障害がある子の「25歳で自立」は絶対?「ずっと一緒に暮らしたい」は甘え?多様化する住まい選びと親の葛藤
ライター:立石美津子
お子さんに障害がある場合、「親なきあとの住まい」について悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。今回は、既存の枠にとらわれない「住まい」の最新事情と、親の本音に寄り添う新しい選択肢についてお話しします。
監修: 渡部伸
行政書士
親なきあと相談室主宰
社会保険労務士
慶應義塾大学法学部卒後、出版社勤務を経て、行政書士、社会保険労務士、2級ファイナンシャルプランニング技能士などの資格を取得。現在、渡部行政書士社労士事務所代表。自身も知的障害の子どもを持ち、知的障害の子どもをもつ親に向けて「親なきあと」相談室を主宰。著作、講演など幅広く活動中。
親なきあと相談室主宰
社会保険労務士
「25歳独立説」への違和感――親の愛情は、自立を妨げる「甘え」なのか?
私は現在、知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)の息子(25歳)と一緒に暮らしています。
「なぜ息子さんをグループホームに入れないのですか?自由が多いからですか?それとも一緒にいたいからですか?」
このような質問をいただくことがあります。結論から申し上げますと、固定観念にとらわれたくないという思い、そして本音を言えばずっと一緒に暮らしていたいという気持ち、この二つが大きな理由です。
息子が特別支援学校高等部に通っていた頃、有名な講師による講演会がありました。
「障害のある子こそ、25歳になったら親元から離すべきです」
「親が亡くなったときに住む環境まで変わると、本人が困ります」
「いつまでも親元に置いておくのはよくありません」
いわゆる「25歳独立説」です。会場の多くの保護者がうなずいていました。「そうだ、早く自立させなければ」と感じた方も多かったと思います。
しかし、私は心の中で考えていました。本当にそれが正解なのだろうか。
確かに、親が亡くなったときに
しかし、心の奥では別の気持ちがありました。できることなら、ずっと一緒に暮らしていたい。これは、きれいごとではなく、多くの保護者が抱いている本音ではないでしょうか。
「なぜ息子さんをグループホームに入れないのですか?自由が多いからですか?それとも一緒にいたいからですか?」
このような質問をいただくことがあります。結論から申し上げますと、固定観念にとらわれたくないという思い、そして本音を言えばずっと一緒に暮らしていたいという気持ち、この二つが大きな理由です。
息子が特別支援学校高等部に通っていた頃、有名な講師による講演会がありました。
「障害のある子こそ、25歳になったら親元から離すべきです」
「親が亡くなったときに住む環境まで変わると、本人が困ります」
「いつまでも親元に置いておくのはよくありません」
いわゆる「25歳独立説」です。会場の多くの保護者がうなずいていました。「そうだ、早く自立させなければ」と感じた方も多かったと思います。
しかし、私は心の中で考えていました。本当にそれが正解なのだろうか。
確かに、親が亡くなったときに
- 親がいなくなる
- 住み慣れた家からも離れる
しかし、心の奥では別の気持ちがありました。できることなら、ずっと一緒に暮らしていたい。これは、きれいごとではなく、多くの保護者が抱いている本音ではないでしょうか。
ダブルパンチを避けたいという葛藤
「親がこの世からいなくなる」
「住み慣れた家から離れる」
この二つが同時に起きることは、本人にとって大きな負担になります。だからといって、早く家を出さなければならないと言われると、親の心は揺れます。
ダブルパンチは避けたい。でも、できることなら一緒に暮らせるうちは、ともに暮らしたい。
この相反する気持ちの中で、親の心は常に揺れ動きます。
私は高齢出産でした。そのため、息子と一緒にいられる時間には限りがあることを、強く感じています。だからこそ、せめて自分が長生きできるように、健康管理には気をつけています。親としてできることは、子どものそばに少しでも長くいること。それも一つの現実的な選択だと思っています。
「住み慣れた家から離れる」
この二つが同時に起きることは、本人にとって大きな負担になります。だからといって、早く家を出さなければならないと言われると、親の心は揺れます。
ダブルパンチは避けたい。でも、できることなら一緒に暮らせるうちは、ともに暮らしたい。
この相反する気持ちの中で、親の心は常に揺れ動きます。
私は高齢出産でした。そのため、息子と一緒にいられる時間には限りがあることを、強く感じています。だからこそ、せめて自分が長生きできるように、健康管理には気をつけています。親としてできることは、子どものそばに少しでも長くいること。それも一つの現実的な選択だと思っています。
「環境を変えない」という究極の選択肢
そんな「ダブルパンチ」を避けるための、驚くべき事例に出合ったことがあります。先日、私が移動支援の仕事であるグループホームを訪れた際のことです。
そこは、親御さんの計画性が際立つ、本当に素晴らしいグループホームでした。
なんと、親なきあとのことを考え、もともと「グループホーム仕様」で家を建てて家族で暮らし、親が亡くなった後は、息子さんがそのまま利用者としてその家に住み続けているのです。
つまり、本人の住む環境が全く変わらないというわけです。
最初からグループホームとして機能させるためには、あらかじめ以下のような必須条件を満たす設計にしておく必要があります。
そこは、親御さんの計画性が際立つ、本当に素晴らしいグループホームでした。
なんと、親なきあとのことを考え、もともと「グループホーム仕様」で家を建てて家族で暮らし、親が亡くなった後は、息子さんがそのまま利用者としてその家に住み続けているのです。
つまり、本人の住む環境が全く変わらないというわけです。
