勉強のつまずきは、感覚過敏や鈍麻が原因?発達障害との関係、学習困難の理由や支援方法も解説【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン

自宅の落ち着いた環境であれば勉強ができるのに、学校の授業にはどうしても集中できない、あるいは自宅も学校も両方とも集中できなくて学習面で遅れてしまう…。こうした子どもの中には、感覚の過敏や鈍麻の特性が原因で「学習困難」になっている場合があるかもしれません。学習困難の場合、学校や家庭ではどのような対応をしたらいいでしょうか。

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監修: 野田遥
作業療法士
LITALICO研究所 研究員
作業療法士として教育センターや障害児入所施設等で勤務したのち、現在は自閉スペクトラム症者の感覚処理に関する研究や、発達障害に関連したプロダクトの研究・開発に取り組んでいる。

学習障害がなくても、学習に困難を感じている子どもは多くいる?

ノートが上手く取れない、計算や漢字の書き取りが不得手、授業に集中できない…など、子どもの学習に関連する困りごとは、「限局性学習症(学習障害・LD)」が原因なのではないかと考える方も多いのではないでしょうか。

しかし、限局性学習症がなくても、そのほかの発達障害の特性から学習に困難を感じている子どもも多くいると考えられています。特定の領域の学習ができない限局性学習症とは異なり、環境に左右される原因によって学習困難が起こることがあります。

自閉スペクトラム症(ASD)がある場合

学校でのスケジュールが突然変更になったり、いつもどおりのルーティンができなかったりすると、不安が強まったり、パニックになったりする場合があるかもしれません。また、細かい情報や特定のことがらに強くこだわって全体の理解が進まないことや、興味関心と学習内容が噛み合わずに授業や学習に集中できないことがあるかもしれません。

注意欠如・多動症(ADHD)がある場合

教室の中で椅子にじっと座っていることができない、あるいは座っていたとしても手足を動かしたくて学習に集中できないことがあり、無理やりじっとしていようとすることで、極端に疲れてしまうこともあります。

また、注意が逸れやすく、授業に集中できない・不注意が理由で忘れ物が多い、実行機能の弱さが理由で宿題が終わらない・できないなどの困りがあります。

発達性協調運動症(DCD)がある場合

体を協調的に使うことが難しいために、文字を書くことが苦手だったり、丁寧に書いているつもりでも読みやすい字が書けなかったりします。

「学習困難」の原因かもしれない感覚過敏・感覚鈍麻とは、どんなこと?

発達障害がある人には、感覚過敏や感覚鈍麻がみられることがあり、これらが原因で学習障害が起こることもあります。

私たちは、いわゆる五感、視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚によって情報を得ています。学習するときは、特に視覚や聴覚をフル稼働しますが、こうした感覚の働きが過敏すぎたり、あるいは極端に鈍かったりすると、学習に集中できなくなると考えられています。

今やるべきことには関係のない、聞かなくてもいい音が気になったり、見なくてもいいものが目に入ったり、匂いや肌に触れるものが気になって集中できない、という経験は、ある程度誰にでもあるものです。感覚が敏感な人の場合には、多くの人は気にならないような、音や光、掲示物などの刺激を感じると、学習に集中しづらくなります。逆に、身体の感覚が鈍麻ゆえに刺激を好み、落ち着きがなく見える場合もあります。

学校の授業を集中して受けられず、学習でつまずいているのは、感覚過敏・感覚鈍麻による「学習困難」が原因かもしれません。

感覚過敏のある子どもが、学習時に困っているポイントはどこにある?

