授業中に床で爆睡、小3で2桁の計算ができない、校外に脱走、直らない指しゃぶり…。15年後「あのときこうしておけば」と思うこと

ライター:ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ
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わが家は10人家族です。家族全員が個性いろいろな発達凸凹タイプです。それぞれの特性をキャラクター化しており、動物の顔をしています。
いまは社会人5年目になる、おっとりキャラの次男ウッシーヤの小学生のころをふりかえります。
(今回のイラストは父ラクマが担当しました!)

監修者藤井明子のアイコン
監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。

小学生になった次男は、できないことが山盛り

わが家は母である私・ワッシーナを筆頭に、家族全員が個性いろいろな発達凸凹タイプです。それぞれの特性をキャラクター化しており、動物の顔をしています。たとえば、末っ子の次男ウッシーヤは、牛のキャラクターです。これは彼がなにをしても動作がゆったりしているところを表現しています。 いまは社会人5年目になる、おっとりキャラの次男ウッシーヤの小学生のころをふりかえります。

勉強も運動も、学業全般で問題続出

学校での学習態度に厳しい指導が

授業中、教室の床に寝て担任から注意される次男ウッシーヤ
授業中、教室の床に寝て担任から注意される次男ウッシーヤ
Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ
小学生になって集団行動が増えると、ウッシーヤには困ったことが次々と起こりました。

まず、朝は寝起きが悪いのです。何度起こしても目を離すとまた寝てしまいます。しかたなく半分寝ているような状態で服を着替えさせて、抱きかかえるように食卓に連れていきます。

席についても目を離すと寝てしまいます。そばにいてこまめに声をかけながら肩などをゆさぶりながら食事をさせます。

学校でも学習態度をたびたび注意されました。授業中も寝ているのです。しかも通学バックを枕にして床に寝ているというのです。当然、先生に強く注意されます。

でもウッシーヤは「枕、しているから(しっかり寝れているので)だいじょうぶです」と、トンチンカンな受け答えです。ウッシーヤは先生から叱られているということが分からず、逆に安眠できているか気にかけてもらえたと勘違いしていたのです。

高学年になると読み書きを中心に学習困難に

深夜まで宿題が終わらない次男ウッシーヤを「いい加減にしなさい」と叱る母ワッシーナ
家庭学習はいつも深夜まで悪戦苦闘
Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ
小学3年生になるころには、勉強にもついていけなくなりました。本読みはたどたどしくつかえて、文章を飛ばしたり、勝手に文章をつくったりしていました。

あせった私は、家庭学習をしっかりやらなければいけないと強く感じました。ですので、夜はつきっきりで勉強を教えるのですが、なかなか理解が進みません。

宿題が深夜まで終わらないことがしばしばありました。いろいろ工夫しても分からせてあげることができないので夫に代わって教えてもらいました。でも結果は同じです。夫婦ふたりで首をひねるばかりでした。

たとえば算数では、数字の概念そのものがうまくのみこめません。そのため足し算、引き算も2桁以上になると、まるで理解できないのでした。

読み書き困難で得意・不得意が極端に違う

次男ウッシーヤの上から書いたり下から書いたり、自由奔放すぎる国語の作文の写真
上から書いたり下から書いたり、自由奔放すぎる国語の作文
Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ
ノートをとったり作文を書いたりするのも苦手で、文字なのか絵なのか分からない状態です。ノートのマス目のなかに文字をおさめて書くこともうまくできず、すごくはみ出したり、上から書いたり、鏡文字になったりしていました。

学力を身につけることがうまくいかず、中学3年生まで小学3年生レベルの学力のままでした。しかし、知能検査を受けても標準くらいはあるという結果でした。

親が工夫して教えてもまるで理解が進まず、なまけているとかやる気がないと感じて、厳しく叱ったこともしばしばありました。

虫などの小さな生き物が好きでアリの行列を何時間もじっと見ていました。でも犬やネコくらいのサイズになるとさわることができず、近寄ってこられると逃げました。

でも好きなことは、まわりが驚くようなヒラメキを見せました。音楽やリズムに関してはとても反応がよくて、初めて手にした楽器で初めて聞いた曲をいきなり弾いたりしました。

植物図鑑が大好きで、名前や特徴を暗記していました。また紙粘土などの工作物が好きで、想像上の生き物をカラフルにつくったりしていました。

運動や生活面でもこまり感いろいろ

床屋でバリカンから逃げまわる次男ウッシーヤ
床屋でバリカンから逃げまわる次男
Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ
ウッシーヤには独特な感覚過敏があって、プールや海に一度も入れませんでした。顔をうまく洗えず、床屋にいくとバリカンやシャンプーから逃げていました。それなのに、お風呂やトイレに入ると何時間も出てきませんでした。

幼児期から続いていた指しゃぶりは、あいかわらず続いていました。学校にも相談して、あれこれ工夫してみましたが一般的なやり方は効果がありませんでした。

この指しゃぶりは、中学生になって転校し、環境が変わったことをきっかけになくなりました。

その代わり、頻繁にくちびるにリップクリームを塗ることや爪かみといった行動が、社会人になった現在も続いています。いまにして思えば、これはウッシーヤのこだわりなので、むりやり直すべきものではなかったようです。

練習しても自転車に乗れず、学校の体育の授業では跳び箱や鉄棒がほとんどできませんでした。ドッジボールでは、いきなり大声をだして学校の外へ逃げていったこともありました。そのときは、学校からの連絡で急いで車で探しにいきました。

発達に凸凹があると、できることとできないことの差がすごく大きいので、どうしてもわがままや性格の問題というふうに捉えられてしまいがちです。

ふりかえると、もっと早いタイミングで専門家に相談して、さまざまな工夫をおこなっていれば、親も子も苦しまなくてすんだかもしれません。

もし、タイムマシンがあってウッシーヤの小学校時代に戻れるなら、彼の好きなダンスや歌を使って算数や国語を教えてあげれば、もっとスムーズに理解できたと思います。
執筆/ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ
(監修:藤井先生より)
社会人5年目のウッシーヤさんが小学3年生ごろのエピソードをありがとうございます。知能検査で標準の範囲でも、学年相応の読み書きや計算の習得が極端に困難な場合、学習障害である可能性もあります。最近では、少しずつではありますが、診断できる医療機関も増えてきています。

学習障害のあるお子さんに対しては、困りごとへの具体的な学習支援が最も重要です。しかし共生社会を目指すインクルーシブ教育の中で、どのような指導や配慮がされているかは、それぞれの学校によってさまざまな状態です。また、学校教育における支援だけでなく、好きなものを大切に、それを軸に学びを深めていくことも可能です。学校の勉強は苦手だけれど、自分の好きな電車の漢字は難しくても読み書きできる、自分の好きな分野の専門書なら読める、というように、好きなことを軸に学びを深めていったお子さんもいます。
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コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。

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