心配は尽きないけれど……温かく見守っていきたい

電話などで時には恋愛相談もしてくれるものの、遠く離れた地で寮生活を送っているコチ丸が、彼女とどんな恋愛をしているのか知ることはできません。

2人のお付き合いを温かく見守りたい……と思う反面、ちょっとした失敗もありました。連休中に彼女の家に泊まりに行くと言い出したコチ丸。あちらのご両親も了承しているのなら……と最初はOKしたものの、日が近づくごとに心配になり、ついつい間際で「やっぱりコチ丸はホテルに泊まったら?彼女の親御さんにも印象が良くないと思うよ」と中途半端に口を挟んでしまい、温厚なコチ丸を珍しく怒らせてしまいました。

「何で今さらそんなこと言うの?」というコチ丸に「しまったな……」と後悔しました。とはいえ、親の言葉を振り切ってでも選んだ行動ならそこに責任が伴うことも理解してほしい、若い2人はそこまでは考えていないかもしれないですが、やはり2人が長く幸せに続いてほしいからこその私の思いを、改めて伝えて、その上で「2人でよく考えて行動して」という話で締めくくりました。

一緒にいたい思いが先行してしまう気持ちも、私も若い頃に通ってきた道なのでよく分かります。しかし、親の立場となった今、当時の私の親の気持ちも痛感した出来事でした。どこまで私が親として大事なことを伝えられたのかは分かりませんが、それはこれからコチ丸が感じていってくれることなのかなと思い、心配しつつも楽しみでもある今日この頃です。
執筆/あき

(監修:初川先生より)
コチ丸くんに彼女ができたことをきっかけに性教育や恋愛について考えられたエピソードをありがとうございます。性教育や恋愛について、ゆくゆく考えなきゃと思いつつ、なかなかどう扱っていいか分からず悩まれている保護者の方は多いと思います。今の大人世代は、学校や家庭で性教育をしっかり受けてきた方は少ないように感じます。知識としての第二次性徴や妊娠、避妊等はあれども、どうやって妊娠に至るのか、どうやって男女関係をうまく築くのかなどは、教育や家庭外の、インフォーマルな場面(友だちから、本から、あるいはアダルト向け商品から)で知識を得た方も多いと思います。特に、発達障害や知的障害(知的発達症)などがある子にどうやって伝えようという面からすると、より一層難しく感じますね。

今回のコラムでは、あきさんがご自身の生理についてコチ丸くんが幼い頃から説明してきたとあります。生理にまつわる気持ちの不安定さや体調不良、あるいは一緒にお風呂に入っている際に経血を見られた場合など、何も知らない子どもは「自分が悪い子だからお母さんはすごく怒っているのだ」「お母さんから血が出てる。おなか痛いって言ってたし。お母さんは大きな病気やケガをしているのかもしれない」と感じるかもしれません。そうではなくて、お母さんの事情で心身の不調や出血が起きているのだということは、お子さんの発達段階に合わせて説明できるといいと思います。

性教育全般に関しては、まずは大人がその知識をアップデートするのが最善です。今は保護者向け性教育本(コミックエッセイになっているものも多いです)が多く出版されているので、ぜひ書店で手に取っていただき、読みやすそうなものを読んでみてください。そこで書かれている説明や話の持っていき方を参考にするとよいでしょう。子ども向けに書かれた絵本やコミック形式の本も増えてきました。大人が知識を入れたうえで、読んでみて、お子さんに渡す・一緒に読むということができるとよいと思います。

知的にゆっくりな子への性教育は、特別支援学校の中で扱われることがあったり、自治体の子ども向け講座やNPOや助産師会などが主催する講座などもあります。ぜひそうしたものを探して親子で参加できるかみてみるのもよいでしょう。

性教育というと、性行為のことを思い浮かべる方も多いと思いますが、性行為はその広い内容の中の1つでしかありません。ベースとなるのは、人権です。自分の体をまず大事にする(親であっても、子の体に勝手に触ってはいけないなどの境界線についてなども含まれます)。そして、自分の体を大事にすると同時に、相手の体も大事にする。好きだからといって、勝手に触ったり、勝手に自分の「好き」を押し付けたりしてはいけません。相手が求めてきても自分がそれを受け入れたくない場合は断ってもいい。同じく、相手が断ってきても自分が不機嫌になったり怒ったりしない。自分も相手も大事にすること。それが性教育の基本です。このあたりは、性に関することのみならず、日常生活のさまざまな場面に通じることでもあります(人権についての理解がベースにあるため)。

性教育は、子どもが幼少期からその発達段階に合う形で始めることがよいとされています。まだお子さんが小さい方も、ぜひ性教育に関する本を読んでみてください。また、あきさんのように、お子さんが思春期でまさに男女交際が始まるという段階では、いよいよ性行為に関する正しい知識(例えば、アダルト映像作品は男性優位に描写されているため、実際にあのようにやると女性を心身共に傷つける可能性があると知る/避妊や性感染症に関する正しい知識など)を得る段階です。親子でその会話をすることが難しい場合はなおのこと、よき本や良き説明動画(専門家が解説している動画も多くあります。まずは保護者がご覧ください)を紹介するなどして、自分も相手も大切にするあり方を学んでほしいと感じます。
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https://h-navi.jp/column/article/35030546
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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