収穫!ポタジェの一年で子ども達にあった変化

季節の移り変わりとともに、子どもたちには多くの作物の収穫を経験してもらいました。

お弁当には、手頃な大きさになったピーマンを選んでもらってパチリとカット。サラダにする生野菜が足りない時にはリーフレタス。外側から一枚ずつ豪快にバリッ。大事に大事に育てた小玉スイカをいよいよ割ったら、中身が黄色くて二人に警戒されたことも。成長スピードが速く、すぐに皮が硬くなってしまうオクラに対してあずさが怒りの声を上げていたり。根菜類を掘り上げるのが二人とも好きで、「今日は○○を収穫するよ!」と声をかけると競い合って裏庭へ……。

夏の盛りには、小さなカゴを手にした子どもたちが先を争って赤く色づいたミニトマトを狙うのですが、まゆみの手さばきの見事さには舌を巻いてしまいました。勤勉さと正確さにかけては大人を含めてもまゆみが一家で一番なくらいで、気軽に始めたポタジェから思いがけずまゆみの農作業への適性を見出すことになりました。

楽しかったのは作物の収穫だけではありません。レモンの若木に何かの幼虫がいたため、調べてみるとキアゲハの幼虫であることが分かりました。早速あずさと一緒に5匹捕まえ、虫カゴで育てて羽化まで観察したことも。

またある時は、コモンマロー(ウスベニアオイ)の花で作ったハーブティにレモン汁を垂らして紫からピンクへの色の変化を楽しんだり、たくさん植えたハーブ類の匂い当てゲームをしたり、グランドカバーに植えたシロツメクサから四葉のクローバーを探してみたり……。何でも素材にできる実験場のようなもので、好奇心の強いあずさは目をキラキラさせながら遊んでくれます。ポタジェで時間を過ごすうち、わが子それぞれの良いところ、良い表情がたくさん見られたことは私にとっても大きな収穫でした。

そして、肝心の偏食への効果について……!
元から食べてくれるピーマン、サツマイモ、イチゴのほか、なんと二人とも新たにミニトマト、レタス、スナップエンドウ、サラダホウレンソウ、スティックセニョールを食べてくれるようになりました!!

自分で育てたことが安心感になったのでしょうか、庭から採ったばかりの新鮮な野菜を食べられるのは嬉しかったようで、パクパクと口に運ぶ様子にまたまた泣いてしまいました。特にミニトマトは二人の中で「好物」と呼べるまでになり、生のまま半分に切って出すと一山を食べてくれるほど。食べない野菜も未だに多いですが、一年目でこの成果。期待しすぎず期待して、二年目の畑作に取り掛かっています。
二人とも新たにミニトマト、レタス、スナップエンドウ、サラダホウレンソウ、スティックセニョールを食べてくれるようになりました!
二人とも新たにミニトマト、レタス、スナップエンドウ、サラダホウレンソウ、スティックセニョールを食べてくれるようになりました!
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ASD(自閉スペクトラム症)の人と農作業には親和性がある?

園芸や農作業と相性が良いのは、まゆみに限った話ではないかもしれません。農作業は、ASD(自閉スペクトラム症)の人が安心感を持つと言われる「ルーティン」と「秩序」の積み重ねです。トマトの苗にピーマンがはえるようなことはなく、結果は予測可能で、トラブルさえなければ収穫という達成感が味わえます。就学相談の際に訪れた特別支援学校にも学生用の立派な菜園があり、たくさんの夏野菜を育てていました。

近年は、農作業がASD(自閉スペクトラム症)の人に与える好影響について海外で複数の研究報告がされており、これまで経験則で「取り組みやすい」とされてきた農作業の有益性が示唆されています。

また日本においては、農林水産省が農福連携(農業と福祉の連携)を推し進めており、神経発達症の方々の就労支援や職業訓練の場としての農業が広がりを見せています。先のことは分かりませんが、農作業に慣れておくと将来的に就労に繋がる可能性も0ではないかもしれません。
参考:Torquati, B., Stefani, G., Massini, G., Cecchini, L., Chiorri, M., & Paffarini, C. (2019). Social farming and work inclusion initiatives for adults with autism spectrum disorders: A pilot study. NJAS - Wageningen Journal of Life Sciences, 88, 101410.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1573521418300241
参考:農福連携の推進|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/noufuku/index.html

スペースがなくてもポタジェづくりは可能!

大々的にやっているように見えるかもしれませんが、わが家の裏庭は5坪にも満たない16平米。畑ゾーンはその半分ほどですし、決して広くありません。おまけに午前中は光が当たらない半日蔭の土地で、栽培に当たり好条件でもないのです。それでもこれだけ楽しめるので、意外とポタジェづくりのハードルは高くないように思いました。

ベランダでプランター菜園をしたり、室内でハーブポットを育てている人も多くいます。庭がなくても、矮性品種を選べば鉢植えで果樹栽培だってできますし、レンタル農園で週末だけ土いじりすることも可能です。なんといっても、病害虫に強くて育てやすい品種を選び、栽培に適した土を買いさえすれば、私のようなズボラなタイプが放置気味に育てても何とかなることが分かりました。家庭菜園に憧れを持っているけど踏み出せない……という方は、ぜひこの事実に勇気をもっていただければと思います。
次ページ「『ポタジェ』に見つけたインクルーシブ」

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