるお子さんにとって相性が良いものだと感じます。
すららの無学年式
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佐々木氏:ほかにも、先生がいくら時間がかかっても叱らないAIのキャラクターだから、自分のペースで進められるというポイントも評価されていました。そんな風に、不登校や発達障害のあるお子さんと相性が良いという気づきを起点に、2017年には「子どもの発達科学研究所」に監修いただいて、学習障害のある小学校低学年のお子さんに向けても丁寧に作り込んでいきました。

永塚氏:もっとこんな環境があればうちの子頑張れるのにな、と思っている保護者の方はたくさんいます。『すらら』がそこに向き合っていく姿勢に感動すら覚えてます。

佐々木氏:試行錯誤を重ねながら、少しずつ進んできましたね。2017年から発達障害のある会員さんが一気に増えていく中で、いくら教材の内容が良くても、そもそも「勉強に対するやる気がない」という課題を持っている方が多いという壁にぶつかりました。親子に寄り添う役割のすららコーチも上手く機能せず、どうしたものかと頭を抱えていたんですよね。

そんなときに、『すらら』のある一つの教室だけ、会員さんの継続率が高いことに気づきました。その先生方にどのように親子のサポートをしているのか伺ったことが、大きな転機となったんです。その先生から、「お子さんよりもまず、保護者の方に寄り添うことを徹底している」という話をいただいたんですよね。

永塚氏:勉強を続けていくための鍵は、実はお子さん以上に保護者の方の関わりが大きかったということですね。
永塚氏取材風景
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佐々木氏:視界が一気に開けた感じがしましたね。2018年には臨床心理士をチームに招き、発達障害の理解を深める研修を実施し、保護者のヒアリングを増やすように変えていきました。より具体的には、「ペアレントトレーニング」に注力し、思春期前と思春期、そして行動分析学と認知行動療法という4つのカテゴリーで、親子関係に向き合ってきたんです。

永塚氏:保護者に着目されたのが素晴らしかったと思います。私も普段から、まず保護者自身が現状を肯定しないとお子さんへの支援は始まらないと話しています。未来への懸念や手立てに目を奪われるのではなく、まずは頑張っている自分たちを認めてあげることこそが、「子どもの力を伸ばしていく」ために保護者に必要な土台なのではないかと思っています。

佐々木氏:同感ですね。子育てに追われ、またお子さまを中心に考えるあまりに、ご自身を大切にできていない傾向の会員さんも多いです。自分たちの親子関係を否定的に見るのではなく、ポジティブに捉えることこそが「子どもが伸びる保護者の共通点」としてまず大切なことかと感じます。
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「こわい…」「いやだ!」不安が強い子どもに必要な関わり方って?

永塚氏:ペアトレでの実践を多くされてきた『すらら』だからこそ見えているものがあると思うのですが、「不安が強いお子さん」に必要な関わり方ってどのようなものだと考えますか?

佐々木氏:一つの例をあげると、不安感が強く、発達障害が原因で不登校になっているお子さんがいました。どうやらそのお子さんは学校へ行けないことに対して「罪悪感」を持ってしまっているようで、その原因について考えてみたんです。すると、「今日は学校に行かないの?」「学校に行かないなら勉強してほしいな」という、保護者の方の願いの言葉が罪悪感につながっていることが分かりました。

永塚氏:なるほど…何気ないその言葉が、お子さんの罪悪感やストレスにつながってしまっていたと。

佐々木氏:はい。それでは次の良い行動に移ることができないので、親子のコミュニケーションから見つめ直すことが必要だと感じたんです。ペアトレを通して言葉の選び方から見つめ直していくと、実践して2ヶ月ほど経ったある日、突然学校に行くと言い出したそうです。そんな経験からも、やはり認知行動療法を踏まえたペアトレが、求める結果に向けての最短距離の解決策の一つだと実感しています。
永塚さん取材風景
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永塚氏:不登校のお子さんはLITALICOジュニアにも多くいます。「行く」「行かない」の2択になってしまうと解決が難しいのですが、「休んでいる間、とにかく好きなことを好きなだけやってみようよ!」などといった、第3の選択肢を持つことが大事。それが見えてきた家族のお子さんほど、学校に行きたい気持ちを取り戻しやすい傾向があるように思います。

佐々木氏:『すらら』が考える不安が強いお子さんとの信頼関係を深めるポイントは3つあって、まずお子さんではなく保護者の方自身が「まず自分自身が変わらなくてはいけない」と思うことが大切だと思います。次に、できないことよりもできることに注目してあげること。最後に、子どもの興味関心に対してポジティブなコミュニケーションを取ることです。

永塚氏:確かにそれらがあると、親子の信頼関係が深まると思います。その土台があるからこそ、保護者の方からの言葉がお子さんにも届きやすくなるはずですよね。そして、常にお子さんにはどう見えているのだろう、本当はどうしてほしかったんだろうと繰り返し考えていくことも大切です。私も自分と息子は良い意味で同級生と言う感覚で、対等に関わることを意識しています。
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実は「やる気がない」のではない!?やる気を引き出すために保護者ができること

永塚氏:ほかにも、「お子さんが自発的に行動することが苦手」ということに、悩まれている保護者の方がいます。どうしてもやる気が出ないお子さんへ、どのような関わり方が考えられるでしょうか?

