自閉症の息子の学校選び。私が迷わず「特別支援学校」に決めた理由

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息子はこの春に高校生になる知的障害を伴う自閉症です。10年前、小学校を選ぶとき迷わず特別支援学校を選択しました。

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なぜ、特別支援学級を避けたのか、その理由を『1人でできる子が育つ テキトー母さんのすすめ』の著者の立石美津子がお話ししたいと思います。

中度でも迷わず特別支援学校を選んだ

愛の手帳は3度を持っていました。最重度は1度、重度は2度、中度は3度、軽度は4度でしたので真ん中くらい。小学校の入学先は特別支援学級か特別支援学校か微妙でした。

就学時健診の葉書が届きましたが、その通知を無視し迷わず特別支援学校を選びました。ですから自治体の就学時健診にも連れて行きませんでした。

その理由は私自身が教員免許取得のため25年ほど前、特別支援学校で教育実習生として経験があり内容を知っていたことと、それから“何をしても認めてもらえる環境”を息子に与えたかったからです。

保育園では劣等生だった息子

これは保育園の時の様子です。
みんなが座って話を聞く時間に、息子は一人立ち歩いています。
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また、皆が合唱しているときも、一人だけ後ろで読書をしています。
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保育園で息子は劣等生でした。そんな経験をしていたので、小学校では「息子の行動が“問題である”と受け取られない環境」「認められる回数が多い環境」を与えてやりたかったのです。それが特別支援学校でした。


問題行動や、困りごとがある事実は変わらなくても、息子の居場所として些細なことでも褒めてもらえる小学校を選びたかったのです。


当時、息子はオムツが取れたばかり。
手洗い、着替えなどの身辺自立はまだまだ出来ていませんでした。軽度の発達障害児が多い特別支援学級では「○○君は出来ていない」と注意をされる回数が多くなってしまうと思い、特別支援学校を希望しました。

絵本をもとに、考えてみる

「ひとつめのくに」という絵本を読んだことがあります。元々は落語にある話が絵本になったものです。
(あらすじ)
ある男が見世物にしようと“一つ目小僧”を捕まえに行きました。そこで一つ目の子どもをさらおうとします。子どもの悲鳴を聞いた人々が集まってきて男は捕まります。連れて行かれたのは一つ目の国。二つ目の男は見世物にされました。

場所が変われば「見世物にされる」立場が逆転してしまう、ちょっと怖くて面白いお話です。
その頃の息子が置かれていた環境にピッタリ当てはまりました。

少し考えてみましょう。
もし、生涯未婚の人が人口の9割を占めていたら、結婚している人は「わあ、既婚者なんだ」と凄く珍しがられるでしょう。

もし、クラス全員が眼鏡をかけていたら眼鏡をかけていない子どもは苛められるかもしれません。

もし、男性がみんなスカートを履くのが普通だったら、ズボンを履いている男性は珍しがられるかもしれません。

このように自分の価値を周りとの比較してしまうのが人間のような気がします。

環境を変えただけで褒められる回数が増えた

保育園時代は、部屋から逃走する、じっとしていない、手洗いや洋服を着るなどの身辺自立が全く出来ない状態だったので、「出来の悪い子」とされていました。

3月31日から4月1日の一夜にして、脳に劇的な変化が起こり成長する訳もありませんし、問題行動を起こす事実は変わりません。
でも、環境が変わったら、椅子に数秒座っているだけで「凄いね」、給食を残さず食べただけで「偉いね」、靴が自分で履けただけで「○○君頑張っているね」と褒めてもらえました。だから息子はとても喜んで学校に通っていました。

もし、特別支援学級に入れていたら息子には叶わなかったことだと思います。

そして、親の私自身にも変化がありました。

保育園時代は、ウロウロと立ち歩く子どもは息子だけでとても目立っていて親として肩身の狭い思いをしていましたが、入学先の学校ではジッとしていられない子どもも多く、保育園ほど目立つことはありませんでした。

ですから、授業参観に出かけても、私自身が落胆したりイライラすることがなくなりました。同じことをしていても置かれた環境によって大人からの見え方は大分異なってくるものですね。身勝手な自分を反省しました。