感覚過敏がある子どもの学習の悩み、解決策にはどんなことがあるでしょうか。ここからは感覚のタイプ別にみてみましょう。

視覚過敏がある子どもの学習の悩み

目の感覚、視覚が過敏な場合は光を過度にまぶしく感じることがあります。
ノートがまぶしい
一般的にノートの紙は白。ノートが照明の光を反射して、まぶしくて板書ができないといったことが起こります。また、タブレットを学習に活用している場合、明るさの調節をしないと、画面がまぶしすぎることがあります。

>解決策 ノートの紙にほんのりと色がついているものを選ぶだけでもまぶしさは軽減します。色つきのクリアファイルや下敷きを重ねることで見やすくなることもあります(※)。また、机の配置が照明の真下にならないようにしましょう。タブレットの画面照度を子どもが見やすく感じる明るさに調整したり、機種によっては色つきの画面に設定できることもありますので、こうした機能を活用することもおすすめです。

(※)子どもによって見やすい色合いや彩度は異なります
窓際の席や照明の当たる席で光がまぶしい
窓が近い日当たりのいい席は、光がまぶしくて黒板や先生の姿だけでなく、光を反射する教科書が見づらくなります。また、照明の種類や光が当たる角度によっては、同じような状況になります。

また、本を読んでいる最中に文字が追えなくなる、ズレたりにじんだりして見える、文字がチカチカと光るように見える、文字が流れてしまうなど、光の感受性が高いために起こる視知覚の困難がある場合、一見、ディスレクシア(読み書き障害)と症状が似ているように見えますが、異なるメカニズムで起きる可能性が指摘されています。

>解決策 窓辺を避けた席や、照明の真下を避けるなどの机配置をしてあげましょう。もし、あまりにもまぶしい場合には、色つきメガネやサングラスの使用を検討してください。また、カラーレンズやフィルムを通してみることで、目に入る光の量を調節することができ、文字が見やすくなる場合もあります。
蛍光灯の光のチラつきが気になる
蛍光灯は、実は常に光っているわけではなく、通常は人の目で感知できない速さの周期で点滅を繰り返して光っています。蛍光管が古くなると、この速度が落ちてくるためにチカチカ光って見えるようになりますが、視覚過敏がある場合には新品の蛍光灯の光でもチカチカしているのを感じてしまうことがあります。

>解決策 家庭ではできるだけ蛍光灯をやめて、白熱電球に替えたり、蛍光灯カバーをつけたりといった対応が効果的です。
視覚的情報が多すぎる
目に入ってくるものが気になりやすい場合、黒板のまわりなどに掲示物がたくさん並んでいると、肝心の授業の内容に集中できなくなります。また、ADHDがある場合も、不注意の特性から揺れるカーテンや校庭の様子など、注意が逸れやすいことが理由で集中できないこともあります。
単に集中できないだけでなく、情報過多になって気持ち悪くなるなど体調に影響してしまうケースもあります。

>解決策 黒板の周りに授業と関係のない掲示物がたくさんある状態は、学習困難がなくても気が散る原因となるので、片づけたり視界に入らない後ろの方に置くようにしたりしましょう。家庭では、学習するときには関係ないものはできるだけ片づけるのもよいでしょう。使わないものには布をかけて隠しておいたり、パーテーションを利用したりするのも有効です。

聴覚過敏がある子どもの学習の悩み

聴覚が過敏だと、意識しなくても小さな音まで聞こえやすかったり、特定の音に対するつらさが強まったりすることがあります。また、必要な情報だけ音を拾って感知するという情報の選択ができず、たくさんの音が同時に耳に入ってきて、肝心な情報がかき消されてしまう場合もあります。
教室の中がうるさい
聴覚過敏の場合、たとえば先生が話していることに集中したくても、そこに誰かの話し声、衣擦れの音、窓の外の音や空調の音などが重なり合って、どの音に集中したらいいのかが分からなくなってしまいます。また、椅子と床がこすれる音や、特定のお友達の話し声など、苦手な音がつらく、疲れやすくなることもあります。

>解決策 教室の雑音は多くの子どもにとって気が散る原因となります。椅子の脚にカバーをつける(使い古しの硬式テニスボールを切って脚にかぶせるなど)といった工夫をしましょう。また、イヤーマフや耳栓をうまく活用するのもよい方法です。
大きな音が苦手
急に大きく響きわたるような音、たとえば陸上競技のスタートのピストル空砲、避難訓練のサイレンなどが鳴ると、誰でもびっくりするものです。元々、その音自体や音量に対する苦手さがあり、それに加えて予告なく音が鳴るような状況だと、周囲の想像以上につらく感じている場合があります。その結果としてその音に対する過敏さが強まってしまい、そのあといつまでも気持ちの切り替えができなくなってしまう場合があります。

