不安障害(不安症)とは?診断基準・種類・治療法・相談先・周囲の対応法まとめ【精神科医監修】
不安障害(不安症)とは、ある状況や具体的なものに対して、過剰に不安や恐怖心を感じ、それにより様々な影響が身体と精神に現れ、社会生活を送ることに支障が出てしまう疾患です。性格の問題、気持の問題と決めつけず、病院へ相談に行くことが大切です。このコラムでは、不安障害の種類、相談先、周囲の対応をご紹介します。
滋賀医科大学 精神医学講座 助教
NPO法人ストップいじめナビ 特任研究員
不安障害(不安症)とは
生活に支障が出るほどの過剰な不安を感じる疾患
不安障害は、近年では「不安症」と表記されることも多くなっていますが、この記事では「不安障害」という名称をもちいて解説します。
不安や恐怖は、人間誰しもが感じる自然な感覚です。不安、恐怖を感じて、体が緊張したり、用心深くなったりすることは、危機に対する準備とも言え、人間が安全を守る上で必要な身体反応です。
しかし、不安や恐怖を、その対象に釣り合わないほど過剰に大きく感じ、それによって現れた身体的、精神的苦痛が日常生活を送れないほどのものである場合、不安障害の疑いがあります。
不安障害(不安症)の症状
不安障害によって生じる症状も人によって様々です。精神的な症状としては、憂うつな気分、不安感、意欲や集中力の低下、イライラ感などが、身体的な症状としては、頭痛、動悸、汗が異常に出るなどが挙げられます。
不安障害は、不安、恐怖の対象と症状が様々で漠然としているため、疾患とは認識されづらく、「性格の問題だ」と片付けられてしまうことが多い疾患です。
特に、10代という人格形成期に不安障害を発症すると、慢性化しやすく、本人も周囲の人々もそれが性格の一部であるととらえる傾向が強いです。疾患であるという認識ができず、医療機関の受診に至らないと、重症化を招く恐れがあります。不安障害は早期発見と対処が重要です。
不安障害の種類と症状
不安障害は精神疾患のひとつであり、不安障害の中にパニック障害や広場恐怖症などといった疾患があるという位置づけです。
限局性恐怖症
高い所が怖い高所恐怖症や、犬や虫といった生き物、注射針や血液など、特定のものや状況に出くわすと、毎回、著しく不安、恐怖を感じ、社会的、職業的学業的な困難がおこります。特に子どもでは、泣く、癇癪(かんしゃく)を起こす、凍りつくなどの症状が現れます。ときどきパニック発作が起こることもあります(パニック発作については後述します)。
◇不安恐怖の対象
局所性恐怖症の不安、恐怖の対象は以下の5つに分けられます。人によって複数のもの(クモと高所など)に不安、恐怖を感じることがあります。
・動物…例:クモ、虫、犬
・自然環境…例:高所、嵐、水
・血液・注射・負傷…例:注射、医療行為全般
・状況…例:飛行機、エレベーター、閉所
・その他…例:子どもにとっての大きな音
◇原因
この疾患は明確な原因はまだ分かっていません。心的外傷出来事などがあげられますが、限局性恐怖症を発症している本人がその出来事を覚えていないこともあるなど、一人ひとりの明確な原因が特定できないことも多いようです。
社交不安症/社交不安障害
自身の行動への他者の反応が気になり、他者の注目を浴びる社交場面や他者の前で飲んだり食べたりすることに強い不安感、恐怖を感じます。強い不安、恐怖を感じると、赤面、震え、発汗、言葉に詰まる、凝視などの症状が現れます。そのような不安感や恐怖心、症状により社会的、学業的、職業的に日常生活を送ることが難しくなります。
◇不安恐怖の対象
他者の反応に不安や恐怖を感じます。自分の振る舞いや行動が他者に否定的な評価を受けるのではないか、当惑させられるのではないか、他者に拒絶されるのではないか、他者に迷惑をかけるのではないかと不安を感じます。
◇原因
アメリカ精神医学会のDSM-5によると、神経質・心配性といった性格も一因になります。このような性格は、性格自体が遺伝する可能性が高いと言われています。親族に社交不安症を発症している人がいる人は、いない人より、発症の機会が2~6倍高いという研究結果が出ています。
