知的障害(知的発達症)は遺伝する可能性があるの?きょうだい、父親、母親との関係は?男女で発現率は違う?【専門家監修】

ライター:医師・専門家監修|発達障害・支援のキホン
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出典 : http://amanaimages.com/info/infoRF.aspx?SearchKey=11015203940

きょうだいで知的障害(知的発達症)があったり、知的障害(知的発達症)のある家族が多い家系もありますが、親から子へ知的障害(知的発達症)に遺伝する可能性はあるのでしょうか?今回は知的障害(知的発達症)の原因や遺伝、検査方法などとあわせてご紹介します。

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監修: 井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
ABA(応用行動分析学)をベースにエビデンスに基づく臨床心理学を目指し活動。対象は主に自閉スペクトラム症や発達障害のある人たちとその家族で、支援のためのさまざまなプログラムを開発している。
目次

知的障害(知的発達症)の原因は?

知的障害とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を指します。単に物事を理解し考えるといった知的機能(IQ)の低下だけではなく、社会生活に関わる適応機能にも障害があることで、自立して生活していくことが困難になります。

知的障害は発達期の間に発症すると定義され、後天的な事故や認知症などの病気で知能が低下した場合は含みません。この発達期とはおおむね18歳までを指しますが、知的障害は障害の状態を指すため、障害が現れる道筋は人によってさまざまで、具体的な発現時期も人により異なります。

知的障害の原因は十分には解明されていない状況ですが、主な要因は病理的要因・生理的要因・環境要因の3つの面から分類できると考えられています。

病理的要因は、病気や外傷など脳障害をきたす疾患で、これらの合併症として知的障害が一緒に起きることがあります。この中にはてんかんや脳性まひなどのほか、ダウン症などの染色体異常による疾病も含まれます。

一方、特に疾病などがなくたまたま知能水準が知的障害の範囲内にあるといった場合、生理的要因と呼ばれます。

環境要因は、直接の原因となるわけではありませんが、脳が発達する時期に不適切な環境であることで知的障害の症状が悪化したり、脳の発達が遅れる原因になったりすると言われています。

上記のように知的障害の原因は一つではなくさまざまな要因が考えられますが、人によってもさまざまです。脳障害を引き起こす疾患や要因すべてが知的障害の原因となりうると考えられ、また知的障害を発症する道筋も人によります。
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知的障害(知的発達症)を引き起こす遺伝的要因はあるの?

知的障害を引き起こす病理的要因の中には、遺伝的要因による遺伝子や染色体の異常による疾患もあります。

染色体異常が原因のダウン症や、遺伝的要因と環境要因の相互影響によって発現すると言われているASD(自閉スペクトラム症)の人の中には、知的障害(知的発達症)が併存する場合も少なくありません。

近年、遺伝子研究が進み、2006年には脆弱X症候群(FXS)と呼ばれる遺伝性の知的障害があることがわかりました。2014年には知的障害の原因となる遺伝子変異についての研究結果も発表されました。

しかしながら、知的障害の原因は遺伝的要因以外のものも数多くあります。また、遺伝のメカニズムは複雑で、遺伝的要因といわれる上記のような疾患でも、必ずしも知的障害を発症するとは限らないのです。また遺伝的要因の中には突然の遺伝子変異によるものがほとんどであるという研究もあります。
脆弱X症候群|小児慢性特定疾病情報センター
https://www.shouman.jp/disease/details/11_10_030/
神経精神疾患を引き起こす遺伝子変異|Nature Asia
https://www.natureasia.com/ja-jp/research/highlight/9452

知的障害(知的発達症)は親から子どもへ遺伝するの?確率は?

知的障害(知的発達症)の要因の中には、まれに親から子に遺伝するメンデル型遺伝疾患と呼ばれるタイプの疾患もあります。たとえば、脆弱X症候群はX染色体上の一遺伝子の突然変異によって起こります。その突然変異による遺伝情報は親から子どもへと何代も受け継がれると言われています。

しかしながら、知的障害(知的発達症)にはさまざまな要因があり、遺伝だけが全てではありません。親から子どもへ遺伝するかどうかという確率に関しても今のところ確かなデータがありません。

遺伝子は父親や母親、祖父母などから引き継がれるものもあれば、突然変異によって生じるものもあります。親や家族に知的障害(知的発達症)があるからといって必ずしも遺伝するとは限りません。実際に知的障害(知的発達症)のある両親から障害のない子どもが産まれるケースや、知的障害(知的発達症)のない両親から障害のある子どもが産まれるケースも報告されています。前述の脆弱X症候群に関しても遺伝情報の保因者であっても知的障害(知的発達症)を発症しない場合もあるのです。

そのため、遺伝の確率が高い・低いにかかわらず、知的障害(知的発達症)を発症する可能性はどの家族でも十分にあると言えるでしょう。
Many Low IQs Are Just Bad Luck
https://www.livescience.com/23620-mutations-intellectual-disability-cause.html
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きょうだいで知的障害(知的発達症)になる確率は?

