自閉症息子、入学直前に小学校から電話!ドキリとした母に提案されたのはーーうれしかった特別支援学級の先生の思い【スクールカウンセラーのアドバイスも】

ライター:まゆん
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4歳のころに自閉スペクトラム症の診断を受けている太郎。小学校の入学式は、私はワクワクよりドキドキのほうが大きかった。

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監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。

自閉症・情緒障害特別支援学級を選んで

太郎は、4歳のころに自閉スペクトラム症の診断を受けている。

小学校入学を目前に、私は不安がたくさんあった。太郎が今までと違う環境にどのような反応を示すのか、担任の先生はどういう対応をされる方なのか。太郎が通うことになる自閉症・情緒障害特別支援学級は、ちょうど太郎が入学する年に発足とするとのこと。学校側の自閉スペクトラム症への理解はどこまであるのだろうか。

小学校へ入学する前に太郎の特性などプロフィールに記載し提出はしたけれど、ドキドキと不安に不安が重なっていた。
自閉スペクトラム症のある太郎の、小学校入学を前にドキドキする母
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あんまり不安がっても仕方がない、なるようになるさという気持ちで行こうと思っても私の不安はふくらんでいった。

小学校から突然の電話

ある日、小学校の特別支援学級の先生から電話がかかってきた。
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記憶は定かではないが、3月の終わりか4月の初めに学校から電話が入った。4月から自閉症・情緒障害特別支援学級の担任を務めるという先生からの電話だった。

先生はまず自己紹介をされた。特別支援学級で教えるための勉強をして資格を取り、今年から発足する情緒級の担任になったということだった。通常学級での指導経験も長いようで、先生の自己紹介と説明からは児童を思う明るさと優しさ、真剣さを感じた。

そして最後に提案をされた。
「ご都合が大丈夫で、ご家庭でもお気持ちがあれば、入学式の練習をしに来られませんか?」

先生の提案は心に刺さった。強要でもなく、提案であり私たちのことを考えていることが分かったからだ。先生も太郎をひと目みたいという気持ちもあったのかもしれないが、この提案が不安な気持ちであふれていた私の心にはズバっと刺さった。
特別支援学級の先生の「ご都合が大丈夫で、ご家庭でもお気持ちがあれば、入学式の練習をしに来られませんか?」という言葉が、心に刺さった。
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返事はもちろん、「ぜひともよろしくお願いします!」だった。太郎はなんのことか理解していなかったが拒否なく「行く」と答えた。

提案された練習日は、入学式の前日。体育館で待ち合わせだった。

体育館はすでに会場設営されており入学式の雰囲気が漂っていた。保護者や在校生がいない代わりに学校の先生が数人いた。すでに先生たちの心遣いに目頭が熱くなる私がいた。

そして担任の先生が笑顔で私たちの前に現れた。

「こんにちは」長い黒髪の先生だった。
私「こんにちは」
太郎「こんにちは」

ここからが先生と太郎の数年間の始まりとなった。
入学式の練習に行くと、特別支援学級の先生が「こんにちは」と迎えてくれた。
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太郎は緊張しながら先生のゆっくりとした説明や仕草を見ていた。説明後入学式の練習へと移った。私と数人の先生は体育館で待機し、担任の先生と太郎は体育館の外へ出た。

そして「新入生入場」のアナウンス後に、入場曲が流れた。担任の先生を先頭に太郎も入場してきた。緊張してる様子で右肩が上がっていたが、落ち着いて先生の後ろをついて行き自分の席へ着席することができた。
「新入生入場」アナウンス後に入場曲が流れ、担任の先生を先頭に太郎も入場してきた。緊張してる様子で右肩が上がっていたが、落ち着いて先生の後ろをついて行き自分の席へ着席することができた。
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先生はその姿をみてうなずき、練習は終わった。

練習後、私だけではなく3人とも安心した顔になっていたことが記憶に残っている。

あとがき

太郎は本番の入学式でも緊張してはいたものの、固まることや動き回ることもなく先生の後ろを右肩上げて練習通りに歩くことができていました。

前日の入学式の練習は、私と太郎に大きな安心と自信を与えてくれました。また、先生と前日にコミュニケーションをとれたため、太郎の特性や太郎の雰囲気を分かってもらう良い場になったと思ってます。

入学後も、催しがある前などに先生と電話でこまめに連絡を取ることがありました。1年生のころは週に一回は電話で情緒の共有や方向性を考えていた記憶があります。教育者、保護者、本人が考える方向性を共有することが教育の場面で重要になるのだな、とも感じた時期でした。
執筆/まゆん
(監修:初川先生より)
入学式、そしてそこから始まる小学校生活は期待とともに不安も高まるかもしれないですね。今回、まゆんさんのお子さんは自閉症・情緒障害特別支援学級に入学するということで、担当される先生から入学式前日に練習することをご提案されたのですね。お子さん本人も、保護者の方も、そして先生方にとっても、練習して見通しを立てたり、お子さん・先生がどんな方かお互いに知っておけたりすることで、安心して本番に臨むことができますね。新奇が苦手なお子さんにとってはとてもよい機会になると思います。

さて、これは特別支援学級に限ったことではないとも思います。通常学級に入学される方でも同様の手立てを取っていただくことは案外多いように思います。新入生保護者会前後から春休み期間で、例えば就学支援シート(お子さんにとってどんな支援があるといいか、在籍園や保護者の方、療育機関などで記入したもの)を提出するなど、学校と事前に面談に行く場合は、「新しい場面が苦手」であることを伝えると、練習しましょうかという話が出てくることはあると思います。また、保護者の方から、お子さんの特性を説明して、「可能なら、入学式の会場ができあがったあとで、子どもと体育館を見せていただけないか」と聞いてみると、承諾してもらえることもあるように思います。担任の先生を事前に伝える(事前に会う)ことは難しいことも多いかと思いますが、会場を見ること、当日使用するトイレを下見すること、1年生の教室のフロアをさらっと見せていただくことなどはできることがあると思います(※最終的には学校の判断なのでできない場合もあるかもしれませんが…)。

先生方も、お子さんや保護者の方にとって小学校の入学式が一生に一度しかない特別なものであることはよく分かっていらっしゃり、入学式がよき一日となり、そこから始まる新生活へ弾みをつけてほしいと願っているように思います。ご心配な方は4月の頭までの間で、小学校に面談や相談をしてみてもいいかもしれません(ただし、繰り返しますが、できるかどうかは小学校の判断になります。さまざまな事情で受け入れが困難な場合もあるので、それも含みおいてお問合せをしてみていただければと思います)。
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コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如・多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。
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