パニック、自傷のほうがずっとつらい…自閉症息子のこだわりに応じ続けた日々。24歳の今は

ライター:立石美津子
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現在24歳のASD(自閉スペクトラム症)の息子、思い返せば幼い頃からたくさんのこだわりがありました。そのこだわりが通じないと、パニックを起こし自傷するので、私はこだわりに応じていました。
親がこだわりにずっと応じているのもしんどいのですが、なぜ応じていたのか……。それは、応じないことによる癇癪、パニックのほうが私にはずっとずっとつらかったからです。

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監修: 鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
1959年東京都生まれ。1985年秋田大学医学部卒。在学中YMCAキャンプリーダーで初めて自閉症児に出会う。同年東京医科歯科大学小児科入局。 1987〜88年、瀬川小児神経学クリニックで自閉症と神経学を学び、栃木県県南健康福祉センターの発達相談で数々の発達障がい児と出会う。2011年、茨城県つくば市に筑波こどものこころクリニック開院。

自閉症息子のこだわりについて主治医から言われていたこと

ASD(自閉スペクトラム症)の息子のこだわりにずっと応じるのはしんどい面もありました。ですが、応じないことによる癇癪、パニックのほうがずっとずっとつらいものです。

医師からはこんな風に言われていました。
「パニックを起こす理由が立石君にはあるのです。『こうしてほしい』というこだわりには応じ、小さいうちに安心できる生活環境をお母さんが与えてください。パニック起こして一番しんどいのは本人なんですから」
「もし、お母さんが人の履いたスリッパがどうしても履けなかったとしましょう。『履け』と命令されたらどうですか?それを履いて落ち着いていられますか?こだわりは自分だけのスリッパと同じなんです」
「人が食べたガムを食べることができますか?子どもにとって偏食は、芋虫や他人が食べたガムを食べろと言われているようなものなのです」
「喘息発作も起こせば起こすほど、それを誘発させます。普段から吸入して発作を起こさない予防をすることが肝心です。ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんのパニックもそれと似ています。起こさないように周りが配慮してやることです」
「お母さんからすれば『なんでこんなことにこだわるんだ』と思うことも、本人にとってはとても耐えがたい嫌なことなのですから、こだわりには応じてあげてください」

かつてあったたくさんのこだわり。今はこだわりが崩れてもパニックを起こさなくなった面も

息子にはたくさんのこだわりがありました。

・同じ道順しか歩かない
・井の頭線に乗るときは3000系の各駅停車しか乗らない
・電車で同じ席にしか座れない。誰かが座っていると、「替わってほしい」と暴れる
・タクシーを使う場合は特定のタクシー会社にしか乗れない。
・同じ靴しか履かない
・スーパーの納豆がきちんと並んでいないと許せない
・5種類の食べものしか食べない
・夜のニュース番組の「こんばんは、〇〇ニュースです」のアナウンサーの第一声「こ」と同時に夕飯の一口目を口に入れないとダメ
・消火器のメーカーを確認する
・非常口のマークを探して回る
・マンション内で「あなたは何号室に住んでますか?」と聞きまくる(管理会社に不審者と通報されました)
・私が話す言葉に「ね」という音を入れてはならない(これは困りました。私は喋ることができなくなりました)

現在は
・水曜日は生魚を食べる
・日曜日に家でバリカンで頭を刈る
・週末は一人で趣味である(商業施設などの)トイレ巡りをする

挙げたらきりがないくらい諸々ありますが、今はこれらが崩されても、例えば水曜日に生魚を出さなくても、バリカンで頭を刈る時間がなくなっても、パニックは起こさなくなりました。
「今日は刺身はないよ」「今日はバリカンをする時間はないよ」「今度の日曜日は法事だよ、だからトイレ巡りの外出はできないよ」と伝えれば納得します。

本人もこだわりの緩め方を人生で学んできたせいでしょうか。

こだわりボックス

ASD(自閉スペクトラム症)のある子どもは「こだわりボックス」を持っているように思います。
こだわりボックスが満タンでないと不安になるので、こだわりを取り上げられてしまうと、空いた部分を満タンにするために別のこだわりを作る、そんな風に感じます。無理矢理取りあげることもなく自然とこだわりがおさまったのだとしても、また新たなこだわりが出現するので余計そう感じます。

つまりこだわりボックスを満タンにすべく新たなこだわりが出てくるので、こだわりを辞めさせてもいたちごっこ、あきらめたほうがいい場合もあると私は思っています。人に大迷惑をかけないこだわりだったら許容してもよいのではないでしょうか。
次ページ「 「世の中には自分のこだわりが通じないこともあるんだ」と学んでいくために 」

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