自閉症息子に9歳で用意した一人部屋。プライバシーを大切にしつつも必要な環境設定、支援とは

ライター:まゆん
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ASD(自閉スペクトラム症)の太郎には、2つの部屋があります。その使い分けと、中学生になった今でも必要なサポートとは…?

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

太郎が自宅で過ごす場所

ASD(自閉スペクトラム症)の太郎は、主に2つの部屋で過ごしている。

1つは学習用品を置く場所で、ばあばと共同の部屋。もう1つは完全に太郎専用の部屋で、太郎の好きな物がたくさん置かれている部屋だ。そこに、勉強机とパソコンも設置されている。

ちなみに太郎の寝室はまた別の部屋であり、完全に1人の寝室である。
ASD(自閉スペクトラム症)の太郎は、主に2つの部屋で過ごしている
太郎は、主に2つの部屋で過ごしている
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太郎専用の部屋を用意した理由

太郎専用の部屋は、プライベートを大切にさせたいと思い、太郎が9歳の頃に用意をした。最初の頃、太郎はあまり利用していなかったが、徐々にブロックや駒で遊ぶ場所として、思考が停止した時などの切り替え部屋として利用する時間が長くなっていった。

ばあばと共同の部屋は6畳の小さな部屋であり、テレビも置かれている。なので広いリビングよりも家族全員がそこに集まってテレビを観ることもある。太郎はそこで宿題をする日もあれば、もっと集中力を高めたい時などはもう1つの太郎専用の部屋に移動して宿題をしている。

太郎専用の部屋は5畳と狭いが、逆にその閉塞感が太郎には落ち着くのではないかと推測している。長い時では1日の半分をその部屋で過ごし駒を回したり宿題をしたりねんどで何かを作成したりして過ごしている。

環境調整には第三者が必要

太郎は集中しすぎてお腹がすいていることに気づかないことがあるので、私から声かけを行うことも多い。

また、寒い日でも遊びに集中しすぎてエアコンもつけずに半袖で数時間遊んでいることが何回もあった。身体は冷たくなっていたが本人は鈍感なのか「寒くない」と言っていた。逆に夏の暑い日も集中しすぎてエアコンをつけずに汗だくで遊んでいたので、私がこまめに気をつかい、エアコンの状況を見に行くようにしている。

環境や服装の調整も難しいのだなあと感じる日々だ。
ASD(自閉スペクトラム症)の太郎は、冬でも半袖で過ごすことがある
太郎は、冬でも半袖で過ごすことがある
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小学校の頃、太郎は特別支援学級に通っていて、教室の中には切り替えの場所が設けられていた。

教室の隅にパーテーションで狭く区切られた2~3畳ほどの広さの空間には、ブロックや跳躍器具、本などが置かれていた。そして机は、一人ひとり隣が見えないように仕切りが立て付けられていた。
小学校時代、太郎は特別支援学級に通っていた。教室の隅には切り替えの場所があったり、机には両サイドにパーテーションが置かれていた
小学校時代の特別支援学級教室の様子
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わが家はそれを意図していたわけではなく、たまたま部屋があっただけだが、太郎には良い環境になっているのではないかと思えている。

以前は分からない宿題があればすぐに私や祖母にヘルプを出しに来ていたが、最近はそういうことが減った。部屋に引きこもってなにやら集中力を高めている(のか、何をしているのか……)。

あとがき

空調の調整は、温度計と湿度計を部屋に置き、それを確認しつつ太郎の感覚と意見を確認しながら行っています。太郎はだいたいが「NO」とは言わないため、結果的に私の判断で調整することが多いです。

いまだに、自分で時と場合に応じた服選びも行いません。したくないから行わないのではなく、環境に応じた服選びというものが難しいようです。寒いから厚手の服を着る、暑いから冷房をつけるなど物事と物事を結びつけることも苦手としているようです。

以前、専門家の方から受けた社会的年齢の低さの指摘はこういう日常生活を1人で行えるのか? というところからの指摘でもありました。4月からは中学3年生。先のことをいろいろ考えています。

(執筆:まゆん)
(監修:鈴木先生より)
温度環境に応じた服選びが難しい場合、温度帯ごとに服を並べてその中から選ばせるという支援方法があります。例えば室温が17℃なら15℃から20℃の間にある服を着て、外が8℃なら外出するときは5℃から10℃の間にある服を選ぶということです。気温の数字を見える化し、視覚的に訴える方法です。

また、知的障害のあるお子さんには感覚鈍麻の傾向がみられることもあります。もし気になる保護者の方がいらっしゃいましたら、IQ検査を受けてみるのもよいと思います。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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