LD・SLD(限局性学習症)は遺伝する確率があるの?きょうだい、親との関係は?【専門家監修】

ライター:発達障害のキホン
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LD・SLD(限局性学習症)は親から子どもに遺伝するのでしょうか?LD・SLD(限局性学習症)の遺伝確率についてはいまだに明確な解答はなく、さまざまな説はあくまでも推測にすぎません。今回はLD・SLD(限局性学習症)の原因と、遺伝に関するさまざまな説と研究に関する情報をご紹介します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

LD・SLD(限局性学習症)の原因は何?

学習障害は現在、「SLD(限局性学習症)」という診断名となっています。最新版DSM-5-TR以前の診断名である「LD(学習障害)」といわれることが多くあるため、ここでは「LD・SLD(限局性学習症)」と表記します。

LD・SLD(限局性学習症)は、学習における技能に困難さがみられる発達障害の一つです。読むことやその内容を理解することの困難さ、書くことの困難さ、数の理解や計算をすることの困難さなど大きく3つの分類があります。これらの困難が、知的障害(知的発達症)によるものでないこと、経済的・環境的な要因によるものでないこと、神経疾患や視覚・聴覚の障害によるものではないこと、学習における面のみでの困難であること、という場合に限り診断されます。
学校教育が始まる就学期になって診断されることがほとんどですが、就学前の段階で言語の遅れや数えることの困難、書くことに必要である微細運動の困難などがあることでその兆候に気づかれることもあります。
なんらかの遺伝的な要因が、胎児期や出生後の脳や心身が発達する時期にさまざまな環境要因と相互に影響し合ってなんらかの脳機能障害を発現させるという説が主流になっています。

LD・SLD(限局性学習症)の場合、この脳機能障害があるのは中枢神経だと考えられています。中枢神経は脳や脊髄など体の各部を動かす機能があります。つまり、体の中の司令塔です。この脳の部分に異常がある場合、LD・SLD(限局性学習症)などの障害になる場合が多いとされています。

以上がLD・SLD(限局性学習症)の素因と症状を引き起こす原因だと考えられていますが、まだ明確な根拠は実証されていません。どの遺伝子が関わっているかや具体的な環境要因についてもさまざまな説があり、研究が進められている段階ですが、それらの要因も一つに限定されず、人によっても違うと考えられています。

また、かつて言われていたような出生後の親の育て方や教育は原因ではないとされています。

LD・SLD(限局性学習症)は親から子どもへ遺伝するの?確率は?

LD・SLD(限局性学習症)の原因は遺伝的な素因による先天的なの脳の機能異常、中枢神経の機能障害だという説が有力だとされています。遺伝的要因ということは、親から子どもへ遺伝するということでしょうか?

LD・SLD(限局性学習症)について親から子への遺伝に関する確率に関する研究結果は出ていません。双生児研究や家族間研究が盛んに行われていますが数値がまちまちだったり、明確な結果はまだ分かってませんが、なんらかの関連はあると考えられています。

ただし、LD・SLD(限局性学習症)は、特定の遺伝子が親から子へと伝わって発現するのではありません。たとえLD・SLD(限局性学習症)になりやすい体質のもととなるリスク遺伝子を親から受け継いだとしても、それだけでは発症しないうえ、そのほかの様々な環境要因と相互に影響を受けて発症するのです。そのためLD・SLD(限局性学習症)は単純に親から子へ遺伝するわけではないと言えます。親がLD・SLD(限局性学習症)だからといって子どももそうなるとは限りません。また、両親が定型でも子どもがLD・SLD(限局性学習症)の場合もあるのです。

きょうだい(兄弟・姉妹)でLD・SLD(限局性学習症)になる確率は?

きょうだいでLD・SLD(限局性学習症)が発現する確率も現段階では分かっていません。しかし、遺伝的要因がLD・SLD(限局性学習症)の原因ではないとは言い切れないため、確率は0%ではないという見解が多いそうです。

双子のきょうだい間での研究がさかんに行われていますが、発達障害全体については以下のような報告があります。
 遺伝子が完全に一致する一卵性双生児の場合、ふたりとも発達障害をもつ割合は75~85%といわれています。もし、遺伝子のみで発達障害が出現するのであれば、100%の確率になるはずです。
 遺伝子が異なる二卵性双生児の場合は、5~10%と低くなります。
出典:中山和彦、小野和哉/著「図解よくわかる大人の発達障害」ナツメ社2010/10/13
出典:https://www.amazon.co.jp/gp/product/4816349723/ref=as_li_qf_asin_il_tl?i...
これは遺伝子が近いほど発達障害が発現しやすいが、たとえ遺伝子が完全に同じであってもその確率は100%ではないことを示唆しています。きょうだいは遺伝的な要因となりうるリスク遺伝子を体質として共通してもっている可能性があるのでこのような傾向があるものの、その他の環境要因も影響するため必ずしも一致しないのだと考えられます。

LD・SLD(限局性学習症)の兄・姉がいる家庭で弟・妹がLD・SLD(限局性学習症)ではないという場合もたくさんあります。そのため、きょうだいがLD・SLD(限局性学習症)だからといって子どもがLD・SLD(限局性学習症)になるとは決めつけられません。
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