3年生でやむをえず特別支援学級に転校

特別支援学校に東京都の指導主事の巡回がありました。主事は学校側に「なぜ、この子がこの学校に在籍しているのか」と問い詰めたそうです。
「お母さまの強い希望で就学時健診を受けずに入学をしてきました」と学校は答えたそうです。

息子は行政側から「小学校3年生から特別支援学級に転校するように」と命じられました。
私はずっと特別支援学校に在籍させたかったのですが、何度も説得され従わざるを得ない状況になりました。

「支援学級から支援学校へ転校するケースはよくあるが、一度支援学校に入学すると支援学級に転校できなくなる」と耳にすることもありますが、どうやら違うようです。

そして小学3年生から支援学級に転校することになりました。
支援学校時代は通学はスクールバスでしたので健常児と交わることもなかったのですが、通学路で「あいつきもい」とか「変な声だしているヤツ」とあからさまに指を指されたことが何度もあります。

「元の学校に戻りたい」と何度も思いました。

転校先で出会った「お客様状態」になってしまう子ども

今は行政は親の希望を優先して受けつけます。
だからこそ、息子も特別支援学校に在籍できたのですが、転校先では「どう選ぶかは親次第なんだな」と感じることがありました。

私が転校した支援学級には、オムツを付けている重度の子どもがいました。けれども、支援学級ではオムツを外す訓練はしていません。私はその子をみて「この子は特別支援学校に入学していればオムツを外してもらえたのになあ」と思っていました。

また、支援級は発達の凸凹の幅も広く、普通級で勉強が難しいグレーゾーンの子どもたちも在籍します。
ですので、算数や国語の授業も当然のように行われます。そんな中で「自分にはチンプンカンプンな授業にお客様状態で参加するなんて、その子は毎日は楽しい学校生活なのだろうか」と感じていました。

普通級を希望される保護者の中には「健常児からの刺激を受けて自分の子どももきっと伸びるはず」と考える方もいるかと思いますが、子どもの能力に適していなければ、必要なきめ細かな支援が受けられず伸び悩むこともあります。普通級の授業についていけず、そこでも「ただ参加しているお客様状態」になってしまっては勿体ない気がします。

最後に

それぞれの家庭の方針があると思いますが、私は「自分は周りに比べて出来ない」という体験を息子にはさせたくはありませんでした。その視点で学校を選びました。

置かれた環境で自信が付いたり、自己否定したりするのが人間です。
ですから「子どもの能力に一番適した成功体験や達成感が得られる教育環境」を与えてやることが親の愛情だと私は思っています。

我が子の幸せを考えたら「進学先を選ぶときの基準は子ども軸」が我が家の方針です。春から高校生、また特別支援学校の高等部に入学する息子です。
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この記事を書いた人の著書

立石流 子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方
立石美津子(著),市川宏伸(監修)
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ケラケラ さん
2017/01/15 23:21
支援学校から支援学級への転校理由が解りました。
拝見した感じですが、本当に立石さんは特別支援学校が大好きなんだなあって思いました。
だから、普通学級に入れる母親に対して良く思えないのですね…仕方ないと思いました。
私は逆に特別支援学校に対して良いイメージがありません。
特別支援学校で酷い体罰があったニュースを見て驚愕し、特別支援学校に入れた保護者に話を聞いたけど、冷たい対応が多いと聞きました。人手不足のためなのか、軽度の子が重度の子の支援をさせられることもあると聞きました。保護者が学校へ出向かなければならない日数が多くて仕事を減らしたと言ってる人もいました。正直、大変そうな上に楽しそうじゃないなと思ったのです。
学校によって違うとも聞いているので、立石さんの息子さんの学校とは違うからかと思います。
それは、特別支援学校へ対しての偏見だと言われるかもしれませんね。

立石美津子 さん
2016/12/13 16:21
大丈夫です。。。なんてお子さんを見ていないのの無責任ですが・・息子の16年間を下記に書きました~良かったら読んでみてくださいね
「子どもも親も幸せになる 発達障害の子の育て方 すばる舎」

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