小学校と中学校、合理的配慮はどう違う?先生との面談のコツや持ち物、友達トラブル対処法も【連載ライターさんに聞いてみた!】

ライター:丸山さとこ
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発達ナビみんなのアンケート「連載ライターのみなさんに聞いてみたいこと大募集!」へ質問をお寄せいただきありがとうございました。今回は、その中から「小学校・中学校の先生に理解を得るコツ」をピックアップ。丸山さとこさんとコウさんの実体験を綴っていただきました。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

「学校の理解を得るために」小学生編

息子と合理的配慮について、小学校入学後に担任の先生と個別の面談を行った。
息子と合理的配慮について、小学校入学後に担任の先生と個別の面談を行った。
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現在中学生の息子コウは神経発達症があります。そのため、小学校から中学校にかけて、スクールカウンセリングを利用したり担任の先生に支援をお願いしたりすることがありました。今回は、これまでに受けた支援や個別面談について振り返りました。

小学校就学前の息子コウは、主にASD(自閉スペクトラム症)の特性が目立っていました。集団に対する指示が分からない、指示の意図を読み取りにくい、共同注意ができない……などの理由により、集団行動が難しい状態でした。そのため、入学後は個別の声かけや視覚支援(次の予定を壁や黒板に掲示するなど)を行っていただいていました。

コウと合理的配慮について話し合う場として、小学校入学後に通常学級の担任の先生と個別の面談を行う機会をいただきました。それに際し、資料として療育園から頂いた個別支援計画書をもとに『特性・考えられる困りごと・園や家庭でのフォロー』についてA4の紙にまとめたものを持っていきました。

また、2歳ごろからの成長記録や支援方法について書かれたサポートブックも持参しました。サポートブックには、私が書いた成長や対応の記録のほか、保健センターや療育園での面談の記録などもファイリングしてあったため、面談の際の資料としてとても役に立ちました。
サポートブックがあることで「コウに対する客観的な視点の評価」が伝えやすかった。
サポートブックがあることで「コウに対する客観的な視点の評価」が伝えやすかった。
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小学校入学後すぐに担任の先生と面談をする機会をいただいたこと、スクールカウンセリングの利用を始めたことはよかったと思います。学校との連携をとりやすくなりました。

毎月1回利用していたスクールカウンセリングでは、特に目立ったトラブルはないときも現状の報告や相談を行うようにしていました。トラブルが起きるとしばらくはその対応に追われるため、日常で気になることが相談できないからです。

ただ、スクールカウンセラーの先生により方針や考えはさまざまなため、対応をお願いしても難しい場合はあると思います。その場合は、医師やソーシャルワーカーなど学校外のアドバイスを参考にしたり、仲介をお願いしたりすることもありました。
担任の先生に支援のお願いをするも、「もう〇年生なので、自己管理をしていく段階です。自主自立です」とキッパリ言われてショックを受ける私。
担任の先生に支援のお願いをするも、「もう〇年生なので、自己管理をしていく段階です。自主自立です」とキッパリ言われることもあった。
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また、小学校で過ごす6年を通じて主に受けていた合理的配慮は、『集団への声かけでは指示が通らないときの個別の声かけ』でした。

そのほかの支援に関しては、学年によってさまざまな状態でした。クラス全体へ支援する形で『宿題と持ち物の一覧表』を毎週いただいていた学年もあれば、「もう〇年生なので、自己管理をしていく段階です」として、机の中を確認するよう声かけをしていく形で過ぎていった学年もありました。

手厚い支援を受けられた年度の方がコウは安定する傾向があり、翌年の支援が薄いとコウの崩れ方が大きいこともありましたが、その差も含めて『どのような支援が有効なのか』という実績なので、記録をとっておくことが大切であると感じました。

「学校の理解を得るために」中学生編

中学校入学時は、卒業した小学校の先生からのすすめもあり通常学級の担任の先生と面談を行いました。面談にあたり、診断書とWISCの検査報告書をコピーして持っていきました。検査報告書には『全体的な知的発達水準・指標得点の特徴・支援方法』などの項目が分かりやすくまとめられていたため、大変助かりました。
中学校入学後の個別面談にて担任の先生の前向きな反応を見て、面談の機会を頂いてよかったとホッとする私。
中学校入学後の個別面談にて担任の先生の前向きな反応を見て、面談の機会を頂いてよかったとホッとした。
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一般的には中学校のほうが厳しくなるとされており、小学校の先生方もそれを前提として指導されていました。そのため、「中学校の活動についていけるだろうか、人間関係のトラブルは起きないだろうか」と不安でしたが、コウは意外にもスムーズに中学生活に馴染んでいきました。コウも周囲の児童も年齢が上がってきたことで、小学生の頃より他人と距離を取ることが上手になっていったようです。

授業参観などでコウの様子を見ていると、周囲を見ていないために自分本位な振る舞いをしているときがあります。「これでよくトラブルにならないな!」とハラハラしますが、月に1回利用しているスクールカウンセリングにて都度相談できるため、ある程度は焦らずに見守ることができています。
スクールカウンセリングにて日常のささいな疑問点を相談している私。アドバイスを受けて納得している。
スクールカウンセリングにて日常のささいな疑問点を相談し、さまざまなアドバイスを受けている。
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また、小学校と中学校で、学校の先生の理解や配慮に大きな違いはないと感じています。中学でも先生からの声かけなどのサポートはしていただいています。

強いて言えば、中学校より小学校のほうが指導が厳しく徹底していた印象はあります。早期によい習慣を身につけることや、中学に向けて自己管理能力を育てていくことなど、小学校だからこその『タイムリミットのある教育環境の厳しさや難しさ』があったのかもしれません。

