知的障害とは?「IQ」と「適応機能」の関係、程度別の特徴や症状、診断基準について解説します

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知的障害とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を指します。その程度はさまざまで、一人ひとりの特徴も異なります。また知的障害は「知的機能(IQ)」だけで判断されるのではなく、「適応機能」と合わせて判断され、「軽度」「中度」「重度」「最重度」の4つの等級に分類されます。この記事では、知的障害の症状や特徴、診断基準などについて詳しく紹介します。

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監修: 井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
応用行動分析学
自閉症支援士エキスパート
LITALICO研究所 客員研究員
目次 知的障害とは? 知的障害の程度別の特徴・症状 年齢別に見た知的障害の症状の現れ方 知的障害の診断基準・方法 知的障害の疑いを感じたらどうすればいい? まとめ

知的障害とは?

知的障害とは、発達期までに生じた知的機能障害により、認知能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態を指します。

知的障害は厚生労働省によると以下のように定義されています。

知的障害は精神遅滞とも表される、知的発達の障害です。知的機能や適応機能に基づいて判断され、知能指数により分類されます。様々な中枢神経系疾患が原因となるため、正しい診断を受けて、早期に治療・療育・教育を行う必要があります。本人のみならず、家族への支援もかかせない発達障害のひとつです。

知的障害(ID: Intellectual Disability)は、医学領域の精神遅滞(MR: Mental Retardation)と同じものを指し、「知的発達の障害」を表します。すなわち「1. 全般的な知的機能が同年齢の子どもと比べて明らかに遅滞し」「2. 適応機能の明らかな制限が」「3. 18歳未満に生じる」と定義されるものです。中枢神経系の機能に影響を与える様々な病態で生じうるので「疾患群」とも言えます。

出典:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-004.html
よく学習障害(LD)と同じ障害だと思われがちですが、学習障害は知的発達に遅れがない発達障害です。

知的障害は「知的機能(IQ)」の数値のみによって診断がくだされるという印象がありますが、「適応機能」という日常生活能力、社会生活能力、社会的適応性などの能力を測る指数とも合わせて診断が下されます。

厚生労働省では「知的機能」「適応機能」は以下のように定義づけられています。

知的機能は知能検査によって測られ、知能指数(IQ)70以下を低下と判断します。IQ値によって、軽度・中等度・重度と分類されることもあります。重い運動障害を伴った重度知的障害を重症心身障害と表記することもあります。
適応機能とは、日常生活でその人に期待される要求に対していかに効率よく適切に対処し、自立しているのかを表す機能のことです。たとえば食事の準備・対人関係・お金の管理などを含むもので、年長となって社会生活を営むために重要な要素となるものです。

出典:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-004.html
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知的障害の診断は医療機関や地域によって異なりますが、一般的に知的障害は「知的機能」と「適応機能」の評価で「軽度」「中度」「重度」「最重度」の4つの等級に分類されます。
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知的障害の程度の診断基準
この図では、横軸に日常生活能力水準をaからdで取り、縦軸に「知的機能(IQ)」のレベルをIからIVに取っています。日常生活能力水準はaに近づくほど自立した生活が難しく、dに近づくほど自立した生活ができるということを表します。また同様にIQが低いほどIに近づき、IQが高いほどIVに近づきます。横軸と縦軸が合わさったところから、知的障害の程度を診断します。

以上の図では、知的機能が低かったとしても適応機能が高ければ、ひとつ軽度の等級で診断されることがわかります。このように、知的障害は知的機能検査だけで診断されると思われがちですが、知的機能と適応機能の2つが評価された上で診断が下されます。

知的障害の程度別の特徴・症状

先ほど述べたように、知的障害は「知的機能」と「適応機能」の2つが評価されて診断が下されます。以下では、知的障害の程度別に、よく見られる特徴や症状をご紹介します。年齢別に見た知的障害の症状の現れ方については、次の項をご参照ください。

軽度知的障害

軽度知的障害は、おおむねIQが50~70の知的障害をさします。食事や衣服着脱、排せつなどの日常生活スキルには支障がありません。しかし言語の発達がゆっくりで、18歳以上でも小学生レベルの学力にとどまることが多いです。

軽度知的障害の特徴としては、
・清潔、服の着脱を含めた基本的な生活習慣が確立している
・簡単な文章での意思表示や理解が可能
・漢字の習得が困難
・集団参加や友達との交流は可能
などが挙げられます。

中度知的障害

中度知的障害は、おおむねIQが35~50の知的障害をさします。言語発達や運動能力の遅れがあります。 身辺自立は部分的にはできますが、全てをこなすことは困難です。

中度知的障害の具体的な特徴としては、
・指示があれば衣服の着脱はできるが、場合に合わせた選択・調整が困難
・入浴時、自分で身体を洗えるが、プライベートゾーンなど洗い残しがある
・お釣りの計算が苦手
・新しい場所での移動・交通機関の利用は困難
・ひらがなでの読み書きはある程度可能
などが挙げられます。

