現場を目撃

そんなある日、用事の帰りに偶然放課後等デイサービスの近くを通りかかったので、そのまま迎えに行って一緒に帰ることにしました。最近の様子から、放課後等デイサービスでどんな風に過ごしているのか見たいという気持ちもありました。

玄関の前に立つと、玄関の隣の窓から悲鳴のような声が聞こえました。慌てて窓から中を覗くと、そこには箒を振り回すその子と、止めようとする先生、泣いて逃げ惑う子たちでパニック状態でした。 慌ててチャイムを押すと、スバルと先生が飛んできました。

そしてスバルは「今日もいつも通り、何もなかったよ」と言いました。
「今日もいつも通り、何もなかったよ」という息子。本当に……!?
「今日もいつも通り、何もなかったよ」という息子。本当に……!?
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スバルは直接自分が叩かれることがなければ、ハードな現場に居合わせても「何もなかった」と表現することが分かりました。
もしくは先生が「何もなかった」と説明しているのを聞いて、スバルもこの出来事を「何もなかった」に分類したのかもしれません。
しかし本当はストレスを感じていてチックなど体調に表れたのだと思います。

スバルは「何もない」と言いますが、体調に表れるほどにストレスを感じていることに不安に感じ、この放課後等デイサービスは辞めることにしました。

知るべきは事実

私はこの一件を本当に反省し、学校や放課後等デイサービスから帰って来たスバルへの声掛けを「今日楽しかった?」「どうだった?」という曖昧な質問で終わらせないように心がけるようになりました。

スバルが拙い言い回しで伝えてくる今日の出来事の中のちょっとした不穏なワードを見逃さず、本人の「何もなかった」と言う感想を鵜呑みにしないように注意して聞くようにしました。そうは言っても尋問のようになると本人が話してくれなくなるので、あくまで楽しい会話のキャッチボールの中で自然に聞くような形です。

そして気になることがあれば「こんな些細なことで……」と躊躇せず早めに先生に相談するようになりました。
他人からの悪意や暴力に気づきにくいスバルのフィルターを経由し、ほのぼのとしたエピソードとして語られた出来事の中には重大な事件が隠されていたこともありましたし、幼稚園の頃より人間関係が複雑になっている分、注意深く見守らなければいけないと感じました。

現在は目立ったチックや常同行動もなく、学校も放課後等デイサービスも楽しく通っているように感じるのでスバルの成長とともに少しずつ見守り体制はゆるくなってきています。しかし心配性の母は、今日も不穏なワードに目の奥をギラつかせながら、にこやかに学校や放課後等デイサービスでの出来事を聞き出しているのでした。
執筆/星あかり

(監修:新美先生より)
見学に行って信頼できそうだと思ったスタッフがいるから選んだ放課後等デイサービスで、入ってみたら、そのスタッフたちがごっそりいなくなってしまったとは、想定外なことでしたね。

学校や放課後等デイサービスなどでの様子をお子さん本人に聞いても、さっぱり要領を得ないというのは、よくあることですね。そもそも、空気が読めなかったり状況把握が上手じゃなかったりして、何が起きているかを分かっていないということもあるかもしれないですし、伝えるべきことがどういうことか分からないとか、どのように伝えたらいいか分からないというようなコミュニケーションの難しさがあることもあります。

「楽しかった」「何もなかったよ」と答えるのがパターンになっていて、それ以上の答え方のバリエーションが増えないというようなこともよくあります。今回のエピソードではないですが、お友だちや先生に口止めされたのを真に受けて律儀に相手側に不都合なことを言わないということもまれにあります。その場に聞き手がいなかった状況を聞き取るときに、その場にいた登場人物を棒人間で書いて、その人が言ったこと、やったこと、その時どう思ったか、などを聞き取りながら図解して確認するような方法(コミック会話🄬)をとることで、聞き取りがしやすかったり、「何があったの?」とオープンクエスチョンで聞くよりは、選択肢を選んでもらうなどのやり方で聞き取ると、少しは状況が見えてくることもあります。

ただ毎回のようにやると、それこそ尋問のようになってしまって、めんどくさがられますよね。
星さんもおっしゃっていたように、なにより帰宅後のご本人の様子で、そこに行かない日と比べて、イライラしていたり、何らかの症状が強まったり、こだわりが強くなっていたりと、お子さんの変化を見ることで判断するというのは大事だと思いました。

なかなかお子さんから「これが大変」ということは発信してもらいにくい場合、気になる時は、実際に見に行ってみたり、スタッフの方としっかりお話ししたりして状況改善を図ったり、無理なら撤退するというのは必要な対応だと思いました。お話聞かせていただきありがとうございました。
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https://h-navi.jp/column/article/35030228
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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