「なんか変」で既に39.8度!身体の不調に鈍感すぎる自閉症娘、親ができることは
ライター:寺島ヒロ
ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもとの日々は、予測不可能な事が起こりがちです。20年以上のわが家の凸凹きょうだいとのつき合いの中で、最も私が悩まされたのが突然の体調不良。特に妹のいっちゃんは「感覚鈍麻」があるせいか、自分の体調のモニターが苦手なので、いきなり倒れて重症という事があり「さっきまで元気だったのに?」と、困惑させられました……。
監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
丈夫で我慢強いASD娘
現在16歳のいっちゃんは、生まれた時こそ2450gとやや小さめで心配させられたものの、16年間大きな病気もせず、スクスクと育ちました。風邪をひくこともほとんどなく、内臓の病気にかかったこともありません。記憶に残るのは、3歳の頃にかかった突発性発疹、小学生の時のインフルエンザ、そして高校生になってかかったコロナぐらいです。
しかし、この「たった」3回、全て発見が遅く、大変心配をさせられる事態となりました。
「なんかおかしい」と本人が言いだした時はすでに重症!
いっちゃんは、自分の体調のモニタリングが難しいため、悪くなるサインもいきなりやってきます。
インフルエンザにかかった時は、本人が「なんかおかしい」と言うので熱を測ったらドカンと39.8度! 昼間は機嫌よく学校に行って、さっきまですごい勢いでピアノを弾いていたのに……!?
慌てて夜間診療に連れて行ったのですが、呼吸が十分にできておらずパルスオキシメーターの値も95を下回っていました。
90%を下回ると速やかに病院へ受診しなければいけないほどの危険領域だとか! さすがにあの時は私もスッ……と血の気が引きました。
90%を下回ると速やかに病院へ受診しなければいけないほどの危険領域だとか! さすがにあの時は私もスッ……と血の気が引きました。
参照:「よくわかるパキシオルメータ」P5 | 一般社団法人 日本呼吸器学会
親が子どもの具合が悪くなるサインを見つけなければ……とはいえ……
いっちゃんには睡眠障害もあるため、親から見て「ちょっと調子が悪そうだな」と見て取れても、病気ではなく、まず「眠れてないのかな?」と考えてしまうことも。これが、私たち家族がいっちゃんの病気を見逃す原因となっていると思います。
今年(2023年)になってかかったコロナの時は全くそのパターンでした。30時間以上寝ないで絵を描いていた娘が「なんだか気分が悪い。足が寒くてしびれる」と言ってきました。一応コロナを警戒して熱は測ったのですが、その時は平熱。なので、「寝なさい! 寝ればきっと治るよ」と言って、詳しく様子を聞かず「早く早く」と寝せてしまったのです。
ところが、3時間ほど経って夜中に再び起きてきた娘。「頭痛くて眠れないんだけど……」と言うではないですか。熱を測るとすでに38.5度! 展開早っ!?
痛みに強いということと関係あるのか、いっちゃんはずっと意識を保っていたため、その夜は救急車も救急病院も断られてしまいました……(ちょうど受け入れが厳しい時期だったのです……)。
結局自力で持ち直し、翌日「発熱外来」で診断と診察を受けることができましたが、その時は本当に心配でしたし、「昨日のうちに何か兆候が出ていたのでは? 病院に連れて行っておけば良かったのでは?」と思うことを止められませんでした。
今になって考えるともちろん反省はしていますが、いっちゃんのような子どもの場合、早期発見しようと頑張っても、いかんともしがたい壁のようなものがあるよなと思います……。