言葉と笑顔が消えた1歳半。「私のせい?」と悩んだ母が、受給者証なしで通える支援を見つけるまでの記録
ライター:みいな
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現在小学2年生の次男もーたは、小学校入学前の年長の夏に、軽度知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。療育(発達支援)を受け始めたのは、2歳の終わり頃からです。今回は、乳幼児期の様子から、療育につながる前の次男の様子をお話させていただこうと思います。
監修: 室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
筑波大学医学部卒。国立成育医療研究センターで小児科研修終了後、東京女子医科大学八千代医療センター、国立成育医療研究センター、島田療育センターはちおうじで小児神経診療、発達障害診療の研鑽を積む。
現在は、名古屋市立大学大学院で小児神経分野の研究を行っている。
名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
乳幼児期、次男もーたに抱き始めた違和感
現在小学校2年生の次男もーたは、入学前の年長の夏に、軽度知的障害(知的発達症)を伴うASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けました。
次男が0歳の頃は、特に気になる様子はありませんでした。にこにこ笑い、長男よりも寝ぐずりはなく、後追いもする毎日。1歳を過ぎた頃から、「ママ」「パパ」「にいに」などの言葉も出始めました。「もーたくんは何歳?」と聞くと、にっこり笑って、人差し指をたてて、1歳のポーズを取ってくれました。母子手帳の「子育てについて不安や困難を感じることはありますか」の欄は、1歳までずっと「いいえ」に丸をつけていました。
違和感を抱き始めたのは、次男が1歳半を過ぎた頃からです。話していたはずの言葉が全然出なくなったのです。以前よりも笑顔が減り、無気力になることが増えました。絵本を見せて「もーたくん、りんごはどれ?」と聞いても、答えてくれない……。意思の疎通ができにくくなったように感じられ、発達が少し後退したのではないかと不安になりました。
また、この頃からこだわりも見せるようになりました。なぜか赤くて丸いものに執着し、特に赤くて丸いボールはお気に入りで、常にそれを持ち歩かないと怒っていました。母子手帳の「子育てについて不安や困難を感じることはありますか」の欄が、1歳半で初めて「どちらとも言えない」に丸をつけることになりました。ちょうどこの頃、長男の特性を指摘された時期と重なっていたこともあり、この子もきっと何かある――ショックながらも、そう感じました。
次男が0歳の頃は、特に気になる様子はありませんでした。にこにこ笑い、長男よりも寝ぐずりはなく、後追いもする毎日。1歳を過ぎた頃から、「ママ」「パパ」「にいに」などの言葉も出始めました。「もーたくんは何歳?」と聞くと、にっこり笑って、人差し指をたてて、1歳のポーズを取ってくれました。母子手帳の「子育てについて不安や困難を感じることはありますか」の欄は、1歳までずっと「いいえ」に丸をつけていました。
違和感を抱き始めたのは、次男が1歳半を過ぎた頃からです。話していたはずの言葉が全然出なくなったのです。以前よりも笑顔が減り、無気力になることが増えました。絵本を見せて「もーたくん、りんごはどれ?」と聞いても、答えてくれない……。意思の疎通ができにくくなったように感じられ、発達が少し後退したのではないかと不安になりました。
また、この頃からこだわりも見せるようになりました。なぜか赤くて丸いものに執着し、特に赤くて丸いボールはお気に入りで、常にそれを持ち歩かないと怒っていました。母子手帳の「子育てについて不安や困難を感じることはありますか」の欄が、1歳半で初めて「どちらとも言えない」に丸をつけることになりました。ちょうどこの頃、長男の特性を指摘された時期と重なっていたこともあり、この子もきっと何かある――ショックながらも、そう感じました。
1歳半健診で勧められた親子教室
そして迎えた1歳半健診。待ち時間は暴れたり騒いだりはなかったものの、私の膝上で無気力に指しゃぶりをしていました。
問診では、もーたの前に丸・三角・四角の型はめパズルが準備されていました。もーたはこの頃、型はめにハマっていたこともあり、そのパズルはパパパッと完成させていました。
