発達障害の療育のベース「応用行動分析学(ABA)」とは?

ライター:発達障害のキホン

発達障害がある子どもの療育においてベースとなる考え方のひとつに、「応用行動分析学(ABA)」があります。行動の前にはきっかけがあり、行動の後には結果があります。そこで、行動する前と後に、効果的な工夫をすることで社会生活上の問題を解決していこうという学問と実践です。その基本概念、研究成果、ABA療育の方法などを紹介します。

目次

応用行動分析学(ABA)とは

応用行動分析学、通称「ABA」(Applied Behavior Analysis)とは、人間の行動を個人と環境の相互作用の枠組みの中で分析し、実社会の諸問題の解決に応用していく理論と実践の体系です。

応用行動分析学の土台には、米国の心理学者スキナー(1904-1990)が創始した、行動分析学という学問が存在します。従来の心理学では、行動を起こす理由をその人自体、つまり個人に求めていたのに対し、行動分析学では、人の行動や心の動きは、個人とそれを囲む環境との相互作用によって生じると考えました。

つまり、その人の気持ちや行動の原因を、周囲の環境との関係のなかで見ながら考えましょうというものです。応用行動分析学(ABA)は、行動分析学の研究により蓄積された知見を、実社会の諸問題の解決に応用しようと試みるなかで生まれました。

応用行動分析の手法は、教育、医療、福祉、看護、リハビリテーションなど幅広い領域で成果を上げ、現在も現場での実践と、研究が進んでいます。発達障害の子どもへの療育にも応用が進んでおり、様々な成果が出ています。

自閉症とABA早期療育の歴史

自閉症のある子どもが抱える社会生活上の問題を解決するために、ABAの手法を用いた早期療育(ABA早期療育)が開発され、これまでさまざまな研究が行われてきました。

1987年、UCLA(カリフォルニア州立大学ロスアンゼルス校)のロバース博士の研究チームは、2-3歳時の自閉症幼児19名に対して、ABAの手法を用いた療育を週40時間実施。その結果、19名中、9名(47%)が知的に正常域(IQ80以上)に達し、付き添いなしで小学校一年次を修了することができました。残り10人のうち、8人は軽度の遅れのある子のクラスに、2人が重度の遅れのある子のクラスに入りました。

この研究は、軽度または中度の知的遅れのある自閉症児の社会的自立のサポートに、ABAの早期療育が有益であることを明らかにしました。その一方、週10時間未満の療育を施したグループでは有意な結果が出ず、短時間での療育では結果を出すことが難しいということも示しました。とはいえ、週数十時間の療育を家庭で行うことは、専門家の確保や経済面でも多くの困難を伴います。

なお、北米やカナダの一部ではABA早期療育の公費化が行われていますが、他の地域での公費化の動きは財政面でも難しいという現状があります。

ABA療育は誰のため?

ABAの手法を用いた療育は、自閉症のある子どもの早期療育のみでなく、学齢期などより大きな子どもにも使われています。ここからは、自閉症のある子どもの早期療育に限らず、どのようなときにこの手法がとられているかなどを紹介します。

子どものため

ABA療育は、社会生活を過ごすことに問題のある子どもたちを対象として行われます。対象としては、自閉症をはじめとする発達障害のある子どもたちも少なくありません。しかし、発達障害があるからといって、その子どもの行動すべてが「問題」とされるわけではありません。「誰にとって」「どんな」問題が起こっているのかを、具体的に考えることが大切です。

ABA療育において、解決すべき問題と捉えられる行動を3つご紹介します。1つ目は、「他者を巻き込み、周囲の活動を制限する」行動、2つ目は、「本人の学習や社会活動への参加を妨げる」行動、3つ目は、「他者や本人に危害や損害を及ぼす」行動です。

①他者や本人に危害や損害を及ぼす行動
ある男の子が「お母さんや女性に抱きつく」という行動をしていたとします。この行動は、小さいころであれば問題にはなりませんが、成長して中学生、高校生の年代になっても続いていた場合はどうでしょうか。ハグの習慣のない日本では、周囲から問題だと捉えられる確率が高くなるでしょう。また、抱きつく対象がクラスメイトや通りすがりの女性のような不特定の対象だった場合、相手にとっても大変な問題になるだけでなく、本人への不利益も大きくなりがちです。このように、他者や本人に危害や損害を及ぼす行動も問題行動と捉えることが出来ます。

②他者を巻き込み、周囲の活動を制限する行動
例えば、ある子どもが、「毎朝、お気に入りの曲を聴くことができないと、かんしゃくを起こす」ことがあったとします。しかし、お気に入りの曲を毎朝聴くこと自体はなんの問題でもなく、好みの話です。一方、「毎朝、お気に入りの曲を聞いている時に、物音がすると、かんしゃくを起こす」ことがあったとします。この場合、他者を巻き込み、周囲の活動を制限することになるため、問題があると捉えられます。

③本人の学習や社会活動への参加を妨げる行動
「積み木遊びが好きで、夢中になる」という積み木あそびへのこだわりがあった場合、それ自体には問題はありませんが、「積み木遊びに夢中になりすぎて、指示が聞こえなくなる、友達から呼ばれても反応できない」ということになると、本人の学習や社会活動への参加を妨げられることになり、本人にとって問題といえるでしょう。

上記にあげたような例を少しでも改善したり緩和したりすることができれば、結果的に子どもの自由度を広げ、周囲を守ることになるでしょう。

親のため

ABAの理解を深めることは、親へのメリットにもつながります。ABAでは、行動の理由に目を向けます。そのプロセスのなかでなぜその子がその行動を起こすのかを理解することができます。

行動の原因がわかり、子どもの気持ちを分かることができると、なぜこんなことをするのか?なんでしてくれないのか?というイライラ、悩みを減らすことができるかもしれません。
次ページ「ABA療育の基本的な考え方」


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