発達特性のある息子、大学進学で「合理的配慮」は受けられる?就活まで役立った自作の"特性説明台本"を紹介

ライター:ラクマ/ワッシーナ/ニャーイ
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わが家は家族全員が個性いろいろな発達に特性のあるタイプです。それぞれの特性をキャラクター化しており、動物の顔をしています。次男ウッシーヤは、ウシのキャラクターです。これは彼がウシみたいに行動がスローなタイプであることを表現しています。
今回はウッシーヤが大学で受けた合理的配慮について紹介します。

監修者井上雅彦のアイコン
監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。

高校から推薦をいただき、大学受験へ!発達支援施設からの助言で県の合理的配慮の申請テンプレートを活用

通っていた学校の学園長から推薦を受けて大学を受験
通っていた学校の学園長から推薦を受けて大学を受験
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わが家は母である私・ワッシーナを筆頭に、家族全員が個性いろいろで、発達に特性があるタイプです。今から7年前、高校3年生の次男ウッシーヤは、子どもの頃からの夢だった保育士になるために、地元の大学を受験しました。大学の受験にあたり、ウッシーヤが通っていたインターナショナルスクールから学園長の推薦を受けることができました。

また、ウッシーヤが中学生の頃から通っている発達支援施設で助言を受け、県が作成しているテンプレートを活用して「合理的配慮申請書」を提出することにしました。
合理的配慮申請書の写し①最も重点的に支援してもらいたい課題
合理的配慮申請書の写し①最も重点的に支援してもらいたい課題
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合理的配慮申請書の写し②本人が困ったときに対応してもらいたいこと
合理的配慮申請書の写し②本人が困ったときに対応してもらいたいこと
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合理的配慮申請書の写し③誤解を受けがちな言動とその対応
合理的配慮申請書の写し③誤解を受けがちな言動とその対応
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しかし、申請書の記載内容に加えて、さらに詳細に支援希望を伝える必要があると考え、以下の内容を記した別紙も用意しました。

申し出内容
・社会的スキル指導
・修学上の配慮(演習科目について先の見通しを明示してほしい。一度に多くの課題や作業工程を与えず、全体の見通しを示し、メモなどで段階的にやるべきことを指示してほしい)
・定期的なカウンセリング
・整理整頓の補助
・授業中のサポート(気が散りやすく、ノートをとることが難しいため)
・休憩室の確保
・補習、補講の提供
・スケジュール管理サポート(レポート作成提出物等の声掛けなど)
・進路指導
・休講や諸行事など、履修時に関する重要な情報の提供(各教員から学生支援課へ連絡を受けたら、学生支援課から本人へ伝達)
・支援生による過去問収集や定期試験の時間割作成のサポート
・修学支援やレポート提出支援のためのチューター確保
・月一回程度のメールを使用した家庭への報告
・レポート、宿題等、連絡事項の書面化
・教室の調整(空調やトイレの近さなど)
・試験時の配慮(別室にて通常の1.3倍に試験時間で対応)

このように、ウッシーヤが大学で学ぶために必要と思える支援を思いつく限り書き出して、大学に提出しました。

大学側は希望以上の体制で対応!不安だった学習面は家庭と学校の両面で支援

大学での合理的配慮の全体図
大学での合理的配慮の全体図
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その後ウッシーヤは試験に合格し、大学に入学しました。大学では、わが家が希望した以上の手厚い支援を行ってくれました。学内では、チームをつくって対応していただきました。

①事前に講義レジメをメールでいただき、受講前に目を通して講義に備えた

②同じクラスの社会人学生(親子ほど年齢が違う方)がサポート担当に

③毎週1回、担任教授が学生たちに呼びかけてサポートチームを用意。教授とチームの学生たちとで、さりげなく一緒にランチをとってくれて、本人の困りに寄り添ってくれた

④講義中やテスト中は耳栓の使用を許可された

⑤試験は10分延長かつ別室で対応

⑥担当教授の気づきがあれば、その都度、保護者とメールで報告

また家庭ではプロライターである夫ラクマが、提出するレポートをチェックし、書き方のアドバイスを行いました。

学内や実習先で本人の特性説明を発表した際につくった原稿を一部紹介

私たちは、ウッシーヤが大学や研修先に最初に行く時、自分の特性を説明できるように、あらかじめ原稿を用意していました。原稿の内容を一部ご紹介します。
 
「僕は発達障害という目に見えない個性を持っています。性格とよく間違われるんですが、心ではなく脳のつくりがスペシャルなのです。大きな特徴は次の3つです。

①体質的に感覚が過敏です。
②好きなことしかできない気質です。
③考えや感じ方がかなりユニークです。
 
・絵
・写真
・文字
・実演

で伝えてくれると、とても助かります。『こんなことまで説明しないといけないの』と思うぐらい具体的に細かく説明してもらえるとうれしいです。

●自由回答の質問は、ときどき頭のなかで迷子になるので、その時は選択肢を準備してもらえると助かります。例えば、『この質問はYesかNoで答えるんだよ』とか『この質問は、この範囲のなかから答えるんだよ』と言ってもらえるとナビのように目的に焦点を合わせることができて、とんでもなく見当違いな答え方をし、皆さんを迷わせなくてすみますので助かります。

●急な予定変更も頭のなかで迷子になるので、事前に予告してもらえると助かります。不思議に思われるでしょうが、好きなことは平気な場合があります。

●何か迷惑や間違ったことをした場合、『ダメ!』だけでなく、してほしいことを『こういうときは、こうするんだよ』と具体的に単純明快に言ってもらえると助かります。例えば『この場合のお辞儀は、頭を3秒下げるんだよ』とか具体的に教えてください。
 
●困っているという自覚もあまりないです。困って固まっていても表情に出にくいので怒って無視しているように見える場合があります。

●集中しすぎて返事ができないときがあります。そのときは机や肩を叩いてくれると助かります。
 
●感覚過敏があります。体質的に音や光・におい・温度・肌触りなど苦手な感覚がいろいろありますが、特に音と人混みが苦手です。長い時間、うるさい環境のなかにいると拒絶反応を起こしてイライラしてしまいます。その場合は、静かな場所やガムなどを食べるとおさまります。でも、あまり自覚症状がないため、自分でも気づかないでイライラしたりします。そんなときにお気づきになった方は、声をかけてくれると助かります。
 
以上の工夫は、僕にとっては視力が弱い方のメガネのように、僕にとってはなくてはならないメガネです。足の不自由な方が車椅子を使うことと同じことです。うまく工夫できず、皆さんに迷惑をかけるかもしれませんが、いろいろなメガネを工夫して使いこなせるよう努力していきますので、これからもよろしくお願いします。」
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