きょうだい児とは?進路、結婚、親なきあと、保護者の関わり方など【医師監修】
ライター:発達障害のキホン
障害のある子どもを取り巻く課題に関連して、「きょうだい児」という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。きょうだい児とは、障害のある子どもの兄弟姉妹について使われる言葉です。
子どもの頃から家庭内でケア的役割を担う場合もあり、その結果、必要以上に責任を負いがちになったり他者を優先するようになったりと、心身の不調につながる場合もあると言われています。
今回はきょうだい児について、ヤングケアラーとの違いや発達ナビで行ったアンケートの結果、専門家へのQ&Aなどを紹介します。
監修: 室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
筑波大学医学部卒。国立成育医療研究センターで小児科研修終了後、東京女子医科大学八千代医療センター、国立成育医療研究センター、島田療育センターはちおうじで小児神経診療、発達障害診療の研鑽を積む。
現在は、名古屋市立大学大学院で小児神経分野の研究を行っている。
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
きょうだい児とは?
きょうだい児とは
「きょうだい児」は、障害のある子どもの兄弟姉妹を指す言葉として使われています。保護者が障害のある子どものケアを行っていることで、きょうだい児はバランスを取るため、家庭内で優等生的な役割を演じることや、自分よりも他者を優先するようになることがあると言われています。そして、そういった状態が続くことで心身の不調や不登校などにつながる可能性も指摘されています。
一方できょうだい児にはその環境から「他者への配慮ができるようになる」「責任感が強い」「自立した人になる」などのポジティブな面もあると言われています。こういったさまざまな面があるきょうだい児ですが、これまで注目されてこなかったこともあり、まだ支援制度などが整っていないというのが現状です。
兄、弟、姉、妹のそれぞれの漢字の組み合わせで「きょうだい」という読み方があるため、漢字ではなくひらがなで表記される場合が多いので、本コラムでも「きょうだい児」と表記していきます。
一方できょうだい児にはその環境から「他者への配慮ができるようになる」「責任感が強い」「自立した人になる」などのポジティブな面もあると言われています。こういったさまざまな面があるきょうだい児ですが、これまで注目されてこなかったこともあり、まだ支援制度などが整っていないというのが現状です。
兄、弟、姉、妹のそれぞれの漢字の組み合わせで「きょうだい」という読み方があるため、漢字ではなくひらがなで表記される場合が多いので、本コラムでも「きょうだい児」と表記していきます。
きょうだい児はどのくらいいるの?ヤングケアラーとの違いは?
近年、きょうだい児についてメディアなどで取り上げられる機会も増えてきています。しかし現在までに国などの大規模な調査は行われておらず、日本全国にきょうだい児がどのくらいいるのかは、よく分かっていません。
また、「ヤングケアラー(本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている18歳未満の児童)」という言葉も注目されています。
ヤングケアラーは直接的に家事や家族の世話をするという点できょうだい児とは異なっているものの、きょうだい児もヤングケアラーも、「ケアをする側」としての役割を求められがちで、「ケアが必要な存在」として認識されにくいという共通点があります。
本コラムでは、きょうだい児の抱えやすい悩みや、保護者の関わり方などについて、発達ナビで行った「きょうだい児」に関するアンケート結果を交えて紹介します。また、小児科医として発達障害のお子さんやご家族と多く関わってこられた室伏佑香先生にもお話を伺いました。
また、「ヤングケアラー(本来大人が担うと想定されている家事や家族の世話などを日常的に行っている18歳未満の児童)」という言葉も注目されています。
ヤングケアラーは直接的に家事や家族の世話をするという点できょうだい児とは異なっているものの、きょうだい児もヤングケアラーも、「ケアをする側」としての役割を求められがちで、「ケアが必要な存在」として認識されにくいという共通点があります。
本コラムでは、きょうだい児の抱えやすい悩みや、保護者の関わり方などについて、発達ナビで行った「きょうだい児」に関するアンケート結果を交えて紹介します。また、小児科医として発達障害のお子さんやご家族と多く関わってこられた室伏佑香先生にもお話を伺いました。
きょうだい児への関わり方、どうしたら?発達ナビアンケート結果とエピソードのご紹介
発達ナビでは、発達障害のあるお子さんのいるご家庭に「きょうだい児関係」のアンケートを実施しました。
ここではアンケート結果と、保護者の方からお寄せいただいたお悩みやエピソードなどをご紹介します。
ここではアンケート結果と、保護者の方からお寄せいただいたお悩みやエピソードなどをご紹介します。
