軽度知的障害(知的発達症)とは? 「発達障害と何が違う?」「原因は?」「診断はどこで?」【専門家が監修】
軽度知的障害(知的発達症)は、言葉によるコミュニケーションや日常的な生活が可能なことから、気づかれにくいという特徴があります。しかし、抽象的な内容の認識に困難さがあり、学習面でのつまずきや複雑な対人コミュニケーションなどに難しさを感じることが多い障害です。
LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
軽度知的障害(知的発達症)とは?軽度、中度、重度、最重度の違い
この記事で分かること
- 軽度知的障害(知的発達症)とは? 中度・重度との具体的な違いや、「ただ発達が遅いだけ」との見分け方
- 「うちの子、もしかして…?」気づかれにくい軽度知的障害(知的発達症)のサイン【子ども・大人別の特徴リスト】と、先輩ママの体験談
- 知的障害の原因は遺伝?私のせい? 発達障害(ASD等)との違いや併存に関する疑問への答え
- 診断はどこで受ける?何科? 知的障害(知的発達症)の診断基準と、具体的な検査(WISC等)の流れ
- 【子ども・大人別】「知的障害かも?」と悩んだ時にすぐに動ける、具体的な相談先と窓口リスト
- 療育手帳はどうすれば取れる? 申請の全ステップと、学校・職場で頼める「合理的配慮」の具体例
知的障害(知的発達症)には程度の差があり、IQや適応能力などで「軽度」「中度」「重度」「最重度」の4段階に分けられます。後述の「分類の仕方」で詳しく解説します。
※現在、『ICD-11』では「知的発達症」、『DSM-5』では「知的能力障害(知的発達症/知的発達障害)」と表記されていますが、知的障害者福祉法などの福祉的立場においては「知的障害」と使用していることが多いため、この記事では「知的障害(知的発達症)」という表記を用います。
軽度知的障害(知的発達症)は幼児期には気づかれにくく、中には学齢期以降に不登校やひきこもり、うつ病や不安障害(不安症)などになったことをきっかけに相談機関や医療機関を訪れて、その背景として軽度知的障害(知的発達症)が診断されるというケースもあります。またASD(自閉スペクトラム症)などの併存症を伴っていることもあり、軽度知的障害(知的発達症)より併存症の診断が先行する場合もあります。
知能指数(IQ)と適応能力とは
平均とされる知能指数(IQ)は90~109といわれています。軽度知的障害(知的発達症)の知能指数(IQ)は、概ね50~69とされています。
●適応能力とは
適応能力とは身辺の自立(食事・着替え・排泄など)や家事、社会的な対人関係の構築、読み書き・コミュニケーションなど日常生活や社会生活上における全般的な能力のことを指します。
【専門家監修】知能指数(IQ)とは?目安、平均値、測り方、知能指数が低い場合の特徴や支援について解説
知的障害(知的発達症)軽度、中度、重度、最重度の分類の仕方
知能指数(IQ)が低かったとしても日常生活への適応能力が高ければ、一段階軽度の程度で判断されることもあります。
このように、知的障害(知的発達症)は知的機能と適応機能の2つが評価された上で診断されます。
またこの診断方式は、療育手帳を取得する際にも用いられます。療育手帳については6章で詳しく解説します。
知的障害(知的発達症)とは?「IQ」の基準や分類、「適応機能」との関係などを解説!【専門家監修】
軽度知的障害(知的発達症)の特徴は?