一方、中学校は進路選択などの大きな節目が最終学年にはあるものの、『自己管理も含めて自己責任』というムードが強いなと思います。
スクールカウンセリングにて日常のささいな疑問点を相談している私。アドバイスを受けて納得している。
小学校と中学校では、こまめな声かけは同じでも方針に違いを感じることは多かった。
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10代の半ばに差し掛かっていく頃ということもあり、徹底して生徒を指導するよりも、成長を信じて見守る部分があると感じます。その分、中学校の通常学級では細やかな配慮は求めにくいところもあるかもしれません(地域や学年によって違いはあると思います)。

宿題に関しても、小学校のように先生から徹底して確認することはない代わりに『ただ本人の成績が下がるだけ』というシビアさがあるのが中学校らしさであると感じています。

とはいえ、自己責任として放置されているわけではなく、「宿題はきちんと出しなさい」「前よりは出そうとしているのは分かる。でも、まだ十分ではないからもっと頑張ろうな」と普段の学校生活の中でフィードバックをしていただいています。そのことはコウの記憶にもしっかり残っており、励みになっているそうです。
執筆/丸山さとこ
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読者の皆さんからの質問をもとにお聞きしました

それでは、発達ナビみんなのアンケート「連載ライターのみなさんに聞いてみたいこと大募集!」にお寄せいただいた質問をもとに、丸山さとこさんの体験を教えていただきました。

※お寄せいただいた質問については、一部編集部にて編集しています
ーー発達の特性などについて理解をしてもらいにくい先生には、どのようなコミュニケーションを取っていましたか?

丸山さとこさん:先生にご理解いただくのが難しいときは、医師から診断書の形で所見を書いていただいたり、スクールカウンセラーの先生からもお伝えしていただいたりしていました。また、話し合う際には、お互いに見えている景色が違うことを念頭に置いた上で、できるだけ対立した立場にならないように心がけてコミュニケーションを取りました。
それでも、どうしてもご理解いただけない場合は「今学年は仕方がない」と割り切って、別室登校も視野に入れつつ家庭でのサポートに努めるようにしていました。

ーー公立中学校での合理的配慮はどんなことが行われていますか?

丸山さとこさん:公立中での合理的配慮としては、席を前の方にしていただいたり、個別に声をかけていただいたりしています。持ち物の置き忘れや、机の中の整理整頓などの『確認を促す声かけ』を特にお願いしています。
また、スクールカウンセラーの先生から他校での具体的な合理的配慮の事例を教えていただき、前例として担任の先生にお伝えしつつ「必要になった際は改めてご相談させてください」とお願いしています。

ーー相性がよくないと感じる同級生との関係をどうしていますか?

丸山さとこさん:小学校の頃は、段階に分けて対応していました。まずは、息子本人が距離を持つように気をつける。それでもトラブルが続いていたら担任の先生に介入していただくようにしていました。難しい場合もありましたが、中学生になってからはトラブルになる前にお互いに距離を取っているようです。

(監修:初川先生より)
コウくんの小学校中学校での理解を求めるコツのシェアをありがとうございます。具体的で参考になる事柄がいっぱいありましたね。

小学校入学後の面談から始まっていましたが、入学前に相談に行くこともできます。新入生保護者会でそうしたアナウンスがある場合(心配なことがある方はご連絡くださいなど)もありますのでよく説明を聞いていただければと思いますし、ない場合は終了後に先生方に声がけして聞いてみる(別日に面談できるか聞いてみる)のもいいと思います。また、サポートブックに関しては、保護者が独自につくるのも素晴らしいですが、自治体によってはそうしたフォーマットを用意しているところもあります。就学相談の担当部署、あるいは園の先生に聞いてみるとよいでしょう。面談の際にはそうしたお子さんの得意不得意やあると助かる配慮・手立てについてまとめられたものがあると、言い忘れてしまうことなどもなく心強いでしょう。
入学後の生活の中で、お子さん本人が育つことでできるようになる面、先生方の手立てによってできていること、なかなかうまくいかないことなど出てくると思いますので、それを「記録に取っておく」ことはその後の支援を検討するうえで大切だと思います。

スクールカウンセラーとの相談や、あるいは通級を利用している場合は通級の先生との面談など、さまざまな方の視点で成長を見守ってもらえることはとてもよいと思います。担任の先生は主に集団の中でのお子さんをよく見てくださり、スクールカウンセラーは心理の立場から保護者からの話を聞き、場合によってはお子さんの実際の様子を見てそれが今どんな状態であるかを解説したり、その後の手立てについての助言をしたりすることと思います。

小学校と中学校の違いは、先生方のスタンスが違うというよりも、求める子どもの像が中学校のほうが高いものを求めてゆく(義務教育の完成を目指している)というところが大きいと思います。中学校の先生方のほうが厳しく感じられるかもしれませんが、ある意味分かりやすくはあります。生徒にも評価基準を伝えてあり、何が良くて何がよくないかが分かりやすい環境です。そして小学校時代よりも子どもたちも成長しています。大人が子どもに対して細やかに配慮するというよりも、子ども自身が自分の得意不得意を理解しながら必要なことは自ら申し出られること、困ったら自分で先生方に伝えられることを目指してゆく時期になります。そのあたりで保護者の方が戸惑われることもありますが、保護者の方にとっては、徐々に手を放していく練習だと思っていただくとよいかと思います。そうしたところでの保護者としての不安やその準備段階におけるいろいろ(本人がなかなか言い出せないものを学校に知らせて大人の間で共通理解を持つなど)をスクールカウンセラーとの間などで扱っていけるとよいでしょう。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35029897
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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