年長のお姉さんとの出会い

入園からしばらく経った頃、幼稚園にスバルをお迎えに行くと年長の女の子2人組に話しかけられました。「あの、この子のママですか?」「この子毎日年長の教室に来るんですけど」どうやら自分のクラスを抜け出して年長の部屋まで足を運んでいるらしいのです。
落ち着くどころか行動範囲を伸ばしとるやないかい!

それから毎日、お迎えの時間になると年長の女の子2人組が話しかけてきました。
「お遊戯室で勝手に手を繋いで年長の列に並んでいた」「工作の時間にやってきて隣で粘土をこねていた」など連絡帳にも書かれていない、やりたい放題を暴露されるスバル。

なるほど……お迎えの時間に毎日話しかけて来るこの2人組のことを、スバルはかまってくれる仲良しのお姉さんだと思っているのね。
残念!これ、クレームですから!!

ある日いつものようにクレームを聞き「うちの子がご迷惑をおかけし……」と頭を下げているときにふと「まだまだ勉強中ですので、この子のことをよろしくお願いします」と一言加えました。ただの思いつきでしたが、女の子たちは「しかたないな」「私たちが面倒見てあげる」と表情を変え、友好ムードになりました。

その日からお姉さんは強い味方になりました。
イベントで並ぶべき時間にウロウロしていたら一緒に並んでくれ、教室から脱走していたら連れ帰り、ブランコの交代のタイミングを厳しく教え、幼稚園でのルールや社会でのマナーを叩き込んでくれたのです。

すぐに変化が現れたわけではありませんでしたが、年少の6月のある日からピタッと歩き回らなくなり、座るべき時間に座り、話を聞くべき時間に話を聞くようになりました。
話は聞いているだけで右から左へ抜けてしまっているみたいでしたが、それでもスバルの中で点と点が繋がるような何かがあったのだと思います。先生たちが毎日スバルと向き合ってくださったことはもちろん、年長のお姉さんたちの影響はかなりあると思います。

それをきっかけにスバルは集団生活のコツをつかんだようで、少しずつクラスへ馴染んでいきました。
スバル一人と向き合うとたくさんの困りごとがあるのですが、3歳になったばかりの子どもと4歳の子どもが一緒に活動する「年少クラス」という空間では個人個人の成長の差が激しく、スバルの困りごとは飛び抜けて目立つものではなくなりました。
入園当初は完全に集団からはみ出た存在でしたが、年少の終わりには「ちょっと変わったクラスメイト」くらいの存在になりました。
集団の中で楽しく活動に参加する様子は1年前の入園当初には考えられない光景でした。

年中になり、周りの子どもたちの成長に置いていかれる形でスバルの困りごとが目立つようになりますが、それはまた別の機会に……。

年長のお姉さんとの思い出

放課後の園庭でスバルにブランコの漕ぎ方を叩き込んだのもお姉さん。
年少の終わりころまでできなかった両足ジャンプをときにはスパルタで教えたのもお姉さん。
滑舌が悪くて単語で話すスバルの言葉が聞き取れず「この子何言ってるか分からない」と私に耳打ちしつつも根気強く遊んでくれたお姉さん。
年長のお姉さんたちに何かお礼がしたいと思った私。でも、物をプレゼントするのも違和感がある。ならば!と、本気のバッタ捕りに本気お鬼ごっこと、年長のお姉さんを相手に本気で遊び恩を返す私。
スバルが受けた恩はわが身を使って返す!
Upload By 星あかり
お姉さんたちの卒園とともにご縁は切れてしまいましたが、スバルの年少時の成長にかなりの影響を与えてくれたお姉さんたちには感謝しかありません。
「スバルもこんな素敵な年長さんになれますように」と思ったのを覚えていますが、スバルはスバルらしく独自ルートの素敵な年長さんになったので、それはそれで。
執筆/星あかり

(監修:新美先生より)
幼稚園でのお姉さんとの出会いのエピソードを聞かせてくださりありがとうございます。
親から離れて園での生活が始まり、保護者としても気が気じゃない入園当初の日々、最初は「クレーム」!? から始まりながらも、お姉さん心をくすぐったのか面倒を見てくれて、さまざまな影響を与えてくれたってなんだか素敵ですね。
きっとお姉さんにとっても楽しい日々だったと思います。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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