誰もが楽しめる演劇、劇場を目指して!舞台『フクローじいさんとベル子ちゃん』に込めた思いと国際障害者交流センター・ビックアイの取り組みを取材

ライター:発達ナビ編集部
誰もが楽しめる演劇、劇場を目指して!舞台『フクローじいさんとベル子ちゃん』に込めた思いと国際障害者交流センター・ビックアイの取り組みを取材のタイトル画像

今回は、2025年2月16日に行われた舞台『フクローじいさんとベル子ちゃん』大阪公演をレポート!本作の脚本・演出を担当した目次立樹さん、国際障害者交流センタービッグ・アイ事業プロデューサー兼副館長の鈴木京子さんにインタビューし、舞台制作への思いや、劇場アクセシビリティ向上のための工夫などを伺いました。(撮影:成田直茂、取材/発達ナビ編集部)

言葉に頼らないから、だれでも楽しめる!舞台「フクローじいさんとベル子ちゃん」

舞台『フクローじいさんとベル子ちゃん』大阪公演
舞台『フクローじいさんとベル子ちゃん』大阪公演
Upload By 発達ナビ編集部
2025年2月16日(日)、高槻城公園芸術文化劇場にて、舞台『フクローじいさんとベル子ちゃん』大阪公演が行われました。2022年東京公演、2023年久留米公演に続く、第3回目の公演となる今回は、申込開始から2週間足らずで車いす席を除くチケットが定員に達するなど、注目度の高さがうかがえました。言葉に頼らず、動き、表情、仕草や音楽で表現される本作は、障害の有無、国籍や年齢などに関係なく、だれでも楽しめる「ノンバーバル(言葉に頼らない)」な演劇作品です。

劇場で舞台を楽しんでいたのは、0歳の赤ちゃんからお年を召した方まで、実に幅広い年齢層の方々。ベビーカーに乗ったお子さんや、車いすで鑑賞している方もいらっしゃいました。
劇場内の様子
劇場内の様子
Upload By 発達ナビ編集部
また、客席の定員は通常より少なめで、パーソナルスペースを確保しやすいほか、場内の明るさや音量の調整、イヤーマフの貸出、手話通訳・日本語字幕の提供、希望者への台本貸出、ひと休みルームの設置など、細やかな配慮がなされていました。知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、DCD(発達性協調運動症)、精神障害、視覚障害、聴覚障害、その他さまざまな障害の方からのお申込みも多かったとのことで、このような配慮が舞台鑑賞時の安心につながっていたのではないかと思います。
イヤーマフの貸し出し
イヤーマフの貸し出し
Upload By 発達ナビ編集部
ひと休みルームの設置
ひと休みルームの設置
Upload By 発達ナビ編集部
演出から公演の運営面まで、演劇の楽しさを一人でも多くの人に伝えたいという思いが随所にあふれている本作。どのようにして、このような劇場空間をつくり上げていったのでしょうか?本作の脚本・演出を担当したゴジゲンの目次立樹さん、国際障害者交流センタービッグ・アイ事業プロデューサー兼副館長の鈴木京子さんにお答えいただきました。

「劇場に来られない人にも届けたい」、そんな想いからスタートした作品

――はじめに、舞台『フクロ―じいさんとベル子ちゃん』について、上演のきっかけや想いについて教えてください。

目次立樹さん:この作品は「いろんな理由でなかなか劇場に来られない人にも届けたい」、そんな想いからスタートしました。自分の町の劇場に、自分が観ることができない作品ばかり並んでいる……それは寂しいですよね。私自身も、小さい子どもを連れて入れないという理由で観劇をあきらめることが多いです。どうにかならないものかと、ぐぐぐ~っと劇場の入り口を広げてみました。

そして生まれたのが、全世代が楽しめる、動きだけでストーリーが分かる、子どもに優しい上演時間、(お財布にも優しい!!)、本作です。心置きなく作品と、劇場という空間を楽しんでもらえたら幸いです。
――舞台『フクロ―じいさんとベル子ちゃん』上演にあたり、演出面で大切にされたこと・工夫されたことはありましたか?