軽度知的障害(知的発達症)の大人、子どもそれぞれの特徴と気づきやすい場面は
軽度発達障害(知的発達症)がある大人は、物事を覚えるのに時間がかかる、または忘れやすい、計算や文章の読み取り、複雑な指示の理解が難しいため、仕事上での困りごとが多くなる場合があります。
また、言葉の表出や相手の気持ちを汲むなどのコミュニケーションが苦手な場合が多いため、職場で同僚や上司と人間関係を築きにくいという場面あるかもしれません。
周りからは身の回りのことは自分で行うことができ、ある程度仕事を行うことができるように見えてしまうため、生きづらさや理解されない悩みを抱える方も多いようです。
●軽度知的障害(知的発達症)の子どもの場合
軽度知的障害(知的発達症)がある子どもは言葉の遅れ、学習の苦手さがあるといわれています。
言葉は話せても、抽象的な意味を理解したり説明したりすることが難しかったり、文字の読み書きや計算など学習面で全般的な遅れがある場合もあります。また物事を記憶しておくことも苦手な傾向があります。
物事を概念的にとらえて学習するよりも直接的・経験的に学ぶ方が多く、このため経験の範囲を超えた知的な要求が増える学齢期以降に障害があることに気づくことが多いのです。
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軽度知的障害(知的発達症)ならではの戸惑いや併存症について
学齢期以降に障害が明らかになるケースでは、以前から症状には気づいていながらも診断を受けていなかったというケースと、診断をきっかけに症状に気づいたというケースがあります。
前者の場合は、症状がある程度みられていたため家族・親戚や学校なども、それぞれで既に本人に合わせた対応をしていることもありますが、改めて話し合い、接し方や合理的配慮などを考えていく必要があります。一方で後者のケースの場合は、まずは周囲への理解を得ていかなければならないため、「何からどうすればいいのか分からない」など、戸惑うことがあります。
■二次障害のリスクに注意
軽度知的障害(知的発達症)は、その特性が基となって周囲とのコミュニケーションが上手くいかないことや、不適合な環境やストレスなどが原因となって、行動面での問題が生じたり精神面での障害が生じてしまうリスクもあります。
例えばうつや不安症などの精神面の問題、パニックや自傷行動、破壊・攻撃的な行動、不登校やひきこもりなどがあります。場合によっては軽度知的障害(知的発達症)の症状よりも二次障害の症状が目立って表出する場合もあります。
■軽度知的障害(知的発達症)ある子どもの子育て体験談
ここでは、軽度知的障害(知的発達症)の体験談をご紹介します。
小さい頃から育てやすく、就学前までは子育てで特に大きな苦労を感じたことがないという娘さん。小学1年生で勉強につまづき、軽度知的障害(知的発達症)が分かったのは、小学校5年生でした。「今思えば……」と感じたことを語っていただいています。
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知的障害(知的発達症)の原因、発達障害との違い、関係は?
内的原因
この中にはてんかんや脳性まひなどのほか、ダウン症などの染色体異常による疾病も含まれます。知的障害(知的発達症)の原因の約8割が出生前に発生していることが分かっており、以下のような疾病があげられます。
・ダウン症
・多因子性疾患
・てんかん
・脳性まひ など
※上記にあげたものは必ずしも知的障害(知的発達症)をともなうわけではありません。
また、中には特に疾病名などがなくても内的原因によって知能水準が知的障害の範囲内にあるといった場合もあり、生理的要因と呼んで区別されます。
外的原因
中には知的障害(知的発達症)だけでなく、発育の遅れや中枢神経に何らかの異常をきたす恐れもあります。
また出産時のトラブルでの頭蓋内出血、出生後の感染症への感染、事故などによる発達期の頭部外傷が原因になることもあります。このことを環境要因と呼びます。
・感染症
・出産時、出産後に起こった頭部の外傷
・出産時のトラブル など
知的障害(知的発達症)の原因は?遺伝との関連はあるの?【専門家監修】
発達障害との関係は?
知的障害(知的発達症)と発達障害の概念を図で表すと以下のようになります。
知的障害(知的発達症)と発達障害は生活するうえで困りごとが多くあるという共通点はありますが、「何が原因で、この困りごとが起こっているのか」ということが違うため、対応方法が異なります。併存している場合は、生じている困りごとが知的障害(知的発達症)が原因なのか、発達障害からなのかを把握し、それぞれに合わせた対応をすることが大切です。
知能検査とは?知能指数(IQ)や検査の種類、結果の活かし方など【専門家監修】
知的障害(知的発達症)の診断基準と検査方法
臨床診断では何をするの?