最初からグループホームとして機能させるためには、あらかじめ以下のような必須条件を満たす設計にしておく必要があります。
- 個室の広さ(約4.5畳以上が基準)
- バリアフリー(段差なし・手すり・広い廊下)
- 消防設備(火災報知器・誘導灯・場合によってはスプリンクラー)
- 共用スペース(食堂・リビング)
- トイレ・浴室の安全性
- 職員室や見守り動線
- 避難経路の確保
研修会で知った多様な住まいの選択肢
こうした現場での経験に加え、手をつなぐ親の会が主催する「障害のある人の住まいと暮らし方」研修会に参加する機会もありました。講師は、「親なきあと相談室」主催の渡部伸先生、そして住宅メーカーの方でした。会場にはご高齢の保護者の姿も多く見られ、「親なきあとの住まい」がどれほど切実な問題であるかを実感しました。
この研修会で一番印象に残ったのは、「住まいの選択肢が大きく広がっている」ということでした。グループホームとひとことで言っても、実にさまざまな形があります。
この研修会で一番印象に残ったのは、「住まいの選択肢が大きく広がっている」ということでした。グループホームとひとことで言っても、実にさまざまな形があります。
- 日中サービス支援型
- サテライト型
- 共生型
- サポートつきシェアハウス
- サービスつき住宅
- 重度訪問介護による一人暮らし
- 親子で住める有料老人ホーム
住まいの形は一つじゃない。住宅メーカーの取り組みから見えた「増える選択肢」
大手住宅メーカーを中心に、空き家や土地を持つオーナーに働きかけ、グループホームを建設する「建て貸し方式」が進められているそうです。住宅メーカーが建物を建て、社会福祉法人などの運営法人とマッチングし、障害のある人の住まいとして活用する仕組みです。
少子化で空き家が増える中、地域の中に障害のある人の住まいを増やしていく取り組みが進んでいることは、何よりの安心材料になります。
「住まいは不足しているのではなく、形が変わりながら増えている」という現実を知り、私は「25歳独立説」に焦る必要はないのではないかと感じました。「住まいの安心」という土台が見えてきた今、その子に合ったタイミングと暮らし方を、じっくり選んでもいいのだと思えたのです。
親なきあと、わが子が自分らしく、安心して過ごすためには、本人の特性を理解し、寄り添ってくれる「人の目」や「心の通い合い」が不可欠です。親が元気なうちに、子どもを支えてくれる「人の輪」をいかに広げていくか。孤立の不安からわが子を守るための環境づくりについては、次回お話ししたいと思います。
執筆/立石美津子
少子化で空き家が増える中、地域の中に障害のある人の住まいを増やしていく取り組みが進んでいることは、何よりの安心材料になります。
「住まいは不足しているのではなく、形が変わりながら増えている」という現実を知り、私は「25歳独立説」に焦る必要はないのではないかと感じました。「住まいの安心」という土台が見えてきた今、その子に合ったタイミングと暮らし方を、じっくり選んでもいいのだと思えたのです。
親なきあと、わが子が自分らしく、安心して過ごすためには、本人の特性を理解し、寄り添ってくれる「人の目」や「心の通い合い」が不可欠です。親が元気なうちに、子どもを支えてくれる「人の輪」をいかに広げていくか。孤立の不安からわが子を守るための環境づくりについては、次回お話ししたいと思います。
執筆/立石美津子
専門家コメント(行政書士・親なきあと相談室主宰・社会保険労務士 渡部 伸先生)
立石さん、私のセミナーにご参加いただいたとのこと、ありがとうございます。障害者の住まいの種類が増えているのと同様、一人暮らしを選んだ場合の選択肢もいろいろとあります。居宅介護、訪問看護、移動支援、社会福祉協議会が実施主体となっている日常生活自立支援事業、2018年から始まった自立生活援助など、新しい仕組みも登場しています。運営する事業者を確保できるかといった課題はありますが、制度そのものは増えてきています。
どういった暮らしがあるのか、本人はなかなかイメージがつかみづらいのではと思います。ショートステイや宿泊型自立訓練、一人暮らし体験の場など、いろいろな経験を重ねることが大切です。ご自分の希望に合った住まいや暮らし方を見つけてあげたいですね。(監修:行政書士・親なきあと相談室主宰・社会保険労務士 渡部 伸先生)
どういった暮らしがあるのか、本人はなかなかイメージがつかみづらいのではと思います。ショートステイや宿泊型自立訓練、一人暮らし体験の場など、いろいろな経験を重ねることが大切です。ご自分の希望に合った住まいや暮らし方を見つけてあげたいですね。(監修:行政書士・親なきあと相談室主宰・社会保険労務士 渡部 伸先生)
このコラムの著者親子がモデルの本
発達障害に生まれて 自閉症児と母の17年 (中公文庫)
中央公論新社
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このコラムを書いた人の著書
立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方
すばる舎
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動画でおぼえちゃうドリル 笑えるひらがな
小学館
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育ててわかった 発達障害の子の就学・就労・自立の話
第三文明社
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じゅもんで おぼえる ひらがなブック
高橋書店
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(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。