「安全確保が困難なら送迎不可」働く母を襲った危機!特別支援学校のバスで大泣きする息子を救った秘策【実体験】

ライター:かし りりあ
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かしりりあです。
わが家の長男りーは特別支援学校に通う小学2年生です。通学には学校からのバスを利用しています。
今回は最近解決したりーのあるトラブルを紹介します。

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監修: 藤井明子
小児科専門医
小児神経専門医
てんかん専門医
子どものこころ専門医
どんぐり発達クリニック院長
東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学病院、長崎県立子ども医療福祉センターで研鑽を積み、2019年よりさくらキッズくりにっく院長に就任。2024年より、どんぐり発達クリニック院長、育心会児童発達部門統括医師に就任。お子様の個性を大切にしながら、親御さんの子育ての悩みにも寄り添う診療を行っている。 3人の子どもを育児中である。

バスの中で大泣き……「安全が確保できない」と告げられて

わが家の長男りーは特別支援学校に通う小学2年生です。りーの学校では学期ごとに面談があり、学校と家庭での情報共有を行っています。

去年の2学期、先生からある相談をされました。それは、帰りのバスの中でりーが大泣きし、ほかのお子さんにも影響が出てきているというなかなか深刻なものでした。りーが泣くのは毎日ではなく、どうやら特定の曜日・ルートのようで、放課後等デイサービスを利用する日に、バスが走り出した時や、引き渡しの際に泣くということでした。

りーは泣きだすと声も大きく、場合によっては手足をバタつかせます。またりーの大きな声で同乗している子たちもイライラしたり、不穏になったり、手が出そうになっている状況のようでした。
帰りのバスで原因不明の大号泣!ほかのお子さんにも影響が……
帰りのバスで原因不明の大号泣!ほかのお子さんにも影響が……
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先生からは、バスに乗るうえで安全が確保できないようであれば、今後バスでの送りは難しくなると告げられてしまいました。
私は、午後からパートで働いているため、バスでの送りが難しくなると仕事にも支障が出ます。働く母としての生活基盤を揺るがす事態に、「今後どうしたらいいのだろう……」と大きな焦りを覚えました。
「安全確保できなければバスは乗れない」働く母の危機……!
「安全確保できなければバスは乗れない」働く母の危機……!
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原因は「見通しの立てにくさ」?“うどん屋ルート”で見えた特性

私はすぐに放課後等デイサービスの先生へ相談しました。先生はりーがなぜ泣くのかの原因を一緒に探ろうとしてくれましたが、そこで私はふと思い当たることがありました。

りーが泣く時のバスルートの先には、小さい頃によく行っていたうどん屋さんがありました。一時期はそこを通ると「寄って!」と主張するかのように大泣きしていたのです。りーの特性として、一度見通しが立つと、それが変更されることへの強い不安(こだわり)があります。もしかしたら「うどん屋さんに行く道なのに、どうして行かないの!?」と、りーの中で見通し不安に繋がっているのでは?と考えたのです。

しかし、これはあくまで私の推測にすぎません。言葉で伝えるのが難しいりーの気持ちを理解できないことに歯がゆさを覚えましたが、だんだんと「その曜日は泣くもので、もう仕方ない」と、半ばあきらめのような気持ちが出てきました。また、時がたてば、いずれはなくなっていくのではという希望もありました。

「また今日も泣いて帰ってくる」と憂うつな気持ちに……

いくら「仕方がない」と割り切ろうとしても、泣くルートの時には「今日もバスの中で泣いていました」と毎回連絡帳に書かれて帰ってくる日々。連絡帳を見るたびに、先生方への申し訳なさと、原因が分からないことへの無力感、仕事が続けられなくなる不安でいっぱいになり、その曜日が来るたびに、朝から憂うつに感じるようになりました。
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特性を力に変える!大好きなお絵描きと視覚優位を活かした「降りる場所カード」

ところで少し話は変わりますが、りーはお絵描きが好きです。自分で描くのも、誰かに描いてもらうのも好きです。特にとあるキャラクターが大好きで、絵をリクエストするときにはそのキャラクターの仕草を真似してアピールしてきます。

また、2年生になってからだんだんとひらがなも読めるようになり、学校でもキャラクターのイラストを見て、その名前をカードの並べ替えで表すということもできるようになってきました。

そこで私は「りーの好きなキャラクターを使って、バスを降りる場所が分かるカードをつくろう」と思い立ちました。
安心につながるように、願いを込めてつくったカード
安心につながるように、願いを込めてつくったカード
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・りーの好きなキャラクター
・放課後等デイサービスの名前(ロゴ)
・バスを降りる場所

これらを記入したカードを、降りる場所ごとに何種類かつくりました。それぞれのカードで違うキャラクターを描き、万が一ひらがなが読めなくても違いが分かるようにしています。このカードで、バスに乗っている間『次に何が起こるか』という見通しがつきやすくなり、好きなキャラクターで安心できるといいなと思ったのでした。

ただ、この方法がすぐうまくいくとは思っていませんでした。実際、カードを持たせた初日は変わらず、泣いて帰ってきていました。それでも自分の好きなキャラクターが描いてあるためか、カードをじっと見つめることが多かったようです。

それから一週間経ち、再び泣くルートの日がやってきました。すると……うなりながらも、泣かずに帰ってくることができたのです!
手づくりカードに効果あり!?バスで泣かずに帰ってこれるように
手づくりカードに効果あり!?バスで泣かずに帰ってこれるように
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両手でカードを握りしめていた息子。パニックを乗り越えられたことに成長を感じて

放課後等デイサービスの先生によると、バスから降りてくる際、りーはカードを両手で大事そうに持っていたそうです。バスの添乗員さんも先生も自分のことのように喜んでくれ、私もとてもうれしい気持ちになりました。私の支援がりーに適切に届いてくれたのかな、となんともいえない感慨深い気持ちになったのです。以降、りーがバスの中で大泣きすることはなくなっていきました。

なぜ、りーが特定のルートで泣いていたのか、はっきりとした理由は今も分かりません。しかしカードを使うことで、なんとなくでも理解はしてくれたのかなあと思っています。
バスから降りてくる際、カードを両手で大事そうに持っていたそうです
バスから降りてくる際、カードを両手で大事そうに持っていたそうです
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いまでは朝学校へ行く前に「今日はどこで降りるかな」とカードを確認しています(休みたいときもあるのかカードを見て「んー!」と不満をあらわすことも……)。

これからも学校や放課後等デイサービスの先生方と連携をしながら、子どもたちの困りごとに自分ができることを考えていけたらなと思っています。
執筆/かしりりあ

(監修:藤井先生より)
りーさんの「特定のルートで泣いてしまう」という行動の背景に、見通しの立てにくさといった発達特性からの困りごとを想像し、丁寧に向き合われたかしりりあさんの姿がとても印象的でした。見通しを立てるための手づくりカードをつくり、さらにりーさんが安心できるような工夫を重ねられた点も本当に素敵です。問題が落ち着いたときに一緒に成長を喜んでくれる大人の存在があることは、りーさんにとって大きな安心と支えになりますね。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030784
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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