このような性格の人が、失敗や、恥ずかしい体験をすることが発症の原因になることが少なくありません。このような経験が大きなストレスとなり、過剰に他者の反応を気にするようなる可能性があります。
◇選択性緘黙との違い
人前で話せなくなる点は選択性緘黙と似ています。ですが、不安、恐怖の対象が明らかに違います。選択性緘黙を発症している人は、社交不安を発症している人と違い、他者の反応が気になる場面であっても話す必要のない場所では恐怖を感じません。しかし、選択性緘黙と社交不安が併発することはあります。
◇対人恐怖症との関連
対人恐怖症とは、社会的交流のなかで、自己の外見、行動が他者にどう思われているか不快に思われていないだろうか、評価がさがってないだろうかと過剰に不安、恐怖に思い、社会的交流の場を避けるといった症状が出るものです。
日本の場合「他の人の目」「他者からの評価」を気にしやすい文化背景が原因となっているのではないかといわれています。アメリカの精神疾患概念であるDSM-5の社交不安症/社交不安障害と対人恐怖症がほぼ同じなのかどうか、今も議論されています。
パニック症/パニック障害
◇症状
発作の主な症状として次のようなものがあります。
・息切れ感または息苦しさ、窒息感
・胸痛または胸部の不快感や吐き気
・動悸や心拍数の増加
・震える
・汗をかく
・腹痛、腹部の不快感、下痢
・めまい、ふらつき、気が遠くなる感じ
・寒気またはほてり
・感覚の麻痺、もしくはうずき感
・傍観者であるような感覚、現実感がなくなるような感覚
・自分が自分でなくなるような感じ、抑止力を失うことへの恐怖
・死に対する恐怖心
など
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全般不安症/全般性不安障害
仕事への責任やお金、健康、家庭など、さまざまな出来事または活動に対する過剰な不安と心配があり、以下のうち3つ以上の症状を伴います。(子どもの場合は一項目以上当てはまります)
・落ち着きがなく、緊張感と神経の高ぶりを感じる
・疲労しやすい
・集中力が切れやすく、ぼーっとすることが多い
・怒りっぽい
・筋肉が緊張する
・睡眠障害
◇不安恐怖の対象
不安、恐怖の対象は、多数の出来事、または活動です。具体的に仕事への責任、学業、本人の健康や家計、家族の健康、子どもへの災難、といった生活の些細な出来事に対して常に心配する傾向があります。本人の有能さやパフォーマンスの質に関して過剰に心配する傾向もあります。
◇原因
全般不安障害を発症している人の多数は他の不安障害も併発しています。そのため、そのほかの不安障害の原因に当てはまる性格的気質は、この疾患の原因になると考えられています。例えば、否定的思考、危険回避などです。そして小児期の逆境と親の過保護は、全般性不安障害に関連するといわれていますが、必ずこれらを経験しているわけではありません。
発症した人の多くは大きなストレスが原因であると言われています。仕事のストレスや学校でのストレスが少しずつ蓄積されて、発症するケースが多いです。
広場恐怖症
広場恐怖症を発症している人は、公共交通機関や広い場所などといった特定の状況下で何か恐ろしいことが起こるのではないか、そしてそれを回避できないのではないかと不安感、恐怖心を感じます。そのことにより社会的、学業的、職業的に日常生活を送ることが難しくなったり、パニック発作を起こしたりすることがあります。パニック症を併発していることも多いです。
そして、重度である場合、恐怖や不安を回避するために、家にこもり出ることができなくなります。一方で軽度な場合、パートナーや友人、専門家が一緒であるとその不安、恐怖に立ち向かえることもあります。
◇不安恐怖の対象:以下のうち2つ以上に不安感、恐怖心を抱きます。
・公共交通機関…例:自動車、バス、列車、船、飛行機
・広い場所…例:駐車場、市場、橋
・囲まれているところ…例:店、劇場、映画館
・列に並ぶ、または群衆
・家の外に一人でいる
◇原因
広場恐怖症を発症している人の大多数は他の不安障害も併発しています。そのため、そのほかの不安障害の原因に当てはまる性格的気質は、この疾患の原因になると考えられています。例えば、否定的思考、心配症などです。また、小児期の環境もこの疾患の要因になるとされていますが、原因は一人ひとり異なり、また明確に特定できないことも多いようです。
