障害児の災害対策を専門家に聞く!親子が別の場所で被災したら?避難所生活は?読者の防災ノウハウアンケート結果もーー9/1は「防災の日」

ライター:発達ナビ編集部
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9月1日は『防災の日』、8月30日から9月5日は『防災週間』と定められています。
防災への認識を深めるとともに、もしものときの備えを確認、充実、強化し、被害の防止と軽減につなげる期間です。
障害のあるお子さんのいらっしゃるご家庭では「障害のあるわが子と被災したら?」「何を用意しておけばいい?」「避難所で過ごせる?」とさらに不安も多いことだと思います。
今回は専門家と一緒に「防災ノウハウ」について考えてみたいと思います。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

9/1は「防災の日」。発達ナビ読者の防災の備えや防災ノウハウは?【アンケート結果】

9月1日は『防災の日』、8月30日から9月5日は『防災週間』と定められています。
防災への認識を深めるとともに、もしものときの備えを確認、充実、強化し、被害の防止と軽減につなげる期間です。

みなさんのなかには「障害があるわが子は避難所で過ごせる?」「親と離れているときに子どもが被災したらどうしよう」など災害に対して不安に感じる方も多いのではないでしょうか。

今回、LITALICO発達ナビでは2023年8月1日(火)から8月7日(月)の期間に発達障害のあるお子さんのいるご家庭の「防災についての備えや対策」について、アンケートとエピソードを募集しました。

みんなどのくらい災害への備えや対策をしているの? 一番多かった意見は…

9月1日は『防災の日』! みんなどんな備えや対策をしているの? 「障害がある子どもと防災」についてのアンケート
9月1日は『防災の日』! みんなどんな備えや対策をしているの? 「障害がある子どもと防災」についてのアンケート
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参考:9月1日は『防災の日』!みんなどんな備えや対策をしているの?「障害がある子どもと防災」についてのアンケート
https://h-navi.jp/selective_surveys/215
「災害への備えや準備をしているが不安なこともある」と答えた方が51%と一番多い結果となりました。また「災害への備えや準備をしっかりとしている(8%)」と合わせると6割近くの方が災害への備えや準備をしていることが分かりました。

しかし、ただでさえどのようなことが起こるのか分からない災害時。さらに障害や特性のあるお子さんがいると不安なこともたくさんあると思います。ここからはみなさんから寄せられたエピソードやコメントなどを紹介します。

アンケート「「障害がある子どもと防災」について」に寄せられたエピソード

基本的に我が家は他人の気配や音に敏感でストレスが溜まると怒りっぽくなる家庭なので、

家、車中泊、庭テントで何とかしたい、、、できたらいいな?
(中略)
とりあえず準備しているのはテント、寝袋、ソーラー充電バッテリー←携帯用

出来るだけガソリンは満タン。
後は常に水はローテーションで使用←避難用でもあり通常用でもある。

食材も割とそれに近く備蓄というか、ローテーション制。

後は個室になる様にボックス系の簡易個室があればいいかもなぁとか、耳栓とアイマスクいるかなぁとか
(梛丹さん)
出典:https://h-navi.jp/selective_surveys/215
ある程度の備えはいつもしていますが、不安はなくなりません。

家族に発達障害者と定型の人とがいるので、ちょっとした避難も上手くいかず大変でした。
「地震がきたよ!家から外に出るよ!」
と声かけしても、発達障害者はのそりのそりと避難。
だからといって、「災害で死ぬことがある」と説得すればパニックになる恐れがあるので、それも慎重に伝えなければならない。(想定どおりに事が進まない、理想と現実って、こういうことを言うんだなと)
(略)
(グレーゾーンさん)
出典:https://h-navi.jp/selective_surveys/215
不安になると、自傷したり、大きな声を上げてしまうわが子は、災害時、大勢の人がいる避難場所での生活が難しいので、配慮して欲しいことを、自治会の民生委員の方にお伝えし、民生委員の方から、自治会、行政に情報を共有し、対策して頂いていますが、実際、どうなるか、すぐ対応してくださるか、長期にわたり、家族のみで、頑張らなくてはならないのではないか、不安があります。
(まますんさん)
出典:https://h-navi.jp/selective_surveys/215
人の多い所が苦手、暑さが苦手、初めて食べるものは少ししか食べないため、日ごろから防災食品を時々食べたり、防災商品を日常的に使って慣れるようにしています。極力家で過ごせるように、水、食料はもちろん充電式の扇風機など日常的に使って、非常時に備えています。
(りよんちゃんのママさん)
出典:https://h-navi.jp/selective_surveys/215
東日本大震災の時の元被災地在住です(津波を直接被った地域ではありませんが)。

あって良かったものはプロパンガスと、徒歩数分の距離にたまたま浄水場があったのがめちゃ助かりました。いつでも水を汲みに行けたので。
最寄りの浄水場など、大規模災害時に水を汲みに行けるポイントを確認しておくことを、みなさんにお勧めしたいです。
(中略)
震災の時は息子はまだ生まれてませんでしたが、いま地震で避難するとしたら、
体育館などの避難所の中ではなく外にテントを張れるところに避難するつもりです。
うちはアウトドア好きなので息子もテント泊には慣れてるし、
大地震の時は建物の中よりもむしろ安心感があるので。
(でも大雨で水害とかだったら避難所の中に避難するかも…)