知的障害(知的発達症)と言ってもさまざまなレベル、合併症などがあるため、きょうだいで知的障害(知的発達症)になる確率に関しても今のところ十分には解明されていません。きょうだいで知的障害(知的発達症)になる家族もいれば、知的障害(知的発達症)のあるのが兄姉だけ・弟妹だけという家族もいますし、親が知的障害(知的発達症)であっても知的障害(知的発達症)のない子どもが産まれる家族もいます。

上記でお伝えした遺伝性の脆弱X症候群(FXS)のように遺伝性の疾患もあるため、必ずしもきょうだいそろって遺伝しないとは言い切れません。しかしながら、生まれたその人に知的障害(知的発達症)が発現するかどうかは、分からないのです。
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知的障害(知的発達症)は男女で発現率が違う?

知的障害(知的発達症)の男女発現比率は1.5:1とされ、男性の発現率が高い傾向にあります。また、脆弱X症候群(FXS)では男性が約1500人に1人、女性が約2500人に1人発現し、知的障害(知的発達症)の症状も男性が重度で女性は軽度と言われています。しかしながら上記でも述べたように脆弱X症候群は大規模な研究調査が行なわれていませんし、日本人男性の脆弱X症候群は1万人に1人とも言われ、日本人だけで考えると発現率も変わってきます。

他に知的障害(知的発達症)はダウン症などの染色体異常が原因となる可能性もあります。ダウン症の場合、男女の発現率は男性がやや多いもののほぼ差はないとされています。男性が多い理由としてはさまざまありますが、そもそも出生比率自体、男性が多いためという考え方もあります。女性でも知的障害(知的発達症)となる可能性ありますし、知的障害(知的発達症)となる原因もさまざまです。一概に知的障害(知的発達症)は男性が多いとは言えないでしょう。
厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト「知的障害(精神遅滞)」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-004.html
内閣府「 平成26年版 障害者白書(概要) 第3章 障害者の状況(基本的統計より)」
https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/h26hakusho/gaiyou/h03.html
参考:堀口 寿広ら「脆弱X症候群に対する診断的検査法の指針と疫学的調査の必要性」
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ojjscn1969/37/4/37_4_301/_pdf/-char/ja

知的障害(知的発達症)を検査する方法はあるの?

妊娠中の段階で子どもが知的障害(知的発達症)であるかを検査する方法はありません。出産後、子どもが成長してから障害に気付くことがほとんどです。

ダウン症などの染色体異常に関しては、出生前診断も可能ですが、ダウン症だからといって必ずしも知的障害(知的発達症)があるとは限りません。出生前診断は現在受診できる病院や受診条件が限られています。もし受ける場合は、今後のことについて十分に話し合ってから決めることをおすすめします。

出生後、知的障害(知的発達症)を検査する方法としては知能検査や発達検査を用います。児童相談所などでは無料で知能検査や発達検査を行なえる場合がほとんどです。子どもが幼い場合には保護者である親が質問に回答したりします。その他、ダウン症やてんかんなどの障害の併存が考えられる場合は、他にも検査が用いられることもあります。

まとめ

今回、知的障害(知的発達症)の遺伝性や男女の発現比率についてお伝えしました。知的障害(知的発達症)にはさまざまな要因があり、まだ解明されていないことも多くあります。遺伝性の脆弱X症候群(FXS)も最近になって研究が始まったばかりです。知的障害の原因や確率を知りたい方もおられるとは思いますが、知的障害(知的発達症)の子どもが産まれた場合でも向き合っていけるよう準備しておくことも大切です。

最近では障害のある人に対する、社会の支援体制も整備が進んできています。まだまだ支援が行き届いていない部分もあるかもしれませんが、支援を受けながら子育てすることもできますし、知的障害(知的発達症)の子どもがいる先輩パパ・ママも多くいます。知的障害(知的発達症)について心配な場合は、遺伝外来や支援センターなどに相談してみることをおすすめします。
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