「ASD、ADHD、感覚過敏」診断名じゃ伝わらない!?親戚へのカミングアウト、どうしたら?癇癪予防・多動や過敏への理解の求め方、わが家の場合

ライター:ウチノコ
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こんにちは、ADHDと自閉スペクトラム症の診断のある小学3年生、むっくんの母ウチノコです。夏休み、祖父母や親戚で集まる機会もあるかと思います。そんなとき、
ちょこっと悩む特性をどう伝えるか。わが家はどうしているのかをまとめてみました。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

息子の発達障害、誰に伝えてる?

むっくんが発達障害の診断を受けて5年半ほど経ちました。現在、むっくんの家族や親戚はみんな診断があることを知っています。祖父母などよく会う家族には診断がついたことは早々に伝えました。また、年に数回会う親戚にも徐々に伝えていきました。発達障害について、知識のある人もいますし、発達障害をよく知らない人もいますが「そうなんだねー」くらいの反応で、伝えたことで何かもやっとすることを言われたり、関係にしこりが残るようなやり取りを経験したことは私にはありません。

また親戚で集まると、つい「学校どう?」なんて話題が出てしまうので、不登校を選んだことも早々に家族にも親戚にも伝えました。こちらも「そういう選択もありだよね~」という反応で何か言われることはなく、私もむっくんも心地よく過ごすことができています。

私と家族や親戚はもともと信頼関係がしっかりできていましたし、親戚にはユニークな人が多く、価値観が多様な人も多いことをこれまでの付き合いから知っていたので、私は安心して息子のことをみんなに話すことができたのだと思います。
帰省し、親戚に会うたびに発達障害息子へ起こる「落ち着いたね!」コール
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どんなふうに伝えた?

私は発達障害のことを他者に話すとき、診断名だけ伝えても大切なことは伝わらないと考えています。なぜなら診断名が同じでも特性のあらわれ方は人それぞれ異なっているからです。発達障害の知識がある人にだって、診断名だけ伝えてもむっくんのことは何も伝わりません。

そのためむっくんのことを他者に説明するとき、私はむっくんの行動に対して【むっくんの具体的な特性】【その背景についての私なりの解釈】【これから行う対処とその理由】を順序だてて説明するようにしています。

小さなころの話ですが、いくつか例をあげてみると…

祖父母の家で走り回って部屋や押し入れなどを確認したがったとき

祖父母の家で走り回って部屋や押し入れなどを確認したがったときは…

【具体的な特性】この子はとっても好奇心旺盛でいろいろ気になりがちでね、でもその背景には分からないことや知らないものに対して不安を感じやすいっていう理由があるの。

【私なりの解釈】おばけやしきって仕掛けが分からないと怖いけど、どこで何がでてくるか分かったら不安も和らぐでしょ?そんなふうに、自分の不安を和らげたくて動き回って、見えない引き出しや押し入れの中を確認して安心しようとしているんだと思う。

【対処とその理由】しばらく確認したら安心できて落ち着くと思うから、今は見守らせてもらえると助かります。

いとこなどと遊ぶうちに楽しくなりすぎて興奮から癇癪に繋がりそうなとき

いとこなどと遊ぶうちに楽しくなりすぎて興奮から癇癪につながりそうなときは…

【具体的な特性】些細なことでも感情の振れ幅がとても大きくなるの。悲しいときはものすごく悲しいし、楽しかったら楽しすぎちゃう。

【私なりの解釈】楽しすぎてハイテンションになって、あとからどっと疲れる経験ってない?そんなふうなのかなって私は考えていてね。今日は楽しすぎるを通り越して癇癪を起こしてしまいそうなんだと思う。

【対処とその理由】今は自分の力だけで落ち着くことが難しいから、音や光の少ない静かな部屋に行って落ち着けるように休んでくるね。

周囲の音に疲れ果ててしまったとき

周囲の音に疲れ果ててしまったときは…

【具体的な特性】とても音に敏感で、自分に必要のない音まで聞きすぎてしまうところがあるんだよね。

【私なりの解釈】この部屋も話し声やテレビの音、食器の音、たくさん音があるけれど会話に集中するとほかの音って少しミュートされるでしょう?むっくんはその機能があまり働かなくて音を聞きすぎて疲れちゃうときもあって。

【対処とその理由】疲れたときは静かな場所で好きなことをさせてあげるのがいいから、今日はもう家へ帰って休ませようと思うよ。
発達障害息子が周囲の音に疲れ果ててしまったときは…静かな部屋を用意してもらえるようになりました。
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伝わるように伝える

これらの特性は多動衝動、易刺激性、感覚過敏などと言われる特性ですが、こういう聞きなれない言葉では伝わるものも伝わらなくなってしまうので、できるだけ日常的に使うイメージしやすい言葉で伝えるようにしています。

また「自閉スペクトラム症があるから切り替えが難しい」や「ADHDがあるからじっとできない」などという、理屈を省いた伝え方では誤解や差別を生みかねないと感じていました。私の言葉を起点にそういったものが広がっていくとしたら、それはとても恐ろしいことです。

だから私はできるだけ、【具体的な特性】【私なりの解釈】【対処とその理由】と言葉を尽くし、順序だてて伝えることを心がけています。実はこの伝え方は、むっくんに物事を伝えるときの言い回しなんです。むっくんに伝わりやすい言葉選びは、ほかの人にも伝わりやすい。発達障害のある子への適切な関わり方というのは、誰に対しても大正解なんだなーと感じています。

さらに、人によって理解しやすい伝え方が違うこともあります。イラストの方が伝わる人、文字が伝わりやすい人。言葉だけで十分なのか、図の方が理解しやすいのか、その辺りも相手に合わせて使い分けることも意識しています。

そういう見えない背景を伝えてきたことが、家族それぞれむっくんの行動について背景を考える意識を持つきっかけになり、むっくんの成長を温かく見守る今の環境をつくることにつながっているのだと思います。
伝わりやすい方法は人それぞれ 家族でもそれぞれ。発達障害のある子への適切な関わり方と言うのは、誰に対しても大正解なんだなーと感じています。
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