息子用に絶対に持って行くのは「安心毛布」とプラレール。
息子と二人で旅する時も、これだけあれば最低限の心の安寧が保てるようです。
(sacchanさん)
出典:https://h-navi.jp/selective_surveys/215
数年前、北海道がブラックアウトして3、4日電気なし生活を経験しました
(中略)
アウトドアが趣味で1週間程度の電源なしキャンプの経験が複数回あること、セカンド冷凍庫もあり普段から食料品の買い置きが多いことから、防災専用の備えは全くありませんが、停電したからといって慌てることはなく、キャンプよりも簡単に快適に過ごせたので、生活に混乱はありませんでした。
(中略)
困ったのは子どもたちの暇つぶしと情報をリアルタイムで得る手段でした。普段はゲームやネットがメインなので、久しぶりに家族みんなでカードゲームやボードゲームをしたり、アカペラカラオケ大会をしたりしてなんとか暇を潰しました
(中略)
あの時は9月で暖かく陽が長かったのが幸いでしたが、これが真冬だったら凍死者が出たのでは?とは感じたので、電気も電池も使わない石油ストーブを買い足しました。石油ストーブは灯りにもなるし調理にも使えるのでオススメです!
(略)
(彩花さん)
出典:https://h-navi.jp/selective_surveys/215
実際に被災された方の体験談から、備えの内容についてリアルな声をたくさんいただきました。備えはしていても子どもの特性から非難がうまくいくか不安、避難所での生活や偏食などの心配もありますよね。最近ではアウトドアブームもあり、車内泊やテントでの生活に慣れていると、被災の際に子どもも安心して過ごせそうです。

ほかにも備蓄内容など役に立つコメントがたくさんありますので、ぜひアンケート結果を確認し、参考になさってみてください。

専門家に聞く「防災ノウハウ」

ここからは公認心理師・井上雅彦先生に聞く「防災ノウハウ」をご紹介致します。

「防災の日」に子どもに伝えておきたいことは?

Q:「防災の日」に子どもに伝えておきたい、またはやっておくべきことなどはありますか?

A:防災の日はお子さんにさまざまな「防災」について伝える大事な日です。

防災マップで避難場所や避難場所までの経路を確認しておきましょう。災害時には経路通りに移動しにくいこともあるので、避難所の経路がいくつかあると良いですね。また、昼だったらこのように移動する、夜だったらこのように移動するなど家族でシミュレーションをしておきましょう。

お年寄りや車いすの方が家族にいて、避難時に人の手が足りないときなどは無理に避難するよりも2階などに避難するほうが安全な場合もあります。同じ地域でも個々のご家庭で事情が違うと思いますので、「わが家の避難計画」を立てておくと安心です。

防災グッズの中身や防災グッズを置いている場所などもお子さんと一緒に確認をしましょう。避難の際にお子さんに持っていただきたいものなど伝えて「自分の役割」を決めておくのも良いですね。

非常食なども消費期限の近いものなどは入れ替えて、実際に家族で食べてみるのもオススメです。特に偏食や不安の強いお子さんなどはあらかじめ味を知っておくことで実際の災害の際にも安心して食べられるのではないでしょうか。
井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/公認心理師)
井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/公認心理師)
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子どもが親と別の場所で被災してしまったら?

Q:親と離れた場所で子どもが被災してしまった場合、普段からどのようなことを子どもに伝えておくのがよいのでしょうか。

A:学校や幼稚園にいるときでしたら避難訓練などを思い出し、先生や大人の言うことをしっかりと聞くように伝えましょう。もし1人でいるときに被災してしまった場合にも周囲の大人を頼ることが大切です。勝手に一人で家に戻ってしまったりすることなどは危険につながります。

特性からパニックになってしまうお子さんもいると思いますので、親子で学校や公園など地域の避難所の場所を確認しておき、道のりを一緒に歩いておくのも良いでしょう。また、その際に避難所での家族の集合場所なども決めておくとスムーズに合流ができます。
お子さんが携帯電話などを持っている場合には、緊急時の連絡方法の確認などもしておきましょう。
井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/公認心理師)
井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/公認心理師)
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避難所でどう過ごす? 難しそうな場合はどうしたらいい?

Q:避難所などで子どもがうまく過ごせるか不安です。多動や見通し不安のある子どもにはどのような対応をするのがよいでしょうか。

A:見通し不安のあるお子さんの場合には家で普段使っている大切なものなどをあらかじめ持ち出しておくと安心して過ごせる場合もあります。ひまつぶしグッズなどもいくつか持っておくと良いですね。

しかし、どうしても避難所などでは「いつも通り」が難しく、多動や衝動性があったり、ストレスを溜めやすい発達障害のあるお子さんにはつらい空間となってしまいます。また親御さんも心労を溜めやすいでしょう。

アンケートにもありましたが、その場合には「車中泊」「テント泊」などを検討してみるのも一つの手です。
避難所では仮設トイレや和式トイレなどしかないこともありますので、キャンプなどの場で簡易トイレを使用してみるなど、楽しみながら慣れておくと慌てずに済みます。

普段からアウトドアに慣れているお子さんでしたら、避難所よりもそのような形の方が安心して過ごせると思います。
井上 雅彦先生(鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/公認心理師)
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さまざまな災害に備えるための「防災の日」

地形や地質などの関係で地震、台風、津波、豪雨などの災害が発生しやすい日本。さまざまな災害に備えるために「防災の日」にお子さんと改めて防災への備えや意識を確認してみませんか。

また、発達障害情報・支援センターでは「災害時の発達障害児・者支援について」としてリーフレットを公開しています。
あらかじめこちらを印刷して荷物に入れておいたり、子どもの特性、声掛け方法についてまとめておくとより安心して過ごせそうです。
参考:被災地で、発達障害児・者に対応されるみなさんへ|発達障害情報・支援センター
http://www.rehab.go.jp/ddis/disaster/disaster_supporter/
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