【精神科医・本田秀夫】知的障害の子育ては「逆算」がいい理由。発達理論から支援の枠組みを考える

ライター:本田秀夫
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知的障害のあるお子さんの場合、成人期の見通しを持つと、支援がしやすくなります。将来のために、いま何をすることに意味があって、何にはあまり意味がないのかが、分かりやすくなります。大人になったときの状態から「逆算」して、いま何に取り組むかを考えられるようになるわけです。

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執筆: 本田秀夫
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授
附属病院こどものこころ診療部長
発達障害に関する学術論文多数。日本自閉症スペクトラム学会会長。

大人になったときの状態から「逆算」する

私は知的障害のあるお子さんの親御さんと話すときに、例えばこんなことをお伝えすることがあります。

「お子さんは将来、スーパーマーケットに買い物のリストを持っていって、必要なものを購入してくることは十分にできそうです。ただし、金額の複雑な計算は難しいかもしれません」

そして、その見通しから逆算する形で

「いま教えたら身につきそうなことを一緒に考えていきましょう。例えば、買い物リストを見ながら必要な商品をカゴに入れることはできそうですから、練習してみましょう」

といったことを具体的に提案するわけです。

本人が着実に身につけていけることを考える

本人が一人で買い物リストをつくることや、必要な金額を計算することは難しいかもしれません。そのようなことを教えても、適切な支援にならない可能性があります。それよりも本人が着実に身につけていけることを考える。そして家族にはサポートの仕方を知ってもらう。そのような形で、支援の枠組みを考えていくのです。

家族が買い物のリストと代金を用意する。本人はそれを持って買い物に行く――そのような枠組みで、生活習慣を習得していける場合があります。
仕事についても同じようなことが言えます。

「支援があれば、これができる」という見通し

例えば、職場側にマニュアルを用意してもらえれば、それにそって作業を行うことはできるという人もいます。知的障害の子育てではそのような形で、本人に合った枠組みを整えていくことが大事です。

親御さんがお子さんに対して「こういう支援があれば、こういうことができる」という見通しを持てれば、それをほかの人に伝えることができます。家族や園・学校の先生、療育機関の支援者、職場の関係者、ヘルパーさんなど、お子さんに関わる人たちに「こういうところを手伝ってください」と、具体的なお願いができるようになるのです。

ピアジェの「認知発達理論」を参考に

「逆算」を考えるときに、参考になる理論があります。スイスの心理学者ジャン・ピアジェが提唱した「認知発達理論」です。ピアジェは子どもの認知の発達を、次のように4段階に分けて説明しました。
・感覚運動期(0〜2歳頃)
赤ちゃんはおもちゃを手でさわったり、口にくわえたりして、ものとして認識します。ピアジェは、乳幼児期の子どもは感覚と運動によってものごとを理解していると考え、この時期を「感覚運動期」としました。

・前操作期(2〜7歳頃)
幼児期になると子どもは、言葉を使ってものごとを理解するようになります。しかしまだ理解があやふやで、情報をうまく扱うことはできません。ピアジェはこの時期を、ものごとを頭の中で「操作」する前の時期ということで「前操作期」としました。

・具体的操作期(7〜11歳頃)
小学校に入るくらいの年代になると、子どもはものごとを具体的に理解できるようになってきます。ピアジェは情報を「操作」すること、つまり論理的に考えることも、少しずつできるようになると考えました。一方で、この時期にはまだ抽象的な思考、例えば仮説を立てることなどは難しいとされています。

・形式的操作期(11歳頃〜)
ピアジェは11歳頃から認知の発達が次の段階に進むと考えました。この頃から、子どもは抽象的に考えることができるようになっていきます。頭の中で仮説を立てたり、一般論を考えたりするようになります。知識を使って、形式的に考えられるようになる時期ということで、「形式的操作期」とされています。
ピアジェの認知発達理論を参照すると、知的機能がどのように発達していくのかがよく分かります。それによって、知的障害のあるお子さんへの支援を検討しやすくなります。
次ページ「大人になって「抽象的な思考が難しい」場合」

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