■生育歴
産まれてから今までの社会性や対人コミュニケーション、言葉の発達、幼稚園・保育園での様子や1歳半健診・3歳児健診での様子などをヒアリングします。発達面で知的障害(知的発達症)の疑いがありそうか、発達にどんな特性がありそうかなどを見立てていきます。
■行動観察
遊びの空間で子どもを遊ばせ、それを注意深く観察することと保護者の方へのインタビューに基づいて行われます。
知的障害の診断・検査の内容は?診断の年齢や相談機関、診断までのプロセスまとめ
知能検査・適応能力検査・脳画像診断など
■田中ビネー知能検査 V(ファイブ)
2歳から成人まで受けることができます。就学する5~6歳の年齢にフォーカスをあて、特別な配慮が必要かどうかを判断するための「就学児版田中ビネー知能検査V(ファイブ)」という検査もあります。子どもが興味を持てるように、検査に使われる道具が工夫されています。日常生活において必要な知能と、学習する上において必要な知能の2つを測定します。
■ウェクスラー式知能検査
ウェクスラー式知能検査は、年齢ごとに3つのテストに分類されます。
・幼児(2歳6ヶ月〜7歳3ヶ月)→WPPSI
・児童(5歳から16歳11ヶ月)→WISC
・成人(16歳〜)→WAIS
全般的なIQが求められるだけでなく、個人の中の強みや苦手さを、下位検査を用いて導出し、総合的に判断することができます。
■新版K式発達検査
年齢において一般的と考えられる行動や反応と、対象児者の行動や反応が合致するかどうかを評価する検査です。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。検査結果としては、この3領域の「発達指数」と「発達年齢」が分かります。検査者は検査結果だけでなく、言語反応、感情、動作、情緒などの反応も記録し、総合的に判断します。
■Vineland-II(全年齢)
0歳から92歳の幅広い年齢帯で、同年齢の一般の人の適応行動をもとに、発達障害や知的障害(知的発達症)、あるいは精神疾患のある人たちの適応行動の水準を客観的に数値化する検査です。対象者にどんな特性があるのかを評価してくれます。また教育や福祉分野の個別支援計画の立案はVinelandの評価に基づいて行われることがあります。
そのほかにも適応能力の検査として、以下の検査がよく使われています。
・ASA旭出式社会適応スキル(幼児〜高校生)
・S-M社会生活能力検査(乳幼児〜中学生)
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知的障害(知的発達症)かもと思ったら?子ども、大人の相談先
【子どもの場合】
・保健センター
・子育て支援センター
・児童相談所
・発達障害者支援センター など
【大人の場合】
・発達障害者支援センター
・障害者就業生活支援センター
・相談支援事業所
・知的障害者更生相談所 など
相談機関では、知的障害(知的発達症)のことだけでなく子どもの発達全般について相談することも可能です。自宅の近くに相談機関がない場合には、電話での相談にものってくれることがあります。先に挙げたような検査は、機関によっては無料で受けられる場合もあります。
療育手帳の取得、合理的配慮について
療育手帳の取得
対象者は、
・おおむね18歳以前に知的機能障害が発症し、それが持続している。
・標準化された知的検査によって測定された知能指数(IQ)が概ね75以下(70以下に規定している自治体や、70以上でも発給する自治体があるなど地域差があるため確認しましょう)。
・日常生活に支障が生じているため、医療、福祉、教育、職業面で特別の援助を必要とする。
18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所において知的障害と判定された方に対して交付されます。
また、全国的には「療育手帳」と呼ばれていますが、東京都、横浜市などでは「愛の手帳」、青森県・名古屋市などでは「愛護手帳」など違う名称をつけている自治体もあります。
具体的な制度、サービスの内容は、お住まいの自治体の福祉担当窓口に問い合わせてみるといいでしょう。
療育手帳とは?受けられるサービスや他の障害者手帳との違いなど【行政書士監修】
合理的配慮
2016年4月1日に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(通称、「障害者差別解消法」)により、行政機関や事業者には、障害のある人に対する合理的配慮を可能な限り提供することが求められるようになりました。
本人を取り巻く周辺の人が合理的配慮を考える上での重要なポイントは、「その人が具体的にいつ、どんな場面で困っているのか」「その困りごとを解消するための適切な配慮は何か」の2点です。これらを踏まえながら学校や職場などの合理的配慮を検討・実施することが大切です。合理的配慮に関しては次のリンクを参考にしてみてください。
合理的配慮とは?考え方と具体例、合意形成プロセスについて【専門家監修】
「合理的配慮」を学校にお願いする前に、やっておきたい3つのこと
担任の先生に「合理的配慮」の相談をするときの実例9つのヒント
まとめ
学校の勉強に追いつけない、友達とのコミュニケーションが上手くいかない、友達関係も上手くいかないなどの困りごとが増えていき、年齢を追うごとに自然と困難な場面に出会うことが多くなるのも一種の特徴です。
軽度知的障害(知的発達症)があっても、学校ではやるべきことを分かりやすく整理する、繰り返し学習するなどで定着していきます。職場などでは、言葉や数字で具体的に説明する、業務指示は一回にひとつにする、仕事は段階的にスモールステップで増やすなど合理的配慮をすることで、ストレスなく仕事をすることができます。
また、スマートフォンやアプリもさまざまな場面で有効なツールとなります。本人の自己肯定感を低下させないよう合理的配慮によって学習や社会に自信を持って参加できるような支援を行なっていきましょう。
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