その後保健師さんが、もーたに6つのイラストが描かれたパネルを見せて「ワンワンはどれかな?」と聞きましたが、もーたは、邪魔するなと言わんばかりにそのパネルを押しのけて、型はめパズルを繰り返すばかり。その様子を見た保健師さんが、「言葉も今は出ていないんですよね」と言って少し沈黙した後、「月に1回、言葉の心配なお子さん向けの親子教室があるのですが、参加されますか?」と提案してくださいました。私はすぐにお願いしました。
問診では、もーたの前に丸・三角・四角の型はめパズルが準備されていました。もーたはこの頃、型はめにハマっていたこともあり、そのパズルはパパパッと完成させていました。
その後保健師さんが、もーたに6つのイラストが描かれたパネルを見せて「ワンワンはどれかな?」と聞きましたが、もーたは、邪魔するなと言わんばかりにそのパネルを押しのけて、型はめパズルを繰り返すばかり。その様子を見た保健師さんが、「言葉も今は出ていないんですよね」と言って少し沈黙した後、「月に1回、言葉の心配なお子さん向けの親子教室があるのですが、参加されますか?」と提案してくださいました。私はすぐにお願いしました。
こうして月に1回ある親子教室に通うことができるようになりました。親子教室では、『はたらくくるま』や『やさいのうた』など、分かりやすいイラストを出しながら歌をかけたり、歌に合わせた親子のふれあい遊びをしたりしました。もーたは、にこにこ楽しんで活動に参加してくれて、私もとてもうれしかったです。
親子教室で覚えたふれあい遊びを家でもやってみたり、『はたらくくるま』のうた絵本を買って家でも読んで歌ってみたり、私なりに生活の中にも取り入れていきました。
親子教室で覚えたふれあい遊びを家でもやってみたり、『はたらくくるま』のうた絵本を買って家でも読んで歌ってみたり、私なりに生活の中にも取り入れていきました。
言葉の増えない焦り。見えない重圧に追い詰められて……
しかし、もーたの言葉は増えることなく、2歳が過ぎました。段々と親子教室の頻度が月に一度しかないことに物足りなさを感じました。物足りなさというよりも不安です。もーたは園に通っておらず自宅で見ていたため、もーたの発達すべてが母である私の責任のように感じられたからです。
ある時、私の母に「長男の面倒ばかり見て、もーたのことを放っておきすぎたんじゃないか。だから言葉が出ないんじゃないか。もっと、もーたにも構ってあげないと」と言われました。母に悪気はないし良かれと思って言った言葉だったのでしょうが、私にはめちゃくちゃ刺さりました。私のせいなんだ……と。
ある時、私の母に「長男の面倒ばかり見て、もーたのことを放っておきすぎたんじゃないか。だから言葉が出ないんじゃないか。もっと、もーたにも構ってあげないと」と言われました。母に悪気はないし良かれと思って言った言葉だったのでしょうが、私にはめちゃくちゃ刺さりました。私のせいなんだ……と。
そのつらさや重圧から逃れたい、そんな気持ちもあり、親子教室の頻度を増やす方法、長男のように週に1回通える療育につながる方法がないかを探し始めました。
すると、ママ友から「まだ診断や受給者証がなくても、少人数で発達支援をしてもらえる教室があるらしいよ」と教えてもらいました。長男の件で相談員の方に会う機会があったので、その時に教室のことを聞いてみました。
「そちらは、受給者証がなくても利用でき、少人数で発達支援が受けられる教室です。内容は親子教室と似ていますが、よりお子さんのペースに合わせて関わってもらえますよ。頻度は今は隔週になっていると思います」
これだ!と思い、すぐに相談員の方に教室を利用できないかお願いしました。すると空きがあるか確認してくださり、2週間も経たずに利用開始できることになりました。
すると、ママ友から「まだ診断や受給者証がなくても、少人数で発達支援をしてもらえる教室があるらしいよ」と教えてもらいました。長男の件で相談員の方に会う機会があったので、その時に教室のことを聞いてみました。
「そちらは、受給者証がなくても利用でき、少人数で発達支援が受けられる教室です。内容は親子教室と似ていますが、よりお子さんのペースに合わせて関わってもらえますよ。頻度は今は隔週になっていると思います」
これだ!と思い、すぐに相談員の方に教室を利用できないかお願いしました。すると空きがあるか確認してくださり、2週間も経たずに利用開始できることになりました。
教室は受給者証なしで利用ができたけれど、きっともーたも長男のように受給者証が必要になる……長男の時、病院受診から受給者証取得まで時間がかかったのだから、もーたのために今から動いていこう!
