服用を続けるか迷った理由

それは思春期?それとも副作用?

そうして開始したビバンセですが、コウは現在服用をやめています。メリットよりもデメリットのほうが目立ってしまったためです。

それでも2か月ほど服用を続けたのには理由がありました。ひとつは、効果が安定するかどうかを見極めたかったこと。もうひとつは、「好ましくない副効果なのかどうか判断がつきにくい症状」が出ていたからです。

判断が難しかった症状――それは、『イライラし、攻撃的な態度が増えたこと』でした。


それがビバンセの副作用だったのか、年齢相応の自然な変化だったのか……正直なところ、私には今でもはっきり区別することはできません。認知能力が上がったことで、親の鬱陶しさに気づいただけだった可能性もあります。それはそれで、成長だったとも言えるでしょう。
薬の副作用ではなく、成長による自然な変化の可能性もあり……どう捉えるべきか迷いました
薬の副作用ではなく、成長による自然な変化の可能性もあり……どう捉えるべきか迷いました
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コウによると、ビバンセを服用している間は「ずっと神経が過敏な状態が続いている感じ」があり、その疲れから薄いイライラ感が続いていたそうです。
(ただ、それは後から振り返って分かることであり、服用中にイライラしている自覚はなかったそうです)

やめる決め手になったのは、本人の言葉

それでも服用をやめることを決めた最大の理由は、コウ自身が「やめたほうがいいかも」と言い出したことでした。

学校でも「余計な一言を言ってしまったな」と思う場面が増えていたそうで、「親への反抗だけならまだしも、友人関係が拗れるのは後で尾を引くのでは……」と、聞いていて少し心配になりました。
コウの外出中や就寝中に、コウの服薬について、夫と情報共有したりしていました
コウの外出中や就寝中に、コウの服薬について、夫と情報共有したりしていました
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また、実行機能の向上などの明確なメリットは感じられなかったそうです。私たち親から見ても、宿題や時間管理、気持ちの切り替えに大きな変化は見られませんでした。
それらを踏まえて改めて話し合い、ビバンセの服用を中止することにしました。

苛立ちや反抗的な態度が、年齢相応の成長であり、好ましい変化だった可能性も否定はできません。だからこそ判断にはかなり迷いましたが、『コウ本人がつらさを感じていること』を最優先して考えた結論になりました。

振り返ってみて、今思うこと

「あの頃、僕めっちゃキレやすかったよね?」

そう笑いながら話す今のコウによると、ビバンセをやめてからは、楽しい気持ちや「何かしたいな」という意欲が、自然に湧いてくるようになったそうです。私から見ても、笑顔が増え、ピアノを弾いたり、絵を描いたりする時間を楽しむ姿がはっきり増えました。

服用を続けていれば効果が安定した可能性もあり、この選択が正しかったかどうかは分かりません。それでも、一度試したことで本人が納得してアトモキセチンの継続を選べたのなら、十分意味のある経験だったのだろうと思っています。
笑顔で『キレやすかった頃の自分』を振り返るコウを見ると、ビバンセを一度試してみたのもよい経験だったのかなと思います
笑顔で『キレやすかった頃の自分』を振り返るコウを見ると、ビバンセを一度試してみたのもよい経験だったのかなと思います
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執筆/丸山さとこ


(監修:室伏先生より)
お薬について、コウくんの実体験を共有いただきありがとうございました。治療薬について迷いや葛藤を抱えている多くのご家庭にとって、とても参考になる内容であったことと思います。

私からは、ADHD(注意欠如多動症)のお薬について少しご紹介させていただこうと思います。
現在日本で処方されているADHD(注意欠如多動症)のお薬は、コンサータ、ビバンセ、アトモキセチン、インチュニブがあります。私自身は、ビバンセについての処方経験が少ないため、その他の3剤についてお話させていただきます。

コンサータは、覚醒作用が比較的強く、注意力や集中力の改善を実感しやすい治療薬です。副作用としては、覚醒効果が強いため寝つきにくくなることがあり、原則として朝に内服する必要があります。速効性がありますが、効果の持続時間はおよそ12時間程度であり、夕方頃には効果が薄れてくると感じる方もおり、「放課後になると多動や落ち着きのなさが目立つ」といったご相談を受けることもあります。そのような場合には、コンサータによる不眠を緩和しつつ、効果を増強するため、インチュニブを併用することもあります。また、食欲が低下しやすく、体重減少が問題となる場合もあります。そのため、必要最小限の用量に調整したり、ほかの薬剤と併用しながらバランスを取っていくことがあります。ほかにも、不安感やイライラなどの副作用も経験します。
なお、コンサータは、処方医として登録された限られた医師のみが処方できる薬剤で、どこの医療機関でも処方してもらえるわけではありません。また、1回の処方で出せる日数は原則30日分までと決められており、月1回程度の定期受診が必要になります。

アトモキセチンは、原則1日2回内服が必要な治療薬で、効果が1日を通して安定しやすいとされています。一方で、効果を実感するまでに時間がかかることが多く、飲み始めの時期には、食欲低下や吐き気、だるさなどの副作用が見られることがあります。ただし、副作用の様子を見ながら少しずつ増量していくことで、身体が慣れて落ち着いてくる場合も少なくありません。コンサータのような処方医登録の必要性や、処方日数の制限がない点も特徴のひとつです。

インチュニブは、過度な覚醒や興奮を抑え、気持ちや行動を落ち着いた状態に整える作用を持つことが特徴とされています。コンサータは覚醒・集中を「引き上げる」方向の薬となりますので、これとは違った効果を感じられるかもしれません。副作用としては、コンサータとは逆に、眠気が比較的高頻度で見られるほか、頭痛や血圧低下による立ちくらみなどが起こることもあり、特に飲み始めや増量時には注意が必要です。眠気の影響を考慮し、勉学や就業への支障を避けるため、午前中の服用は控えることが望ましいです。効果持続が長く、1日1回の内服で1日中効果を発揮しますので、就寝前に内服をされている方が多いと思います。コンサータと同様の処方医登録や日数制限はありません。
前の記事はこちら
https://h-navi.jp/column/article/35030858
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。

※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
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このコラムのコメント1件
りうさん
2026/01/24 08:57
うちはホルモンの関係からか のぼせ、朝の血圧が高くなり
服用を迷うこともあります。体温調節も普段から苦手。
薬を飲まないと色んな事がのんびりするので
感覚過敏が特性なのか副作用なのかは判断しかねます。
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