重度知的障害

重度知的障害は、おおむねIQが20~35の知的障害をさします。言語・運動機能の発達が遅く、学習面ではひらがなの読み書き程度に留まります。情緒の発達が未熟で、身の回りのことを一人で行うことは難しいので、衣食住には保護や介助が必要になる場合もあります。

重度知的障害の具体的な特徴としては、
・着替え、入浴、食事などの生活に指示や手助けが必要
・簡単な挨拶や受け答え以外のコミュニケーションが苦手
・体の汚れや服の乱れをあまり気にしない
・一人での移動が困難
などが挙げられます。

最重度知的障害

最重度知的障害は、おおむねIQが20以下の知的障害をさします。言葉が発達することはなく、叫び声を出す程度にとどまることがほとんどです。身の回りの処理は全くできず、親を区別して認識することが難しい場合もあります。しかし、適切な訓練によって、簡単な単語を言えるようになるケースもあります。

最重度知的障害の具体的な特徴としては、
・衣服の着脱ができない
・便意を伝えられない
・言葉がない。身振りや簡単な単語で意思表示をしようとすることもある
・食事に見守りや介助が必要
などが挙げられます。

年齢別に見た知的障害の症状の現れ方

知的障害は、ダウン症や自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害、てんかんなど、他のさまざまな障害と合併して現れる場合も少なくありません。そのため、以下で紹介する特徴は全ての知的障害者に当てはまるわけではなく、他の障害との合併症であるものも含まれているということを理解してください。

では、知的障害のある人が直面することの多い特徴を年齢別にご紹介します。

乳幼児(0歳〜未就学児)

乳児期には心身がみ未発達なこともあり、はっきりとした特徴がわからないこともあります。成長にしたがって以下のような特徴や困りごとが見られるようになる場合が多いです。

■身体的な特徴
知的障害を引き起こす原因によって身体的特徴は異なります。例えばダウン症の場合は、低身長、鼻が低いなどの独特の顔つきが見られたり、体が柔らかかったりといった身体的な特徴が見られます。

■言葉や身体の発達が遅い
知的障害の赤ちゃんは言葉や身体的発達が遅いことがあります。

■質問に答えられない
言葉は分かるけれども会話ができない・質問にうまく答えられないなども知的障害の特徴の1つです。知的障害が重度の場合には、意思表示、そして相手の言葉の理解がとても困難な人もいます。

■友達と上手く遊べない
上記のような理由から友達ができなかったり、意思疎通がはかれず周りの子どもに馴染めないこともあります。

■けいれんの回数が多い
けいれんは、てんかんの症状などによる場合があります。高熱などの体調不良でも生じますが、ひんぱんに生じる場合は脳や代謝機能に問題がある場合があります。このような症状に気づいた場合には、早期の受診が必要です。

学齢期(6歳〜15歳)

■勉強についていけない
知的障害のある子どもは学年に見合った学力の習得が難しい場合が多いと言えます。学校の勉強についていけず、小学生になって初めて知的障害を疑うパパ・ママも多いそうです。

■日常の行動に時間がかかる
衣服の着脱や食事に時間がかかってしまうことがあります。指示が出されればできることも多いですが、日常生活において困難なことが増えてきます。

■学校での不適応
人と関わることが苦手だったり、社会性が低いことで友達ができにくい子どももいます。また、友達はいても上記で述べたように勉強についていけず、勉強自体が嫌で学校に行くことを抵抗する場合もあります。
■対人関係がうまく築けない
勉強ができないことや人間関係が原因で先生や親に反抗的な態度をとることがあります。知的障害とは気づかずに、日常生活や人間関係に悩んでいる可能性があります。その一方で、知的障害の人の中には素直すぎて、人のことをすぐ信じてしまう人の悪意や皮肉を感じ取れない人もいます。

■自分なりの独特な手順がある
知的障害は自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害との合併症もあります。自分のこだわりを持っていて、そのこだわりが変えられるのを極端に嫌がります。

青年・成人期(15歳〜)

■見通しを立てたり考えをまとめたりすることが苦手
物事を広い視野で考えて、「明日はこれがあるから今日はこれをしなければならない」と考えることが苦手です。そのため、スケジュール管理や予定を立てることを苦手とします。

また、何かを自分で決めないといけない時に判断することが苦手です。指示に従う、決められたことをするのは得意でも、自分で何か考えることが苦手です。成人期になると、毎日考えることが多くなります。とくに仕事をしていると、並行して複数のことを考えなければならないことが増えます。そのため、日常生活の困難が増し、症状が悪化してくることがあります。

■金銭的なトラブルに巻き込まれやすい
消費トラブルや金銭トラブルに巻き込まれる可能性もあります。また就労の困難がある場合もあります。適切な支援を利用したり、相談できる人をつくることも重要です。

■成人病のリスクが高い
偏食から糖尿病になるなど、健康管理が難しいこともあります。

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知的障害の診断基準・方法

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