目次立樹さん:情報の出し方ですね。できる限り分かりやすくしますが、全てが全て理解しやすいと、途端につまらなくなってしまいます。観る側の想像を丁寧に掻き立てつつ、その想像を安全に着地をさせる。そのプロセスを繰り返しながら、創作しています。
――今回はノンバーバル(=言葉にたよらない)な演劇作品を上演していただきました。今後は、どのような作品をつくっていきたいと考えていらっしゃいますか?

目次立樹さん:私個人が作りたい作品よりも、今の時代こんな作品が必要なのでは?という視点を大事にしたいです。舞台を観たい、舞台に立ってみたい、でも機会がない、そんな方々に寄り添えるような創作ができればと思っております。

文化芸術を通して共生社会の実現へ。国際障害者交流センタービッグ・アイの取り組みとは?

――今回の公演では、車いす席の設置、手話通訳の手配、日本語字幕の表示、イヤーマフの貸し出しなど、さまざまな鑑賞サポートが用意されています。劇場のアクセシビリティに関するお取り組みについて教えてください。

鈴木京子さん:国際障害者交流センタービッグ・アイの事業は、すべての人が安心して参加できるよう、「情報保障」を提供しています。車いす利用者向けのアクセスサポート、聴覚障害のある方への手話通訳や日本語字幕・外国語字幕の提供、視覚障害のある方への日本語音声ガイドや解説など、多角的なサポート体制を整えています。

さらに、心理的なバリアによって文化活動への参加が制限されがちな方々にも配慮しています。特に2014年から開始した劇場体験プログラム「劇場って楽しい!!」は、知的・発達障害のある子どもや大人を対象とした取り組みです。このプログラムでは、感覚過敏に対応する工夫や、分かりやすい情報提供を行い、障害特性を考慮した公演づくりを進めています。

また、この取り組みをさらに広げるため、全国の公立文化施設等と連携し、障害のある人が参加できる事業を運営するための人材育成や施設づくりを推進しています。

現在、日本において障害のある人が文化芸術に参加する機会は、物理的・情報的な障壁や心理的なバリアなど、さまざまな要因によって十分とは言えない状況です。そのため、参加したいと思っても情報が届かず、会場に行けない、または内容が理解しにくいといった課題があります。また、文化芸術に参加することで得られる人との交流や楽しみ、自己表現の機会がまだまだ少ないのが現状です。

ビッグ・アイは、こうした課題を解決し、地域に根差したインクルーシブな文化芸術の発展をめざすとともに、障害のある人たちが文化芸術を通じて社会に参加する機会を広げ、生活に豊かさや潤いをもたらすことをめざしています。また、文化芸術を通じて、障害のある人もない人も互いに尊重し合い、共に生きる社会の実現に向けた取り組みを進めています。
――最後に、ポータルサイト「LITALICO発達ナビ」は、発達障害のあるお子さんの育児をされている保護者の方や、支援者の方に多くご覧いただいています。皆さまへメッセージをお願いします。

目次立樹さん:今、世界中の劇場で、そのスピードは遅いかもしれませんが、さまざまな特性を持つお子さんにも開かれた場所を目指す動きがあると思います。文化芸術に携わる多くの人々の意識が変わりつつあります。私もその変革の一端を担えたらと思っています。
関連サービス画像
関連サービス
【ゲーム・ロボット好き集まれ!】個性を伸ばすゲーム・ロボットづくりへ無料招待!
次ページ「おわりに」

追加する

バナー画像 バナー画像

年齢別でコラムを探す


同じキーワードでコラムを探す



放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

放課後等デイサービス・児童発達支援事業所をお探しの方はこちら

コラムに対する投稿内容については、株式会社LITALICOがその内容を保証し、また特定の施設、商品及びサービスの利用を推奨するものではありません。投稿された情報の利用により生じた損害について株式会社LITALICOは一切責任を負いません。コラムに対する投稿内容は、投稿者の主観によるもので、株式会社LITALICOの見解を示すものではありません。あくまで参考情報として利用してください。また、虚偽・誇張を用いたいわゆる「やらせ」投稿を固く禁じます。「やらせ」は発見次第厳重に対処します。