そう決意した私は、受給者証の取得に向けてさっそく行動を起こしました。
今回のコラムはここまでとなりますが、受給者証を取得して療育を開始するまでのお話は、また別コラムで書かせていただきたいと思います。
執筆/みいな
そう決意した私は、受給者証の取得に向けてさっそく行動を起こしました。
今回のコラムはここまでとなりますが、受給者証を取得して療育を開始するまでのお話は、また別コラムで書かせていただきたいと思います。
執筆/みいな
専門家コメント 室伏佑香先生(小児科医)
お子さんの成長を見守る中で、それまでできていたことができなくなったり、言葉が出なくなったりすることは、親御さんにとって大きな不安につながると思います。特に、周囲から発達の変化が見えにくい時期には、「自分の関わり方がいけなかったのではないか」と、ご自身を責めてしまうこともあるかもしれません。
ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの発達の経過はさまざまで、乳児期から特徴がみられる場合もあれば、1歳頃までは順調に発達しているように見え、その後、言葉や社会的なやりとりが減少する「発達の退行」がみられる場合もあります。こうした変化は、保護者の愛情や育て方が原因で起こるものではありません。また、発達の退行が疑われる場合には、ASD以外の原因も含めて、医療機関で相談することが勧められます。
今回のエピソードで印象的だったのは、型はめパズルは上手にできる一方で、言葉による問いかけには応じにくかったという場面です。ASDのお子さんでは、発達の領域によって得意・不得意の差が大きいことがあります。形を見分けたり、決まった手順で物事を進めたりすることは得意でも、言葉の理解やコミュニケーション、興味のある活動から別の活動への切り替えには難しさを感じることがあります。こうした発達のアンバランスさも、ASDの特性を理解するうえで大切な視点の一つです。
また、療育や発達支援は、単に言葉を増やしたり、できないことをできるようにしたりするためだけのものではありません。お子さんが楽しめる遊びや活動を通して、人と関わる喜びやコミュニケーションの経験を積み重ね、その子らしい成長を支えていくことにも大きな意味があります。また、発達支援はお子さんだけでなく、保護者を支える役割も担っています。お子さんの発達を家庭での関わりだけで支えようとすると、保護者の負担はどうしても大きくなってしまいます。専門家と一緒にお子さんの特性を理解し、関わり方を考えたり、不安な気持ちを相談したりできることも、支援につながる大切な意義の一つです。
お母さんが感じていた「自分がもっと頑張らなければ」という思いを、少しずつ「一緒に考えてくれる人がいる」という安心感に変えていけること。そんな支援の輪が、お子さんだけでなく、ご家族にも広がっていくことを願っています。(監修:小児科医 室伏佑香先生)
ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの発達の経過はさまざまで、乳児期から特徴がみられる場合もあれば、1歳頃までは順調に発達しているように見え、その後、言葉や社会的なやりとりが減少する「発達の退行」がみられる場合もあります。こうした変化は、保護者の愛情や育て方が原因で起こるものではありません。また、発達の退行が疑われる場合には、ASD以外の原因も含めて、医療機関で相談することが勧められます。
今回のエピソードで印象的だったのは、型はめパズルは上手にできる一方で、言葉による問いかけには応じにくかったという場面です。ASDのお子さんでは、発達の領域によって得意・不得意の差が大きいことがあります。形を見分けたり、決まった手順で物事を進めたりすることは得意でも、言葉の理解やコミュニケーション、興味のある活動から別の活動への切り替えには難しさを感じることがあります。こうした発達のアンバランスさも、ASDの特性を理解するうえで大切な視点の一つです。
また、療育や発達支援は、単に言葉を増やしたり、できないことをできるようにしたりするためだけのものではありません。お子さんが楽しめる遊びや活動を通して、人と関わる喜びやコミュニケーションの経験を積み重ね、その子らしい成長を支えていくことにも大きな意味があります。また、発達支援はお子さんだけでなく、保護者を支える役割も担っています。お子さんの発達を家庭での関わりだけで支えようとすると、保護者の負担はどうしても大きくなってしまいます。専門家と一緒にお子さんの特性を理解し、関わり方を考えたり、不安な気持ちを相談したりできることも、支援につながる大切な意義の一つです。
お母さんが感じていた「自分がもっと頑張らなければ」という思いを、少しずつ「一緒に考えてくれる人がいる」という安心感に変えていけること。そんな支援の輪が、お子さんだけでなく、ご家族にも広がっていくことを願っています。(監修:小児科医 室伏佑香先生)
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
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