◇限局性恐怖症との違い
限局性恐怖症の場合は、不安、恐怖の対象自体に不安感と恐怖心を感じます。それに対して、広場恐怖症は、何か不吉な出来事がその不安、恐怖を感じる状況下で発生し、それを回避できないのではないかと感じます。これが違いです。
不安分離症/不安分離障害
症状は主に5つあります。
・愛着のある人から離れることに対して過剰に心配します。例えば、その人が病気になるのではないか、災害に巻き込まれ死んでしまうのではないか。また本人が迷子になる、誘拐されるなどして愛着のある人ともう一生会えないかもしれない、と過剰に心配になったりします。
・愛着のある人から離れることへの不安・恐怖で、移動できなくなります。例えば、家から離れ学校や仕事に行くことを拒んだり、他の場所に一人で出かけたりすることができなくなります。
・一人で家にいる、愛着のある人がいない場所に一人でいることにたいして過剰な恐怖を感じ、その状況に置かれることを拒むようになります。特に子どもの場合、つきまとい行動(親の影のように常にすぐそばにいる)を行うことがあります。
・愛着のある人なしで就寝することを拒み、旅行や友達の家に泊まりに行くことができなくなります。
上記の症状により、社会的、学業的、職業的に日常生活を送ることが難しくなります。
◇不安、恐怖の対象
対象は愛着のある人、例えば親、パートナー、重要人物との別れです。別れることを予期し、過剰に恐怖心、不安感を抱きます。
◇原因
後で述べる「不安障害を発症しやすい特徴」のある人が、何かを失った経験がストレスとなり発症することが多いです。身内またはペットの死、転校、両親の離婚、移住、転校、20代前後では親からの独立や恋愛関係の終始などがストレスとなりえます。
アメリカ精神医学会のDSM-5によると、ストレス以外にも遺伝的な要因もあるのではないかといわれています。DNAが同じ一卵性双生児が生まれた場合、この疾患が双生児両方で発症する確率は73%です。そして女子ではさらに高い確率であるといわれています。
選択性緘黙/場面緘黙症
◇症状
他の状況では話すことができるにも関わらず、話すことが期待される特定の状況において一貫して話すことができなくなります。人によっては、家の中で家族や親しい友人とは話せるのに、学校に行くと話すことができなくなることがあります。そのような症状が一カ月以上続き、学業上、職業上の成績や対人コミュニケーションに悪い影響を与えてしまいます。
◇不安恐怖の対象
選択性緘黙の不安、恐怖の対象は、社会的交流、人と話すこと、人前で話すことです。
◇原因
この疾患の明確な原因はまだ分かっていません。原因の一つに考えられているのが性格です。過度な内気、否定的思考、強迫的傾向はこの疾患の原因となる可能性があります。さらに、親が管理的であったり過保護であったりする子どもは、そうでない子どもよりこの疾患を発症しやすいという研究もあります。
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不安障害を発症しやすい人の特徴
・感受性が高い
・自己評価が低く、自信がない
・周囲の人を気にしすぎる
・理想主義
・完璧主義
このような特性を持っている人は不安・緊張状態になりやすく、不安障害を発症しやすいと言われています。一方、発症した結果としてこのような特性が出たり、強まったりすることもあるとも考えられます。
他者の反応が気になる傾向にあり、病院へ行きづらさを感じたり、病院へ行くこと自体を拒否してしまったりする人もいるようですが、治療を進めることで特性が和らぐこともあります。
不安障害の相談先と治療先
病院へ行くことに不安や恐怖を感じる方は、電話で相談から始めると良いでしょう。全国保健福祉センターでは相談ダイヤルが設置されており、時間は自治体によりますが、電話で相談できる環境が整っています。
全国精神保健福祉センター
当事者活動の支援や組織化の手伝い、精神保健福祉に関する相談をすることができます。精神科医、臨床心理技術者、精神科ソーシャルワーカー、作業療法士、保健師、看護師などの専門職が配置されています。相談については、予約制、健康保険の適応があるところが殆どです。詳細は、それぞれのセンターにお問い合わせ下さい。
