ASD息子の長所って…どこ!?「短所は裏を返せば長所に」ならない?トラブルの多いわが子を観察してみたら

ライター:丸山さとこ
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発達の凸凹が大きい子どもを育てる上で、「短所ばかりに注目しない」「長所を伸ばすことが大事」と聞くことがあります。先日もそのような話を聞いたため、改めて「コウの長所ってどこだろう?」と考えてみました。

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監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。

長所を伸ばすことについて、改めて考えてみると…

「短所ばかりに注目せず、長所を伸ばすとよい」と聞き、息子コウの長所について考える私。改めて考えてみたことで、「ここが長所!」と明言できるポイントはよく分からないと気づく。
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コウの長所は…どこ?

発達の凸凹が大きい子どもを育てる上で、「短所ばかりに注目しない」「長所を伸ばすことが大事」と聞くことはしばしばあります。一見すると弱みに見えるところにも強みが隠れていることがあり、そこを活かせるようサポートすることで子どもが自信をつけられるとも聞きます。

先日もそのような話を聞いたため、改めて「コウの長所ってどこだろう?」と考えてみると、「ここが!長所です!!」と明言できるポイントはよく分からないことに気付きました。

彼の長所はたくさんあると思います。ですが、安定して(?)長所だと言えるところをとりあげようとすると中々定まりません。

ときに短所にもなる、コウの長所たち

コウは声が大きく、授業中の発言や発表などでは聞き取りやすく堂々とした雰囲気で話すため、そこは長所なのかな?と思います。ですが、その『声の大きさ』はトラブルを生むこともあります。

中学生になり、以前よりは調節できるようになったものの、今でも「丸山、声でけえ!」「うるさい」と言われることはあるようなので、分かっていてもコウにとって難しいところなのかもしれません。
コウの声の大きさや主張の強さは、発表の場ではよく活かされる。けれども、人の発表を聞く番になるとボンヤリして聞いていないことが問題になる。授業中も積極的に発言できるが、人の発言を否定して自分の意見を述べることがあるため、他の児童が発言しにくくなることもあった。
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そのようなとき、解決方法として『合う環境を選ぶこと』がよくあげられます。実際、コウにとって有効なことも多いようです。

そんな中で、合う環境にもいろいろあるのだろうなと思うようになりました。コウの長所が発揮できる環境は『長所が活かされる環境』の場合もあれば『短所が目立たない環境』の場合もあったからです。

コウの長所が発揮できる環境って、どんな環境だろう?

長所は活かされるけど、短所も目立っていた「発言の場」の思い出

コウの声の大きさや主張の強さは、発表の場ではよく活かされます。ただし、『発表をできる環境』には『コウ以外の人の発表』もあるため、それらの発表を聞くことも大切になってきます。

普段から「人の話を聞いていない」と言われることの多いコウは、担任の先生から「人の発表も聞きましょう」と注意を受けることもしばしばありました。
楽器演奏の発表では言葉を使わないため、「人の発言を押しのけたり踏んだりすること」は起きない。また、自分の意見がハッキリしていることや理由にこだわるところも、レポート作成には活かされることが分かった。
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別のときには、個人懇談にて先生から「コウ君がほかの子の発言を『今言われた〇〇というのは間違っていて…』と否定して発言してしまうことで、萎縮してしまう生徒がいます」と聞いたこともありました。

それらの話を聞いた私は、家庭にて「発表ではほかの人の話も聞くこと」「発言をするときは、ほかの人の意見を踏み台(枕)にしないこと」を話しました。その後それらの行動は出なくなったとのことでホッとしましたが、長所を活かすことの難しさを感じる出来事でした。

「しゃべらない発表」と「レポート作成」に分けてみたら…!?

そんなコウでしたが、いろいろな発表の場を見ていくうちに、『発表の場で緊張しないこと』がシンプルに活かされる場もあることが分かってきました。

例えば、楽器演奏の発表では言葉を使わないため、『人の発言を押しのけたり踏んだりすること』は起きません。緊張せずに練習の成果をしっかり活かせるため、コウの短所は目立たずに長所が目立ちます。

人の話を聞くのが苦手なコウも演奏には集中しやすいそうで、人の発表にも耳を傾けて参考にするようになりました。
コウは声が大きく主張もハッキリしているが、それは「周りとの違いを怖がらないから言える」のではない。彼は、周りが見えないことで怖がることなく発言できる反面、トラブルが起きて困ることも多い。
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ほかにも、トラブルの原因になりがちな『自分の意見がハッキリしている』ことや『理由にこだわる』ところも、レポート作成には活かされることが分かりました。

普段人に話せば「説明が長い」「言い訳ばかり」「講義か」と言われるようなことでも、レポートであれば思う存分書くことができます。

堂々と発表ができることは『話す』こと以外で活かし、意見があって理由にこだわるところはレポートに活かす。コウの持っている要素を長所として活かすために「長所を細かく丁寧に見ること、いろいろな環境を試すこと」は大切なのだなと改めて思いました。

短所は長所の裏返し…なのか?

短所は裏を返せば長所に!…とはいかないことも

また、短所については「短所も裏を返せば長所になる」と言う言葉を聞くことがあります。実際、短所としてのみ注目されていた要素が『長所になる面』も持っていることも、たくさんあるだろうと思います。

ですが、凸凹の目立つ子どもの場合はストレートに「短所も裏を返せば長所になる」とはいかないことも多いのではないか?とも思います。

例えば、前述のようにコウは声が大きく主張もハッキリしていますが、それは『周りとの違いを怖がらないから言える』のでありません。『周りが見えないので怖がることなく言える』ため、周りが見えない結果トラブルにつながることもたくさんあります。
コウは声が大きく主張もハッキリしているが、それは「周りとの違いを怖がらないから言える」のではない。彼は、周りが見えないことで怖がることなく発言できる反面、トラブルが起きて困ることも多い。
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神経発達症(発達障害)がある子どもは、「こだわりが強い」ことでトラブルが起きやすい反面「粘り強さや一途さがある」とされることも多く、これなど、まさに「短所を長所に!」にあたるのではないかと思います。

ですが、子どもと接していると「こだわりは強いが粘り強くはない」というケースも結構あるのではないかと感じます。

ほかにも「完璧主義だけど責任感は強くない」「マイペースにやりたがるが、特に丁寧ということもなく作業が雑」など、一般的にセットとされるはずの「短所は長所でもある」が通用しないことも多いような気がします。
次ページ「「裏を返せば」は、見方を変えるヒントの一つなのかも?」

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