きょうだい児がいる割合は、今回アンケートに回答いただいたご家庭のうち、約60%にきょうだい児がいるという結果になりました。内訳として、年上のきょうだい児(兄姉)がいる家庭と、年下のきょうだい児(弟妹)がいる家庭は29%で同じ割合でした。そして、年上と年下のきょうだい児両方がいるという家庭も2%でした。また、きょうだい児とは異なりますがきょうだい共に特性があるというご家庭は22%という結果でした。
実際に読者の方から寄せられた、きょうだい児がいるご家庭のエピソードを紹介します。
実際に読者の方から寄せられた、きょうだい児がいるご家庭のエピソードを紹介します。
思春期には殴り合いの大げんかも…いまはお互いを尊重できる関係に
長男に障害があり、次男がきょうだい児です。長男に障害があると分かった時からは、きょうだいそれぞれが私(母)を独占できる時間を意識してつくるように心がけました。
長男が宿泊活動で家にいない時には、次男は学校を休ませて一緒に旅行に出かけるようにしたり、長男が放課後等デイサービスに通っている間は次男のリクエストに可能な限り応えるようにして過ごしていました。
思春期の頃はきょうだい共に荒れて殴り合いのけんかをしたこともありましたが、成人した今となってはお互いができることを尊重できるようになり、長男ができないことを次男がサポートするといった関係になっています。
不安が強くきょうだい児の姉に執着。姉の学業にも影響が……
姉がきょうだい児で下の子に発達障害があります。
下の子は一人になることに強い抵抗があり、きょうだい児である姉に対して執着し、姉も親を気遣って我慢している様子があり感謝と申し訳なさを感じています。
下の子は姉に対して遊び相手としても心のよりどころとしても執着して、常にそばにいたがるので、姉は家庭で勉強もリラックスもなかなかできず学校の成績や宿題に影響が出ることもあります。しかし、遊びを断ると癇癪を起こすので、他のことがしたくても一緒に遊んでくれているのです。
そのために疲れて体調を崩すこともありますが、「自分が遊びの誘いを断ることで家族が困るくらいなら自分が我慢すれば……」と話して相手を続けてくれているようです。できる限り親が遊び相手をするようにしていますが、仕事や家事などもあり、限界があるため姉は親を気遣ってくれています。
下の子は時には他害することもあり、きょうだい2人だけにするのは危険なため親のどちらかが立ち合いのもとで遊ばせるようにしています。
きょうだい児の悩み……結婚、親なきあとは? 医師Q&A
次に、きょうだい児がいる家庭が抱えやすい課題や、よくある悩みについて、保護者としてどのように関わっていけばよいのか、小児科医の室伏佑香先生に伺いました。
Q:きょうだい児に十分かまってあげることができず心苦しく思っています。
(質問)障害がある子どもにどうしても手がかかってしまい、きょうだいに十分かまってあげることができず心苦しく思っています。
(回答)お子さんに障害がある場合には、通院や療育などでどうしても障害のある子を連れて行かなければいけない場面や、家庭内でも介助や対応などが必要できょうだい児に寂しい思いをさせてしまうこともあるかと思います。
ショートステイなどの福祉サービスを利用し、保護者ときょうだい児がゆっくりと向き合える時間を意識的につくっていくのもよいでしょう。
ショートステイなどの福祉サービスを利用し、保護者ときょうだい児がゆっくりと向き合える時間を意識的につくっていくのもよいでしょう。
Q:きょうだい児の不安に、保護者としてどのように対応すべきでしょうか?
(質問)発達ナビのアンケートやその他調査などでからも、きょうだい児は、自分の人生を自分だけで決められないと感じたり、将来への不安があることもうかがえます。保護者としてどのように対応すべきでしょうか?
(回答)きょうだい児の方は、進路や居住地、結婚についてなど、自分の思い通りに決断することに後ろめたさを感じてしまう方も多いようです。成長するにつれて保護者に話しにくい悩みも出てくることと思います。同じ立場で話し合えるきょうだい児の当事者会などへ参加できるようにサポートするのもよいでしょう。
Q:親なきあとが心配です。親としてどのような準備ができるでしょうか。
(質問)親なきあと(親が障害のあるきょうだいの世話ができなくなった時)が心配です。親としてどのような準備ができるでしょうか。
(回答)グループホームなど障害のある子どもの住まいや、公的な障害年金以外にも障害がある子どもが受け取れるお金の仕組み(金融機関などを活用する信託や、自治体が運営している障害者扶養共済など)などがあるので、さまざまな情報を整理して、準備しておくと良いですね。
また、親なきあとに向けて、将来的に成年後見制度などを活用することも見すえ、障害のあるお子さんが自立できる支援体制を整えておくことが大切です。
また、中には必要以上に責任を感じて自分が面倒を見なければならないと思ってしまうきょうだい児の方もいます。日ごろから家族でよく話し合って、福祉制度や活用できる支援に対する理解を深めておくといいでしょう。
また、親なきあとに向けて、将来的に成年後見制度などを活用することも見すえ、障害のあるお子さんが自立できる支援体制を整えておくことが大切です。
また、中には必要以上に責任を感じて自分が面倒を見なければならないと思ってしまうきょうだい児の方もいます。日ごろから家族でよく話し合って、福祉制度や活用できる支援に対する理解を深めておくといいでしょう。