【精神科医・本田秀夫】不登校の子どもに大事な2つの力を育てるコツは「今日のおかず」にあり!?

ライター:本田秀夫
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学校に行っていても行っていなくても、子どもにとって大事なのは、「安心できる居場所」です。学校や家庭が安心できる居場所になっているかどうかが重要です。今回は、主に家庭での対応のポイントについてお伝えします。

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執筆: 本田秀夫
信州大学医学部子どものこころの発達医学教室教授
附属病院こどものこころ診療部長
発達障害に関する学術論文多数。日本自閉症スペクトラム学会会長。
目次

子どもが「学校に行きたくない」、大人はどうすればいい?

登校しぶりがあるとき、休ませて様子を見たほうがいいのか。それとも、励まして登校させたほうがいいのか。保護者の方からそう聞かれることがあります。
子どもが「学校に行きたくない」と言い出すのは、親御さんからすると「問題の始まり」に見えますが、お子さんからすると“学校に行く自分”を捨てた「最終段階」と言えます。大人が思っている以上に、子どもは問題を抱え込んだり一生懸命にふるまったりしているのです。

不登校対応の基本3点「休養」「相談」「親子関係」

「学校に行きたくない」は子どもからのSOSです。その段階では、まずは休ませたほうがいいでしょう。
不登校の対応の基本は3つ、「まずは休養」「相談しやすい環境づくり」、そして「親子関係を良好に保つ」ことです。
「学校に行きたくない」というのは、その子のなかで問題が「最終段階」になったときです。子どもはもう疲れ果てているので、休養をとる必要があります。

「登校させたい」という煩悩を消せるかどうか

子どもに休養をとらせ、相談しやすい雰囲気をつくり、親子関係を良好に保つ。そのうえで、もう一つポイントがあります。
それは、親が「登校させたい」という煩悩を消せるかどうかです。煩悩が消えれば、登校に結びつくかどうかを気にしすぎないで、淡々と対応できます。これが本当に大事なのです。
そして、「煩悩を消してください」と言うのは簡単ですが、実践するのは親御さんにとって簡単なことではないと思います。

外野の言葉に耳を傾ける必要はナシ!

親として「子どもを学校に行かせない」という決断をしたとしても、周囲の無理解な人(場合によっては学校の先生や子どもを支援する立場の人でさえも)がこんなふうに言ってくるかもしれません。

「では、子どもが将来、『仕事が嫌だから行かない』と言ったら行かせないんですか?」
「甘やかしていると、将来本人が困るのではないですか?」
「子どもを学校に行かせるのは、親の義務ではないのですか?」


このような言葉に耳を傾ける必要は、一切ありません。

「学校に行きたくない」と打ち明けてくれた子どもの意思を尊重し、子どもに休養をとらせたいと判断するのは間違いではありません。
ここは親が「登校できなくてもかまわない」というくらいに腹をくくって、淡々と平和に過ごしていると、子どももリラックス
するようになります。そうすると、子どもも「休みたい」とか「明日は行ってみようかな」と言いやすくなるのです。

「登校できていれば安心」というわけでもない

「登校させたい」という気持ちを捨てるのは簡単ではないかもしれませんが、ここで参考となる情報を一つお伝えしましょう。発達障害のある子の場合、登校できていれば将来は安泰なのかというと、そうとは限りません。
発達障害のある子の相談を受けていると、小学生から高校生くらいまでは問題なく通学していて、勉強も得意だったけれど、大学生くらいの時期から生活がうまくいかなくなって、その後はひきこもりの状態になっているという話を聞くことがあります。

登校日数や学力よりも大事なもの

対人関係が苦手だったり、基本的な生活習慣が身についていなかったりして、大学や就職先で苦労する人がいるのです。
本人の話を聞いてみると、「子どもの頃から勉強を頑張っていれば親は何も言わなかった」「同級生と一緒に活動することは少なかった」「学校生活を特に楽しいと思っていなかった」といったエピソードが出てきたりします。

学校生活を楽しめていなかった。勉強以外のことにはあまり参加できていなかった。でも親は子どもが毎日登校して、いい成績を取れていれば、問題ないと思っていた。家庭でも勉強が優先され、生活スキルを習得する機会は少なかった──。

こういった育ち方をした子は、登校できていても、社会に出ていくための土台づくりができていなくて、あとで挫折することがあります。登校日数や学力が、将来の社会参加を保証するわけではないのです。
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