PECSとは?絵カードによるコミュニケーション支援の効果と内容、対象者まとめ

ライター:発達障害のキホン
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PECSとは、コミュニケーションに困難のある人を対象とした、絵カードを用いた代替/拡大コミュニケーションの手法です。この記事ではPECSの対象者や実施方法を中心にご紹介します。また、ABAやTEACCHといった他の療育方法との関係についても説明していきます。

目次

PECSとは?

PECS(Picture Exchange Communication System)とは、絵カードを用いたユニークな代替/拡大コミュニケーション方法です。自閉症や、その他さまざまなコミュニケーション障害のある子どもや成人が、自発的なコミュニケーションを身につけるための学習方法としてつくられました。1985年にアメリカのデラウェア州にて開発され、PECSトレーニングマニュアルはすでに14カ国語で翻訳されていて、75カ国以上で使用されております。

教師、施設職員、家族などでも簡単に作成でき、様々な場面で活用できる点がPECSの大きな特徴です。早期からPECSを使用している幼児が、発語ができるようになったケースもあります。
参考:PECSの概要|Pyramid Educational Consultants of Japan
https://pecs-japan.com/%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0/pecs%E3%81%AE%E6%A6%82%E8%A6%81/

PECSはどんな人に必要?

PECSによる支援の対象となるのは、発語や他者とのコミュニケーションに困難がある人です。それは、必ずしも言葉を話せない人だけではありません。

たとえば、
・発語はできるけれど、誰もいない部屋で話すなど、コミュニケ―ションが他者に向いていない
・何かを聞かれたら話せるが、自分から他人に話しかけることはない
などのケースも、PECSによる支援の対象となります。

このような人たちは、PECSによって対人接近や自発的なコミュニケーションを習得することができます。すなわち、PECSとは発語できない人にとっては代替コミュニケーションの方法であり、言葉を話せる人にとっては、拡大コミュニケーションのシステムであるといえます。

参考までに、以下のチェックリストもご覧ください。質問項目を以下の番号順でチェックしていき、「いいえ」がつくかどうかでPECSの必要性を判断することができます。

①その人は何らかのコミュニケーションができますか?
②そのコミュニケーションのやり方は初めて会う人にも伝わりますか?
③その人は自分からコミュニケーションを始めますか?
④その人の言葉の使い方は適切ですか?どのように言葉をつなげるのか?
⑤その人は適切な語彙数を持っていますか?
参考:フローチャート|Pyramid Educational Consultants of Japan
https://pecs-japan.com/download/Level%201%20PECS%20Flow%20Chart%20in%20Japanese%202018.pdf

PECSの構成

PECSは、6つの指導段階で構成されています。絵カードを用いてコミュニケーションを自発的、持続的に行うことから、対象を弁別し、文章や言葉によって要求することへと進んでいき、最終的には質問に対して自発的なコメントを促すといった流れでコミュニケーションを学んでいきます。

1. コミュニケーションの方法

まず、コミュニケーションパートナー(療育者)が、対象者が欲するアイテムの絵カードを1枚提示して始めます。対象者は、欲しいものを交換するために絵カードを拾い上げ、コミュニケーションパートナーに渡します。コミュニケーションパートナーは、そのアイテムの名前を言いながらアイテムを渡します。このフェイズを教えるためには、2人の支援者(コミュニケーションパートナーと身体プロンプター)が必要となります。

このトレーニングを行う際は、アイテムが子どもにとって本当に欲しいものになっているかどうかがポイントとなります。また、子どもが自発的に行動をしてから交換をするという点に気をつける必要があります。

このフェーズでは、コミュニケーションを自発的に行うことを目的としているため、この時点で絵カードが何を意味しているのかを理解したり、区別できていなくても大丈夫です。

2. 距離と持続性

このフェーズでは、フェーズ1で学んだ内容を般化(どんな場面でも応用できる状態に)することを目指します。対象者は、いろんな場所、距離にあるコミュニケーションブックやコミュニケーターに対して、自ら移動して絵カードを交換しに行きます。

さらに、支援者は、持続的にコミュニケーションするよう対象者を指導します。このフェーズにおいても、絵の理解や区別はできていなくて結構です。

3. 絵カードの弁別

フェーズ3では、対象者が好みのものを弁別(区別)し、選択できるようになることを目標とします。

弁別トレーニングは通常、マジックテープのついたバインダーで作ったコミュニケーションブックを使用し、2つ以上の絵カードから、好みのものとそうでないものを弁別することから始めます。その後、好みのアイテムを違う絵柄でも弁別できるように、段階を進めていきます。

4. 文構成

このフェーズでは、好みのアイテムの絵カードと「ください」と書かれたカードをつなげて、簡単な文をつくることを学びます。はじめは「ください」と書かれたカードをあらかじめコミュニケーションブックに貼り付けておき、そこに欲しいアイテムの絵カードを置くところから始めます。

次に絵カードと「ください」と書かれたカードの両方を貼ること、文カードを指さすことへと段階的に指導していきます。この時点で、コミュニケーターは文カードを読み返して、ある程度発語を促します。ただし、強制しないように注意が必要です。

5. 応答による要求

ここでは、コミュニケーターの「何が欲しいですか?」という質問に対して、PECSを用いて応答できるようになることを目指します。

はじめは、質問をする際に文カードを指さす身振りを行いますが、段階的にこれを外していき、様々な質問に答えられるようにしていきます。

6. コメント

最後は、周囲で起きた出来事についてコメントできるようになることを目指します。

コミュニケーターが行う「何が見えますか?」「それは何ですか?」というような質問に対して、対象者は「見えます」「聞こえます」「です」などの述語カードを使って応答を行うところから、段階的に進めていきます。
参考:教育へのピラミッドアプローチ|Pyramid Educational Consultants of Japan
https://pecs-japan.com/%E6%95%99%E8%82%B2%E3%81%B8%E3%81%AE%E3%83%94%E3%83%A9%E3%83%9F%E3%83%83%E3%83%89%E3%82%A2%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%81/
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発達障害のある子どもへの療育の内容と効果、療育を受けられる施設を解説【専門家監修】

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