チェックを受けて問題の核心を知る

簡易チェックでニャーイの見え方の疑似体験をして驚く妻ワッシーナ
簡易チェックでニャーイの見え方の疑似体験をして驚く妻ワッシーナ
Upload By ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ
その講演で紹介された、物の見え方に関する簡易チェックを家族全員で受けてみたところ、講師から「長女ニャーイさんと次男ウッシーヤさんには、読字の問題があるようです」と言われました(この講師は医師ではなく、診断を受けたわけではありません。あくまで当時の体験をもとに書いています)。
今思えば、「ディスレクシア」に近い症状があったのだと分かります。

なかでもニャーイは症状が重いらしく、講師から「縦書きの文字はかなり読みづらいはず。パソコンで変換して横書きにして読むと読みやすいと思います」とアドバイスされました。

また当事者の疑似体験ができるコーナーで、私は講師から「ニャーイさんの見え方が疑似体験できるメガネをかけてみてください」と言われ試してみました。

すると、メガネをかけたとたんに目が回りました。手元にある本を読もうとすると、本の中央の綴じ目にある余白部分と、紙面の文字がいくつも重なって暴れて見えるので、とても読めたものではありませんでした。

私は心の底から驚きました。ニャーイに「こんなに読みづらくて、よくやってこれたね」と声をかけました。
すると彼女は「生まれつきだから、変だとか苦しいとか思ったことがない」との返事でした。

ニャーイが学校で「能力があるのに勉強をしない」「演奏がうまいはずなのに怠けている」という誤解を受けた原因は、文字や楽譜がうまく読めていないことだったのでは……と気づきました。

また、ニャーイは高校からオールイングリッシュで学ぶインターナショナルスクールに進学し、そこで学力の目覚ましい進歩を遂げたのですが、それももしかすると、縦書きの日本語よりも横書きの英語での学習が本人に合っていたからなのかもしれません。

ニャーイは今、英語と絵と音楽を仕事にしています。早い段階で、自分に合った環境に身を置き、自分の特性や得意な部分に気がついたからこそ、実現したことではないかと思っています。
執筆/ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ
(監修:森先生より)
「ディスレクシア」は、学習障害のひとつで、文字の読み書きが困難である状態を示します。文字の一つひとつが分かっていても、単語として認識しづらかったり、うまく文章として認識できないので、時間がかかったり間違えてしまうのです。「音韻処理」といって、「文字を見てその読みを頭の中でスムーズに処理する」という機能に困難があるのではないかと言われています。

一度文章や楽譜の内容を理解して覚えてしまえばその後はスムーズに読めることが多いのではないでしょうか。本人は真面目に努力しているのに、周囲からは「本当はできるのに、わざと間違えているのでは?」と誤解されてしまうこともあり、とってもつらいですよね。

「ディスレクシアではないか?」と思ったら、単語や文の切れ目に補助線やスペースを入れたり、色をつけて単語のまとまりを分かりやすくしたり、音読をしてあげて理解を手伝ったりと、いろいろな方法を試してみましょう。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
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