>解決策 学校でも家庭でも、予測できない音はしかたありませんが、大きな音が出る場合にはこれから何が起こるのかを説明しましょう。説明を受けてもやはりその音を聞くのがつらい、という場合には我慢をせずに、大きいサイレンの音が鳴る避難訓練の時間だけ休む、運動会のピストルを旗に変えてもらうなどの配慮をしてもらうことを検討しましょう。
また、イヤーマフや耳栓をうまく活用することもつらさの軽減に有効です。
たくさんの音が全て聞こえてしまって疲れる
自分が必要な情報に集中してほかの音を小さくするような脳の機能がうまく働かないと、教室のさまざまな音を聞き取ってしまいます。そんな状況でも特定の音声、授業中なら先生の声だけになんとか集中して聞こうとすることで、疲れてしまう場合があります。また、聞き取ることに努力が必要な子どもの場合、疲れてぼんやりしてしまうことで、集中していないという誤解を受けることがあります。

>解決策 生活音などの騒々しさが原因の場合は、ノイズキャンセリングイヤホン/ヘッドホンが有効です。耳栓、イヤーマフなども一定の効果があります。音に対する直接的なアプローチだけではなく、帰りのホームルームで明日の持ち物を口頭だけではなく黒板にも書いてもらうなど、聞きとりにくさを前提とした視覚的なサポートを受けられると困りごとが減るでしょう。

嗅覚や味覚に過敏さがある子どもの学習の悩み

どんな場所にも、その空間での活動によって生まれるにおいが壁や床、カーテンや家具類にしみ込んでいるため、独特のにおいがあるものです。その中には心地よいにおいもあれば、いやなにおいもあります。特に、学校の教室はさまざまな活動をする場なので、多様なにおいがあります。チョーク、古い本、床のワックス、給食、栽培・飼育しているもの、そしてたくさんの子どもたちのにおい。こうしたにおいがまざって「学校のにおい」を作っているわけですが、その複雑なにおいに対して敏感で、不安定になる子どももいます。

また、授業ではありませんが、特定の味やにおいに対して過敏さがあり、給食がつらくて食べられないというケースもあります。食物アレルギーだけでなく、においや食感、温度、見た目などさまざまな感覚に対する過敏さによっても、食べられないものが多くなります。完食しないとペナルティが課せられるような場合は、給食がストレスとなって体調を崩すことも起こります。
>解決策 マスクをすることでも、ある程度においを隠すことができます。給食は無理をせず、食べられるだけでよいというルールにできるように相談してみましょう。食器やカトラリーの感触が苦手という場合もあるかもしれません。いずれにしても、無理をさせずに本人がどうしたいのか要望を聞いてあげるようにしてください。嗅覚過敏については、学校以外の場所であれば、ガムを噛むことなども有効です。

触覚過敏がある子どもの学習の悩み

衣類など肌に触れるものに敏感な子どもが苦手な触感のものに触れずに授業に参加できなかったり、肌に触れている服の着心地などが気になって授業に集中ができなくなる場合などがあります。
のりや粘土、手の汚れることが苦手
理科の実験や図工の授業など、手が汚れる体験授業はたくさんあります。触覚が過敏な場合は粘土やノリなどのベタベタしたものが手に触れることがいやで、授業にうまく参加できなかったり、がまんしようとすると先生の話が耳に入らなくなったりします。

>解決策 苦手なものを無理やり触らせようとせず、触る場合には、少しずつ試してみましょう。それでも触れない場合にはゴム手袋の使用など、道具を使うことで授業に参加できるように相談してみてください。
服のタグや着心地が気になる
着ている衣類の肌への刺激が気になることがあります。タグや縫い目、あるいは靴に入った細かい砂などが気になると、学習に集中できなくなります。

>解決策 服を選ぶときに、材質、タグの位置、縫い目の具合など、本人と一緒によく確認して快適なものを選びましょう。タグが気になる場合には、根元からタグをしっかり切ると、気にならずに着られるようになることもあります。
次ページ「感覚鈍麻がある子どもの学習の悩み」


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