佐々木氏:保護者の立場では、お子さんが自分から行動してほしいと願ってしまいますよね。でも、やる気が出ないお子さんには、外発的な動機付けが必要だと思っています。そのためにまず今日から実践できることは、やはり「褒めること」です。具体的に出来たことを認めてあげることで、次の行動への意欲へと繋がります。

例えば甘いものが食べたくなって、ケーキを買いに行って美味しかったらリピートしますよね。同じことが勉強にも言えて、宿題を頑張ったら良いことがあった、という繰り返しが学習習慣に繋がっていくはず。褒めることにはそんな効用があると考えているので、その意味を理解した上で褒めることを意識できると、自然と関わり方が改善されていくと思います。
すらら佐々木様取材風景
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永塚氏:褒めることがその先のどんな良いことに繋がるかまでを見据えることでの安心感が、結果として不安な気持ちを和らげ、怒るというネガティブな行動にも繋がりにくくなるとも思いますね。

佐々木氏:そう思います。お子さんの行動に対して、先を見据えた声掛けのストック数が多いほど、スムーズにコミュニケーションが取れるはず。ほかにも『すらら』では、モチベーションを高めるイベントの企画や、勉強すればするほど景品がもらえるという仕組みで、やる気を引き出していきます。

一昨年からは「褒め上手大賞」という保護者にフォーカスしたイベントを始めたのですが、そこで大賞を受賞されたのがお父さんでした。父親の関わり方も大切となってくると思うのですが、興味深かったのが『すらら』で最も勉強を頑張った努力指標で一位を取ったお子さんが、そのお父さんのお子さんだったんですよね。

永塚氏:おー、それは面白いですね!ここでも保護者の方の関わり方、褒め方の重要性が、一つ証明されている。そうやって親子の頑張りを認めてあげる取り組みはとても大切で、「褒め上手大賞」のように、保護者の頑張りを認めてあげること、そしてお子さんに燃えている姿を見せてあげることが一番なのかなと感じました。

そうして褒めることも活用しながら、お子さんの自発性をいかに引き出していくことが出来るか。保護者側が「何でそう思ったの?」「どうしたいの?」とハテナで引き出していくことで、自ずと自発的に行動していけるようになるのではないかと思います。

永塚さん取材風景
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佐々木氏:具体的に『すらら』では、今までオプションで提供していた人気講座、「自発的な子の関わり方」と「不安が強い子の関わり方」を通常料金内に含むように7月からリニューアルします。毎月2回講座を提供し、保護者の方の行動が変わるきっかけを作っていきます。それだけではなく、10分程度の隙間時間で見られる講座も提供していくので、こちらも興味があれば実践してほしいです。

永塚氏:そのような講座を通して引き出しが増え、お子さんがこうきたらこう、と対処の方法が分かり、落ち着いて生活できるようになると思います。お子さんにとって一番愛している家族が、自発的に、ときには楽観的に関わっていくことで、お子さんは変わっていくはずです。

何より、保護者の方の写し鏡のように、『すらら』自体が常に行動変容していることに大きく感銘を受けました。
講座
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明日から実践したい、親としてまずしてほしいこと

永塚氏:最後になりますが、発達ナビ読者のみなさんにメッセージをお願いします。

佐々木氏:もしかしたら、読者である保護者の方もご自身に厳しすぎることがあるかもしれません。褒めるのが苦手という方は、実は自分も褒められていないということが多かったりもします。自分に対して認めることができているか、あるいは自分に対して求めすぎていないかということを、一度考えてみても良いかもしれません

そしてどこかで、『すらら』が寄り添えることがあれば、とても嬉しく思います。

永塚氏:むしろ弱音を子どもに吐いてもいいと思います。親御さんだって不安なときもある、お子さんだけじゃないんだよという姿を見せても良いのではないでしょうか。親のレッテルを剥がした一人間として、改めてまずは保護者の方のアイデンティティを守っていかないといけないと思います。家事も忙しい中で、みなさん本当に頑張っていますから、楽観的にどしっと構えてくださいね。

まずはご自身を褒めてあげてから、親子に寄り添う『すらら』の教材や講座を覗いてみてくださいね。
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そんな『すらら』では、7月16日に「ゲーム依存予防・対策/自発的に勉強する子の育て方講座」を開催します。無料でオンラインで受講できる、臨床心理士からお子さんへの関わり方について話を聞くことができる、大変貴重な機会です。

夏休み直前は、ゲーム好きなお子さんとの向き合い方にも注目しておきたい時期。ゲーム依存予防・対策について理解を高めつつ、自発的に勉強する子へと変わるきっかけとなる講座です。
オンラインサマーフェスタ
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講座名:【臨床心理士監修】ゲーム依存予防・対策/自発的に勉強する子の育て方講座
開催日時:7月16日(土)10:00~11:30
対象学齢:小学1年生~中学3年生
受講費:無料
開催方法:オンライン開催
登壇者:道地真喜
ASDのあるお子さん向けのABAセラピー、3歳から18歳を対象とした心理検査、認知行動療法、プレイセラピー、大人の鬱、不安症のカウンセリングを主に実施。アメリカでの臨床経験を活かし、(株)すららネットにて心理検査、カウンセリング、保護者向けのペアトレーニングなどに従事

無料でオンラインで参加できるので、下記のボタンからぜひお申し込みくださいね。
佐々木章太 氏/株式会社すららネット 子どもの発達支援室 室長
プロフィール:グロービス経営大学院 経営学修士、「すらら」家庭学習部門事業責任者、親子の関り方を中心とした各種イベントの企画担当をするほか、放課後等デイサービスの学習アドバイザー、ペアレントトレーニング研修講師/KABC-Ⅱ検査官も務める。

永塚健 氏/LITALICOジュニア保育所等訪問支援訪問支援員 スーパーバイザー
プロフィール:入社後、LITALICOジュニアにて指導員、訪問支援員として活動。現在は、指導員、訪問支援員にあわせて、社内の指導員の育成に関わる業務、ペアトレなど保護者支援、困難ケースのサポート、社外の教員、保育士・関係機関向けの研修や指導に関わる業務を担当。
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