小学生になり友だちトラブル激増!周りに合わせる?自分の気持ちを貫く?試行錯誤の結果は…

ライター:丸山さとこ
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現在中学生の息子のコウは保育園年長まであまり話さず、小学校に入ってからもテンポよく受け答えをすることは苦手でした。今回は、そんな彼のこれまでの「友だちつきあい」を振り返りました。

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監修: 室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
筑波大学医学部卒。国立成育医療研究センターで小児科研修終了後、東京女子医科大学八千代医療センター、国立成育医療研究センター、島田療育センターはちおうじで小児神経診療、発達障害診療の研鑽を積む。 現在は、名古屋市立大学大学院で小児神経分野の研究を行っている。

マイペースなコウの「友だちつきあい」のこれまで

現在中学生の息子のコウは驚くほどおしゃべりですが、保育園年長まではあまり話しませんでした。そのため、保育園ではどう過ごしているのか気になることもありました。
現在中学生の息子のコウは驚くほどおしゃべりですが、保育園年長まではあまり話しませんでした。
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コウも幼いけれど、周りも幼い保育園時代

現在では驚くほどおしゃべりな息子のコウですが、保育園では年長になるまであまり話しませんでした。その上、指示や集団の行動に合わせて動くことが苦手だったため、「保育園ではどう過ごしているのかな?」と気になることもありました。

ところが、保育園では周囲の子どもも幼いためか、意外にも『何となくその辺りにいる』ことにより大きな問題はなく園生活を過ごしていたようです。運動会など行事の際も1人だけ輪や列を外れてフラフラ歩いていることがありましたが、先生や園児に誘導されて、これまた大きな問題になってはいないようでした。

保育園では気の合う子どもも現れて一安心……と思ったら?

無口だったコウも5歳頃から少しずつ話すようになり、6歳になる頃には気の合う子どもも現れたようで、園に迎えに行くと「修行だー!」と言いながら友人と園庭でタイヤを押したり図鑑を読んだりしている姿を見かけるようになりました。
年長になる頃には、気の合う子どもと遊ぶこともあったコウ。園庭で「修行だー!!」と言いながらタイヤを押したり、一緒に図鑑を読んで笑ったりしていました。
年長になる頃には、気の合う子どもと遊ぶこともあったコウ。
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「何だかんだ気の合う子どもと楽しく過ごしているようでよかったな」と思っていたのですが、コウが小学校に入ってからは友人関係のトラブルが目立つようになってきました。

保育園のようにはいかなかった小学校時代

同じ6歳でも全然違う?小学1年生で周囲から浮き始めたコウ

小学校入学後、子どもたちが遊んでいる時の様子が保育園の頃とは変わってきたのを感じるようになりました。園児の頃は、たまたまその時に同じ遊びをしたくなった子どもたちが『何となく一緒に遊んでいるような雰囲気』で過ごしていることが多くありました。場合によっては「(遊びに)いれて」「いいよ」のやりとりすらなく、友人の輪は流動的でした。

ですが、小学生になってからは『声かけをして遊ぶための集団を作る』ことや、『同じ遊びをしていた集団がそのまま次の遊びに移行する』ことが増えてきました。
一緒に遊んでいたクラスメイト達が移動するのについていかないコウ。「丸山ー、あっちに行くよー!」と声をかけられても「僕これやってる!」と振り向きもせず返していました。
一緒に遊んでいたクラスメイト達が移動するのについていかないコウ。
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クラスメイトから「校庭で遊ぼう!」と誘われても、コウは今したいことがあれば断ります。「今は本読むから」などと断るのであれば良いほうで、場合によっては声をかけられたことにも気づかず無視をしてしまいます。

そんなコウであっても、1年生の半ばまでは何となく遊びの集団に入れてもらうこともありましたが、2年生になる頃には明確に『友だちと行動を共にすること』や『ルールを擦り合わせて共有すること』が必要になってきました。

トラブルを通して試行錯誤していきました

そうして遊びのスタイルや集団のあり方が変わっていく中で浮き始めたコウは、小学校高学年にかけてたくさんのトラブルを起こしました。小学生のコウは、悩んだことや困ったことをときどき親に話してくれたので、コウと一緒に振り返ったり考えたりする時間を持つようにしていました。

