パニックを起こしやすいASDきょうだいの歯科探し。受診のパニックを乗り越えた障害者診療と親子の工夫
ライター:かし りりあ
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かしりりあです。夫と発達がゆっくりな3きょうだい、家族5人で楽しく過ごしています。今回はわが家の子どもたちの歯科事情について書いていこうと思います。
監修: 初川久美子
臨床心理士・公認心理師
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
臨床心理士・公認心理師。早稲田大学大学院人間科学研究科修了。在学中よりスクールカウンセリングを学び、臨床心理士資格取得後よりスクールカウンセラーとして勤務。児童精神科医の三木崇弘とともに「発達研修ユニットみつばち」を結成し、教員向け・保護者向け・専門家向け研修・講演講師も行っている。都内公立教育相談室にて教育相談員兼務。
東京都公立学校スクールカウンセラー/発達研修ユニットみつばち
家での歯磨きも嫌がる長男の歯科受診
知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)の長男「りー」が4歳頃、園の歯科検診で「虫歯があります」とお知らせを受けました。痛みがあったのかしきりに歯を触ったり、母の手をつかんで違和感を伝えようとしてきたり。緊急性を感じ歯科を探すことにしたのですが……。
家での歯磨きも嫌がるりー。そんなりーが歯科を受診したら大絶叫して、とてつもなく迷惑をかけてしまうのでは……とも思ってしまいました。歯科で子どもが泣くことはよくあるかもしれませんが、「拒否」の表現で泣くときのりーの声はとても大きいので心配になってしまう私もいたのです……。
そんなことを考えながら歯科探しをしていると気になる項目を見つけました。
それは「障害者診療」というものです。さっそく私はそこへ連絡してみると当日でも診療ができるとのこと。そこで私はりーの状態(今言葉が話せないこと、声が大きいこと、歯の治療が予想できないため見通しが立たないことでパニックになってしまう可能性)について話しました。
もし難しければ違うところを探そう、と思っていたのですがその歯科は「はい、大丈夫ですよー」と即答。
少し驚きましたがさっそくりーを連れて向かうことに。
そんなことを考えながら歯科探しをしていると気になる項目を見つけました。
それは「障害者診療」というものです。さっそく私はそこへ連絡してみると当日でも診療ができるとのこと。そこで私はりーの状態(今言葉が話せないこと、声が大きいこと、歯の治療が予想できないため見通しが立たないことでパニックになってしまう可能性)について話しました。
もし難しければ違うところを探そう、と思っていたのですがその歯科は「はい、大丈夫ですよー」と即答。
少し驚きましたがさっそくりーを連れて向かうことに。
絵カードと「タオル包み」でパニックを乗り越えた長男
初めての場所で、何をされるか分からない状況だったため、やはり手足をばたつかせ、絶叫。先生やスタッフの方に相談し、私が手足をやさしくおさえながらの診療となりました。
まずは痛みを抑える処置をしてもらい、虫歯の治療についてはりーの状況をみながら少しずつ進めていくことになりました。
まずは痛みを抑える処置をしてもらい、虫歯の治療についてはりーの状況をみながら少しずつ進めていくことになりました。
先生はそこで治療に使う器具を一つひとつ見せてくれました。
「写真を撮って、りーくんが少しでも穏やかに治療できるように(事前見通しに)使ってください」と言ってくれました。さらに「口を開けます」「口をすすぐよ」など手順の絵カードも用意してくれ、カードを見るのが好きなりーに寄り添った治療をしてくださいました。
診察していく中で、りーが全身が包まれていると比較的落ち着くことが分かり、大きなタオルを用意して包んでくれたことで、無事にりーの治療を終えることができたのです。
「写真を撮って、りーくんが少しでも穏やかに治療できるように(事前見通しに)使ってください」と言ってくれました。さらに「口を開けます」「口をすすぐよ」など手順の絵カードも用意してくれ、カードを見るのが好きなりーに寄り添った治療をしてくださいました。
診察していく中で、りーが全身が包まれていると比較的落ち着くことが分かり、大きなタオルを用意して包んでくれたことで、無事にりーの治療を終えることができたのです。
「風が出るよー」実物見せと意見尊重で克服した次男
続いて次男「かー」にも虫歯があることが分かり、歯科を受診することに。りーよりはコミュニケーションはとりやすいものの、言葉だけでは通じないという不安なこともあったため、りーの時と同じ歯科を受診しようと思ったのですが……。
あいにくしばらく休診されるとのこと。そこで新しい歯科を受診することにしました。小児歯科があり、障害者診療も行っているところを探して受診しました。
あいにくしばらく休診されるとのこと。そこで新しい歯科を受診することにしました。小児歯科があり、障害者診療も行っているところを探して受診しました。
そこの歯科医院では絵カードはありませんでしたが、かーが治療に使う器具を凝視していたためか、「次は風が出るものだよー」と実物を見せ、実際に風を頬にあてて確認させてくれたり、「これはできそうかな?」とかーに問いかけてくれたり。「できない」というものには「じゃあこれはどうかな」と代用品を見せてくれたりと、かーの意見を聞きつつ治療を進めていきました。
最初は「イヤ」と言うことが多かったかーですが、歯科のスタッフさんと交流する中で「今日は頑張ろう」という気持ちも芽生えてきたようで、少しずついろいろな器具を試しても平気になってきました。今も定期的に歯科に通っています。「はいしゃさん、イヤだなー」とは言うものの、行ってしまえば「今日もぼく、がんばったよー」とニコニコ笑顔でその日の治療を終えることができています。
発達がゆっくりな子どもや感覚が過敏な子どもの歯科受診では、受診したら迷惑をかけるのではないかと億劫に感じてしまうこともあるのかもしれません(実際私は受診するまで感じていました)。
ですが、子どもの状況やできることに寄り添った治療をしてくれる歯科医院もあります。
お子さんの歯の悩みがある時には気軽に相談できる場所をあらかじめ探しておけると良いのかなあと思いました。
執筆/かしりりあ
発達がゆっくりな子どもや感覚が過敏な子どもの歯科受診では、受診したら迷惑をかけるのではないかと億劫に感じてしまうこともあるのかもしれません(実際私は受診するまで感じていました)。
ですが、子どもの状況やできることに寄り添った治療をしてくれる歯科医院もあります。
お子さんの歯の悩みがある時には気軽に相談できる場所をあらかじめ探しておけると良いのかなあと思いました。
執筆/かしりりあ
専門家コメント 初川久美子先生(臨床心理士・公認心理師)
お子さんの歯科受診はただでさえなかなかにハードルが高いですが、発達的な課題や感覚の過敏さがあるとますます一筋縄ではいかないところもあるでしょう。今回、かしさんのお子さん方が受診した歯科医院は、絵カードや実物を見せてくださり、できるだけ予告しようとしてくださいました。また、器具の機能や治療についてお子さん本人に説明して同意を取ろうとしてくださったのもとてもありがたいですね。子どもだから(あるいは発達がゆっくりだから)押さえこんでしばらく耐えてもらうという方法は限界があります。特に歯科の治療は継続的に行われることも多いので、できるだけ予告し、本人の同意をとり、そして安心できる工夫も施し(布にくるまれた方が安心すると気づかれたのはよかったですね)、自分の歯の健康のために必要な治療をしているのだと、子どもなりに分かる形で進んでいけるといいですね。何より、歯科の先生方が、障害のあるお子さんの治療について、「大丈夫ですよ」というスタンスで臨んでくださることが、お子さん本人・保護者の方にとっても、とても安心ですね。(監修:臨床心理士・公認心理師 初川久美子先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。