以下はセンターの連絡先一覧です。
精神科
心療内科
精神科、心療内科どちらに行ったらいいか迷う方もいらっしゃるかもしれませんが、不安障害の場合、身体にも心にも症状が出るので、どちらの診療科でも治療対象となります。
不安障害の治療
薬物療法
◇主に使われる薬
・抗うつ剤(SSRI):抗うつ剤はうつ病への治療薬というだけでなく不安や恐怖の改善のためにも使用されています。不安や恐怖にかかわる脳内物質であるセロトニンを増やし、恐怖や不安を軽減します。
・抗不安薬(安定剤):上記の抗うつ剤と違い、即効性があります。ですが、長期服用すると依存性と耐性が現れます。
・漢方薬:漢方の中でも不安障害に効く薬がありますが、個人差が大きいです。なんらかの理由で上記の抗うつ剤が使えない場合などに用いられることが多いです。
◇治療の流れ
初めは抗うつ剤と抗不安薬を両方服用しながら、抗うつ剤を徐々に増やし、不安、恐怖心をなくします。抗うつ剤が十分な量まで増えたら、次に徐々に抗うつ剤を増やし、抗不安薬を減らします。これは抗うつ剤の効果が現れるのに時間がかかるためです。そして、完全に抗不安薬をなくします。そこから約一年、抗うつ剤を服用しながら、不安や恐怖の無い状態に慣れていきます。
さらに詳しい薬物療法については比較的分かりやすく記載されている以下のサイトなどを参考にしてみてください。
精神療法
強いストレスにより、私たちの認知はゆがめられてしまうことがあります。それにより過度に不安感や恐怖心を抱き疾患を発症している可能性があります。認知行動療法ではストレスの原因である物や状況への捉え方を変えることでストレスを軽減していきます。
認知行動療法(CBT)とは?メカニズムや形式、体験談まとめ【専門家監修】
曝露療法は、不安障害を発症している人が当然ながら避けようとする不安、恐怖に慣れて克服しようとする方法です。自ら、または家族や医師と一緒にその不安や恐怖を感じる場所やものに足を踏み入れ自分をさらしていきます。初めは大きなパニック発作や不安感、恐怖心を伴いますが、一歩踏み入れることができたという事実が自信につながり、徐々に自信を大きくし克服していきます。
森田療法は、精神科医、森田正馬(1874~1938)によって創始された神経症に対する精神療法です。森田療法は、対人恐怖や広場恐怖などの恐怖症、強迫神経症、不安神経症(パニック障害、全般性不安障害)、心気症などが主たる治療の対象であり、これまでに高い治療効果をあげてきています。人間が本来もっている人間らしい欲望や不安、感情のメカニズムなどを医学的に解明―その理論にもとづき、「あるがまま」の心を育てることによって神経症をのりこえていくのが、森田療法です。
森田療法とは?不安障害との関連や具体的な治療法(入院・通院)「あるがまま」という考え方について解説!
日常生活でできること
生活習慣の見直し
まず、決まった時間に寝起きし生活リズムを整えましょう。十分な睡眠は不安感や恐怖心を軽減させます。
次に食生活を改善しましょう。脳へ十分、必要な栄養を送ることで不安感の高まりは軽減します。特に過度なアルコールは控えましょう。
リラックス法を学ぶ
こうしたリラックス法は、具体的に自立訓練法や呼吸法があります。本やDVDを用いて自分で習得することもできます。症状があるときだけでなく、定期的に行うのがよいでしょう。
不安障害のある人のために、周囲の人はどう対応すべき?
以下は、不安障害を発症している人と接する際、家族やパートナーが気をつけることです。
・気持ちの問題と性格だと決めつけない
・「頑張れ」と言わない
・辛い時は休める環境を整え、安心感を与える
・できないことがあっても責めない
まとめ
様々な症状と疾患がある分、治療法も多岐にわたります。性格の問題、気持の問題と決めつけずに精神科、心療内科などの専門家に相談し、自分に合った治療法を探していただければ幸いです。
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