まゆみの変化

まず驚いたのは、楽器を選んだことでした。
二択でも「選ぶ」という行為が難しいまゆみにとって、並べられたものから一つを手に取るだけでも珍しいことでした。選んだすぐあとでほかのものが気になって手を伸ばしたりしてしまう姿は今も見られますが、少しずつ「選ぶ」「順番」の概念を学んでいってくれているように思います。

さらに、表情が乏しかったまゆみが、太鼓の周りを走りながら満面の笑みを見せてくれたことも衝撃でした。リラックスタイムで、たくさんの造花の花びらをまき散らしながら嬉しそうに寝そべっていた様子も忘れられません。
まゆみが好きだった手遊び
まゆみが好きだった手遊び
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一番の変化は、教わった手遊びを家でも繰り返すうちにまゆみから催促してくれるようになったことです。一緒に遊びたくてもまゆみが受け付けてくれない日々が続いていた中で、初めて「わが子と遊んでいる」という実感が持てました。あまりに嬉しくて、自宅用に買ったリトミックスカーフがボロボロになるほど相手をしました。触れ合いが増えていくにつれてまゆみの表情が柔らかくなっていき、笑顔が増えていきました。

振り返りと、現在

ぴあちぇ~れさんには音楽を通して「楽しい」という感覚を育ててもらえたのではないかと思います。
そうして1年4ヶ月ほど楽しく通わせてもらいましたが、まゆみが3歳になる直前に一旦卒業することになりました。メインとなる療育先を移って単独通所を始めることになり、平日昼間の予定が埋まることになったためです。

それから2年ほど経ったまゆみ5歳3ヶ月のとき、ぴあちぇ~れから「金曜夕方のクラスを開設することになったのでいかがですか?」と連絡がありました。またも二つ返事でお願いし、まゆみは2年4ヶ月ぶりに音楽を使った発達支援を再開しました。
ぴあちぇ~れが楽しい場所だと覚えていたまゆみは、入るなり大興奮!……復帰第1回目はひたすら跳ね回っているうちに終わってしまいました……。

それから数ヶ月通い続けていますが、楽しすぎて動き回ってしまうことが多く、なかなか身を入れて参加とはいかない日が続いています。

けれど、音楽が好きという気持ちはまゆみの中で育っているようで、家では自分からピアノに向かったり、クリスマスプレゼントにハープを欲しがるような女の子に成長しました。コミュニケーションは相変わらず独特で何かを教えることは難しいのですが、いつの間にか一人で覚えた『きらきら星』や『ハッピーバースデー』を演奏してくれます。これも、楽しく楽器に向かう気持ちを音楽を使った発達支援が種まきしてくれたからかもしれません。

まゆみが音を楽しむ様子を、これからもじっくり見守りたいと思います。
楽しく楽器に向かう気持ちを音楽を使った発達支援が種まきしてくれました
楽しく楽器に向かう気持ちを音楽を使った発達支援が種まきしてくれました
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執筆/にれ

(監修:室伏先生より)
にれさん、音楽を使った発達支援の内容や、まゆみちゃんがそれらを楽しむご様子について詳しく共有くださり、ありがとうございました。ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんは、周りの方との関わりに興味が向きにくい傾向にありますが、音楽を使った発達支援には、音楽を使った関わり遊びやふれあい遊びを通して、ご家族や支援者との関係性の改善や、コミュニケーションスキルの向上によい影響があることが分かってきています。そのほかにも、聴覚過敏のお子さんがさまざまな楽器の音に楽しく慣れることができたり(感覚過敏のお子さんにとってさまざまな刺激を受け取ることを楽しめるというのは貴重な機会です)、音楽に合わせて体を動かすことで運動能力の向上なども期待できます。

これらは、お子さんがこの活動を楽しめる場合に得られる効果です。好きなもの、好きな遊びはお子さんによって異なりますので、その子の趣向に合わせた療育や活動の場を選ぶことができるといいですね。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030065

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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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