例えば、先に書いた『友だちと行動を共にすること』についてコウが戸惑ったり困ったりした時は、以下のような会話をよくしていました。

私 :コウとしては、自分がやりたいことをしたいよね。順番とかのルールは守っているしね。あとは自由にしたいよって思うかな?
コウ:思う。なのに自分勝手って言われることある。
私 :そうか。それは困ったね。コウの都合に対して、その友だちにはどんな都合があるのかな?
コウ:その友だちの都合?
私 :お母さん考えてみたんだけど、遊んでいた友だちが移動する時にコウがついていかないのであれば、その子はまた新しく遊ぶ相手を確保しなくちゃいけなくなるんじゃないかな。
コウ:それはそうだね。
私 :そんなことが何回もあったら、その子は次からどうするかな?
コウ:うーん……『最初から違う子に声をかけたらずっと遊べる』ってなるか……。

おやつを食べながら、学校であった出来事を話すコウと私。
おやつを食べながら、学校であった出来事を話すコウと私。
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このように状況を推測して共有したあとは、コウに「どうしたい?」と聞くようにしていました。コウが「それなら僕も1人で遊んでいたほうが自分のペースで遊べていいな」と思うのであれば、それに対するメリットとデメリットを並べて一緒に考えます。

・友だちの繋がりを持っておかないとサッカーやキャッチボールなどの1人ではできない遊びの時に困るかもしれません。自分にとって都合の良い時だけ仲良くしよう!とはいかないからです。

・一方、あまりに無理をして友だちのペースに合わせていると、「ちっとも楽しくないし疲れる!」となってしまうかもしれません。

・ノリが合って楽しいけれどヒートアップしやすい友だちとは、トラブルも起きやすくなります。そのため、「自分の今のコンディションはどうかな?」「自分たちは楽しいけれど、周りはどうかな?」と広く考える必要が出てきます。


そうしてクラスメイトとの関わりを体験し考えていく中で、コウは「ここはもう少し周りに合わせたほうが良さそうだな」とか「これは譲りたくないな。どう言ったらいいのかな?」というように、少しずつ試行錯誤していくようになったそうです。

成長にともない解決する悩みもあれば、新たに増えた悩みもあります

もちろん、現実はそこまでシンプルではありません。特に中学年以降になると、“相手も本当は嫌だけど我慢をしている”とか“力関係でNOを言いにくい状況である”などの複雑な場面も増えてきました。

それでも、高学年になり周囲の子どもたちも成長して落ち着いていくことで、揉めている時のコウとは距離を置いたり言い合いを避けたりするようになりました。その結果、コウも周囲からの刺激にパニックになることなく冷静に自分を振り返ることが増えてきたようです。
じゃれ合っているクラスメイトの姿をの姿を見て「あれ?もしかして…僕の感情表現は激し過ぎるのかな?」と気づくコウ。
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小学校高学年に入り、ふと周りを見た時に、『あれ?僕だったら怒るような関わりでも、みんな怒ってないな?』『怒ってる時や嫌な時の僕の表現は、みんなよりも激し過ぎる?』と気づいた時があったのだとコウは言います。その甲斐あってか、6年生の担任の先生との面談では「彼はすごく成長しましたね!周りとのトラブルも減りました」とホッとするお話をうかがいました。

これで「コウも成長しました!めでたしめでたし~‼」……となるわけではなく、

・趣味のプログラミングや音楽で友だちができたけれど、休み時間や部活中も学校貸与のタブレットを手放せなくなり大問題に発展
・趣味の合う女友だち数人と過ごすことが増えて『男子のノリが荒っぽくて苦手』と言うようになる
・女友だちと2人で出かけて「デート?」「彼女じゃん」と言われる


などなど、大小さまざまなトラブルや悩みは相変わらず続いています。成長や変化があればあったで、そこにはまた違った形のトラブルや悩みがあるのだなと思います。

トラブルや悩みは少ないほうが私としては安心ですが、「トラブルや悩みが変わっていくのは成長も含めた変化があるからなのだろう」と心の端にとどめて、コウのこれからを見守っていきたいなと思います。
「夕方に学校からかかってくる電話」に怯える母です。
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執筆/丸山さとこ

(監修:室伏先生より)
保育園から中学生までのお友だち付き合いについて、詳しくお話しいただきありがとうございました。コウくんとさとこさんが一緒に、友だち関係の悩みやトラブルを振り返り、考える時間を持てたことはとても素敵ですね。

神経発達症のお子さんの中には、他者の複雑な感情を想像したり、微妙な表情の変化を感じ取ることが難しい子もいます。そのため、思いやりの気持ちや優しい気持ちを持っていても、相手の気持ちがうまく理解できず、トラブルになることもあります。こうした場合、相手の気持ちを代弁したり、状況を整理して「もし自分だったらどう感じるかな?」と考えてもらうことは有効な手段です。説明や指示を与えるのではなく、ヒントを伝えてコウくんに自分で考えてもらい、コウくんの気持ちや意見を尊重するという関わりがとても素敵だなと感じました。
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
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