保護者の方から、相談がありました。高校二年生の息子さんが、友人とのトラブルをきっかけに学校へ行けなくなってしまったというのです。家にこもりきりというわけではないものの、登校できるのは部活動の時間だけ。本人の話を聞いてもらえないか、というご依頼でした。
事前に聞いていた話の中で、少し気になったことがありました。彼は部活動には参加していて、修学旅行にも行きたいと思っている。学校そのものが嫌いになったわけでも、友達を嫌いになったわけでもないのではないか。そう感じたのです。
実際に話を聞いてみると、彼は学校に行きたいと思っていました。友達のことも嫌いではない。ただ、周りに気を使いすぎて苦しくなり、どう振る舞えばいいのかわからなくなっていたのです。
そこで南先生が意識したのは、「先生」として向き合うのではなく、少し年上の先輩のように話を聞くことでした。部活動の練習が終わったあと、部室や帰り道で何気なく話すような空気をつくる。構えずにいられる場があれば、本音がこぼれてくることがあります。
彼の気持ちが言葉にならないときは、「こういうことなのかな」とそっと返してみる。話を聞きながら、本人が自分の気持ちを整理できるようにする。そして、「学校へ行こう」とこちらから促すことはしませんでした。
正論が、いつもその人を助けるとは限らない。
話の終わりには、学校に行けない日も、家で過ごしているときに昼食のあと少し話すだけでもいい、と伝えました。「話したくなったら、いつでも連絡しておいで」。そのくらいの余白を残して、面談を終えました。
翌日、お母さんから連絡がありました。彼は学校へ行けたそうです。一度話しただけで、悩みがすべて解決したわけではないでしょう。それでも、気持ちを整理する時間を持てたことで、「行ってみようかな」と思えるところまで来られたのかもしれません。
もうひとつ大きかったのは、ひとりで抱え込まなくていいと感じられたことだと思います。親以外にも話を聞いてくれる人がいる。そのことが、彼の心を少し軽くしたのではないでしょうか。
正論や正義は、ときに武器になります。相手を思って差し出した言葉でも、受け取る準備ができていない人には、追い詰めるものになってしまうことがあります。だからこそ、まずは答えを渡すのではなく、一緒に答えを探すことが大切です。
支えるとは、相手の代わりに答えを出すことではなく、その人が自分の気持ちを見つけられる時間をつくることなのかもしれない。
小さな子どもから大人まで、誰かと向き合うときに必要なのは、すぐに正しい方向へ導くことだけではありません。話せる空気をつくり、気持ちに耳を傾け、本人が次の一歩を選べるようにそばにいる。あの日の対話は、その一歩が生まれる場所をつくることの大切さを教えてくれました。
事前に聞いていた話の中で、少し気になったことがありました。彼は部活動には参加していて、修学旅行にも行きたいと思っている。学校そのものが嫌いになったわけでも、友達を嫌いになったわけでもないのではないか。そう感じたのです。
実際に話を聞いてみると、彼は学校に行きたいと思っていました。友達のことも嫌いではない。ただ、周りに気を使いすぎて苦しくなり、どう振る舞えばいいのかわからなくなっていたのです。
そこで南先生が意識したのは、「先生」として向き合うのではなく、少し年上の先輩のように話を聞くことでした。部活動の練習が終わったあと、部室や帰り道で何気なく話すような空気をつくる。構えずにいられる場があれば、本音がこぼれてくることがあります。
彼の気持ちが言葉にならないときは、「こういうことなのかな」とそっと返してみる。話を聞きながら、本人が自分の気持ちを整理できるようにする。そして、「学校へ行こう」とこちらから促すことはしませんでした。
正論が、いつもその人を助けるとは限らない。
話の終わりには、学校に行けない日も、家で過ごしているときに昼食のあと少し話すだけでもいい、と伝えました。「話したくなったら、いつでも連絡しておいで」。そのくらいの余白を残して、面談を終えました。
翌日、お母さんから連絡がありました。彼は学校へ行けたそうです。一度話しただけで、悩みがすべて解決したわけではないでしょう。それでも、気持ちを整理する時間を持てたことで、「行ってみようかな」と思えるところまで来られたのかもしれません。
もうひとつ大きかったのは、ひとりで抱え込まなくていいと感じられたことだと思います。親以外にも話を聞いてくれる人がいる。そのことが、彼の心を少し軽くしたのではないでしょうか。
正論や正義は、ときに武器になります。相手を思って差し出した言葉でも、受け取る準備ができていない人には、追い詰めるものになってしまうことがあります。だからこそ、まずは答えを渡すのではなく、一緒に答えを探すことが大切です。
支えるとは、相手の代わりに答えを出すことではなく、その人が自分の気持ちを見つけられる時間をつくることなのかもしれない。
小さな子どもから大人まで、誰かと向き合うときに必要なのは、すぐに正しい方向へ導くことだけではありません。話せる空気をつくり、気持ちに耳を傾け、本人が次の一歩を選べるようにそばにいる。あの日の対話は、その一歩が生まれる場所をつくることの大切さを教えてくれました。