虫が苦手な自閉症息子と一つ年上の昆虫博士が親友に!?卒業で息子のメンタルが心配だったけれど…

ライター:星あかり
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息子のスバルは自閉症・情緒障害特別支援学級に通っています。学年混合クラスなので学年にとらわれずみんな仲良く遊んでいます。
5年生のスバルと一年間、一番仲良しで一番多くの時間を過ごしたのは6年生のお友だちでした。そしてこの春、そのお友だちは卒業しました。

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監修: 新美妙美
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教
2003年信州大学医学部卒業。小児科医師として、小児神経、発達分野を中心に県内の病院で勤務。2010年信州大学精神科・子どものこころ診療部で研修。以降は発達障害、心身症、不登校支援の診療を大学病院及び一般病院専門外来で行っている。グループSST、ペアレントトレーニング、視覚支援を学ぶ保護者向けグループ講座を主催し、特に発達障害・不登校の親支援に力を入れている。 多様な子育てを応援するアプリ「のびのびトイロ」の制作スタッフ。

1つ上の学年の友だち・ヒロシくんとの出会い

1つ上の学年の友だちヒロシくんとの出会いはスバルが小学1年生の時でした。私も一緒にいたので鮮明に覚えています。

1年生の時は保護者同伴で登下校していたのですが、帰りの会が終わってスバルと2人で廊下を歩いていると少し大きめの虫が飛んできました。驚き私の後ろに逃げたスバルに声をかけてきたのがヒロシくんです。「その昆虫の話、しようか?」私はその一言で察しました。彼は昆虫博士に違いないと。

特別支援学級の先輩でもあるヒロシくんはそのまま「せっかくだからぼくのおすすめポイントを紹介してあげる」と言ってスバルの手を引き、外へ出て行きました。スバルは大喜びでついて行きましたが、私は「おすすめポイント」という響きに嫌な予感がしていました。
なぜなら彼は昆虫博士でスバルは虫が苦手だからです。

私の予感は的中し、ヒロシくんは次々と昆虫の生息スポットを案内してくれました。プランターの下にはダンゴムシがいたし、ウサギ小屋の後ろには長い名前の幼虫がいました。一つひとつ紹介しながらスバルに「触ってごらん」と声をかけてくれましたが、スバルは青い顔をして首を横に振っていました。

校舎の壁の小さなひび割れの暗闇に手を突っ込んで「運が良ければ特別な昆虫に会えるよ。スバルくんも手を入れてみる?」と聞かれたところでスバルに限界がきて「ぼくは宿題がありますので……」と言って帰宅しました。
息子の初めての建前を目にした母
息子の初めての建前を目にした母
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余談ですが、この時はじめてスバルが建前を使って人からの誘いを断るのを見ました。基本的に思ったことをそのまま口にするタイプのスバルが成長する瞬間に立ち会ったとも言えます。

ヒロシくんとスバルが一緒に遊ぶようになるまで

そんな印象的な出会いを果たした2人ですが、この時私は「昆虫博士のヒロシくんと虫が苦手なスバルは仲良くならないだろう」と思っていました。ところが2人はたびたび一緒に遊ぶようになりました。ヒロシくんの昼休みの過ごし方は一貫して昆虫観察なのですが、スバルがそれに参加するようになったのです。

最初は同じ特別支援学級の同級生と遊ぶことが多かったスバルですが、それぞれが交流級でできた友だちと遊ぶ機会が増えバラバラで遊ぶ日も増えました。スバルにも交流級の友だちはいましたが、DCD(発達性協調運動症)による不器用さで球技を苦手とするスバルはドッジボールが大流行している交流級の遊びには入らないことを自ら決めたのです。「みんなそうしているから、自分も交流級で遊ばないと!」と焦っていた時期もありましたが、無理をすると疲れるという真理にたどり着き、自分が難しいと感じる遊びには参加しなくなりました。

そのため同級生たちがみんな交流級での遊びにでかけてしまった時、スバルは1人で散歩をしていました。それは親からすると胸がギュッとなるような話ですが、スバルにとっては楽しい遊びでした。

外を散歩をしているといろいろな場所で昆虫観察をするヒロシくんと出会いました。最初はすれ違うだけの存在でしたが、いつしか2人は一緒に……というよりはスバルがついて回るようになりました。ヒロシくんは昆虫の観察をしながら解説をし、スバルは聞いているようでほとんど聞き流して散歩をしているようでした。

それでもそんな生活を続けているうちに、昆虫が苦手なスバルはてんとう虫を手に乗せることができるようになりました。ぎゅーっと限界まで腕を伸ばして、できるだけ自分から遠ざけるポーズで自慢げに見せてくれました。それから5年、同じクラスになったり離れたり、お互い別の友だちと遊ぶ期間があったりしながら一緒にいて安心できる友だちとして関係を築いてきました。

最後の1年、2人の関係は……

スバルが5年生になった最後の1年は特に波長の合う1年だったようで、毎日一緒に遊んでいました。お互いに距離感の近い2人だったので文字通りベッタリ遊んでいました。あまりにもベッタリだったので私と先生は「ヒロシくんが卒業したらどうなっちゃうの!?」と心配し交流級での人脈づくりや、特別支援学級内の同級生や後輩との遊びを勧めたりもしました。スバルも「確かに」と感じ、交流級に出かけ遊びに混ざったりしたようですが、結局気を張らなくて良い安心できる場所に戻ってくるのでした。

そしてこの春ヒロシくんは卒業しました。
3学期になってからはヒロシくんの卒業が寂しすぎてチックが悪化するほどでした。ヒロシくんが卒業したらどうなっちゃうの!?と心配でたまりませんでしたが、お別れの日にぽろりぽろりと泣いたきり、案外けろっとしています。
ヒロシくんとのたくさんの思い出
ヒロシくんとのたくさんの思い出
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そういえばスバルはそういう子でした。気の合う子がいれば、四六時中その子とくっついているし、気の合う子がいなければ無理して人の輪に入らずに1人で楽しく過ごしてきたのでした。

そして4月、新年度が始まりました。「今までの傾向から新しいクラスメイトと先生はこのメンバーになるに違いない」という私の予想を大きく外れ、これからどんな生活が始まるのか想像できないメンバーが揃いました。この中の誰かと仲を深めるのかもしれないし、1人遊びを極めるのかもしれないし、ドキドキ未知数の1年のスタートです。
執筆/星あかり

(監修:新美先生より)
1学年上のお友だちとの出会いと別れの素敵なエピソードを聞かせてくださりありがとうございます。初めて「建前を使ってお断り」するほどスバル君にとって苦手な「虫」が大好きなヒロシ君なのに、なんだかんだとそこまで仲良くなれたのは、ヒロシ君自身と波長が相当合っていたのでしょう。学年が異なっても仲良くなれるお友だちっていいですよね。卒業での別れは寂しいですが、1年後、スバルくんにとって未知の中学校に入るときには、ヒロシ君の存在が心強く頼りになるのかもしれないですね。
発達の偏りのあるお子さんの友だち付き合いは一般的な感覚とは異なることもありますが、ご本人の感じ方・付き合い方を尊重して支えていくことが大切と思いました。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030514
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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