2.専門機関につながりにくい環境的・心理的ハードルがある

つながりにくい環境

相談先リソースの少なさ、医療機関や検査ができる専門機関のリソースの少なさ(検査・診断待ち)、地域格差(地域によって対応が違う、アクセスできる専門機関の少なさなど)という課題があります。

発達について、専門的な心理検査やアセスメントができる専門機関や、小児神経専門医など発達障害の診断・治療・指導を担当できる医療機関の数は十分ではないというのが現状です。また、近年発達障害が知られるようになり、相談機関や医療機関を利用したいという保護者の数は増えています。そのことから、全国的にリソース不足の状態が続いています。

発達検査や知能検査などを受けたり、医療機関を受診したりするまでに待ちが発生している現状もあります。また、既存の検査や診断は、専門機関や医療機関に子どもが足を運び、問診や実際に検査を受けるなど、対面でおこなう必要があるというのも、一つのハードルです。心理検査は2〜3週間程度、確定診断となるともっと時間がかかることもあります。

こういった点に関して、全国どこからでもアクセスでき、即時で結果が分かるオンライン検査という方法は、保護者の悩みに応えたいという思いから開発されています。

心理的ハードル

物理的ハードルだけではなく、保護者にとっては心理的ハードルも大きいものです。

例えば、保護者が初めて相談に行くときには、誰かに相談したいという気持ちの一方で、子育てについて責められるのではないか、障害について何か言われるのではないかなど、迷いや不安な気持ちから心理的なハードルを感じ、葛藤される方も多いと思います。そうすると近くに相談機関があってもなかなか踏みだせないこともあるでしょう。

この検査は子どもに対して障害の診断をするものではありません。診断によらず支援のヒントが得られることが特徴です。保護者の方がお子さまに関して日頃感じていらっしゃることを思い出しながら、表示される質問に対して表示される選択肢を選んでいくことで、一人ひとりに合わせた困りごとの背景要因や対応方法の例が示されるようになっています。

実際に検査機関に出向くのが難しい親子や、今この瞬間困っている親子にとって、この検査をもとにして、対処方法を考えるヒントにしたり、専門機関につながっていく最初のステップにすることもできると思います。

3.困りごとに対する対応策が分からない

お子さまに何らかの特性や困りごとがあったとき、保護者にとって最も知りたいことは、その子に対してどう接すれば良いのか、どのようなサポートがあれば、困りごとが軽減できるかということではないでしょうか?

一般の発達検査というのは、心理士などの資格のある方が時間をかけて実施するものです。検査によって、どの分野が苦手かは分かりますが、どのような背景が関係しているのか、その苦手にどう対処していくかなど、 一人ひとりに合わせたアドバイスをもらおうとすると、十分な説明やそのための時間がないというのが現状のようです。

そうなると、保護者の方が欲しいと思っている情報までは得られにくい、と聞くこともあります。

この検査を受けていただくと検査結果として、お子さんの特性と背景、どう接するかという「サポートの方向性」が示されます。これはその子の特性や困っていることについて、また向いていそうな接し方やサポートのヒントが、1冊の本ができあがるようなボリュームで得られるように制作しています。これは検査対象のお子さま一人ひとりに合った、非常に有益な情報が手に入るということになると思います。

もちろん、通常の心理検査や発達検査と併用していただくと、より具体的なものが得られるということがあると思います。 ほかの知能検査や発達検査、心理検査と合わせて使うことによって、よりお子さんの特性は分かりやすくなると思います。

専門家や関係者とも、ぜひ情報共有のツールや相談のきっかけとしても使っていただきたいですね。

一人ひとり、年齢や困りごとに合った対応方法は異なる

検査の結果出力されるレポートは、一人ひとりのお子さまに合わせたオリジナルの支援内容が提案されています。私を含め7人の専門家が、それぞれの専門領域のレポートの支援内容やテキストを監修しています。

レポートは「家庭でのサポートの方向性」だけでなく「園・学校でのサポートの方向性」の2つに分けて書かれています。また、幼児期、児童期、青年期などの年齢段階に応じてそのサポート内容を書き分けています。さらに知的障害などで言語的なコミュニケーションが困難な場合に配慮したサポート内容も用意しています。

例えば、未就学の子どもと高校生では、状況や環境、求められる適応的な内容も違います。そうすると困りごとの現れ方も変わりますし、対応方法や、保護者や周りの関係者の関わり方も合わせて変えていくことが必要になります。

この検査結果を保護者の方が読んで、すべての困りを解決することは難しいかもしれませんが、「園・学校でのサポートの方向性」をもとに、支援者と連携して、取り組んでいかれるといいと思います。

LITALICO発達特性検査を、困りごと解決への第一歩に

LITALICO発達特性検査の検査結果レポートを読む井上雅彦先生
LITALICO発達特性検査の検査結果レポートを読む井上雅彦先生
Upload By LITALICO発達特性検査 編集部
LITALICO発達特性検査の最大の特徴は、診断の有無や種類にかかわらず、子どもの困りごとからその背景要因を知り、支援につなげていけるところです。

再掲になりますが、オンラインで気軽に受けられる検査として、LITALICO発達特性検査は今回挙げた

1.何となく困っているが、漠然としていて困りごとの背景要因が分からない
2.専門機関につながりにくい環境的・心理的ハードルがある
3.困りごとに対する対応策が分からない

という3つの課題に対して、解決に向けたリソースになり得るのではないかと思います。ぜひ検査結果をPDFでダウンロードし、印刷してみてください。お子さまの特性と支援のノウハウをまとめたボリュームたっぷりの一冊の「本」になります。

LITALICO発達特性検査で、親子の困りごとと対応方法についての情報や、きっかけを得ていただけるといいなと思います。そうして、子育てのハードルを下げるための第一歩を踏み出して欲しいです。
「特性を検査する」ってどういうこと?【LITALICO発達特性検査監修者・井上雅彦先生インタビュー】のタイトル画像

「特性を検査する」ってどういうこと?【LITALICO発達特性検査監修者・井上雅彦先生インタビュー】

「個と環境の相互作用」の視点、子どもの困りごと解決にどう役立てる?公認心理師・井上雅彦先生に聞きましたのタイトル画像

「個と環境の相互作用」の視点、子どもの困りごと解決にどう役立てる?公認心理師・井上雅彦先生に聞きました

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。

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