軽度知的障害とは?軽度知的障害の特徴と判明しやすい時期、本人に合った学習・支援方法まとめ

2016/12/15 更新
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軽度知的障害は抽象的な内容の認識に困難さが生じることから、学習面でのつまずきや対人コミュニケーションなどの難しさを感じることが多い障害です。成長するにつれて症状が顕著に現れることから幼少期には気づかれにくく、思春期の多感な時期に診断されることがあります。抽象的な認識は苦手ですが、経験を重ねることで認識の幅を広げていくことができます。それでは紹介していきます!

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発達障害のキホン
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監修: 井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
応用行動分析学
自閉症支援士エキスパート
LITALICO研究所 客員研究員
目次 軽度知的障害とは? 軽度知的障害の原因って? 軽度知的障害の特徴の現れ方 軽度知的障害の診断基準と検査方法 軽度知的障害の疑いを感じたら? 軽度知的障害ならではの戸惑いや合併症などの悩みって? 軽度知的障害との向き合い方・学校等での配慮のポイント 軽度知的障害でも療育手帳は取得できるの?申請方法もご紹介します まとめ

軽度知的障害とは?

軽度知的障害とは、発達期までに生じた知的機能の障害により、知的発達が実年齢よりも低い知能指数(IQ)50~69の水準にとどまり、適応能力は正常またはやや遅れがある状態を指します。

ことばや抽象的な内容の理解に遅れがみられることがありますが、身の回りのことはほとんど一人で行うことができます。学業面では遅れを感じることもありますが、年齢を重ねながら考える力を身につけられます。

よって幼少期には気づかれにくく、小学校高学年以降に不登校やひきこもり、うつや不安障害などにおちいってしまい、相談機関や医療機関を訪れ、その背景として軽度知的障害が診断されるケースもありますが、多くは見過ごされがちです。また自閉症スペクトラム障害などの合併症を伴っていることもあり、合併症の方が目立って表出しているケースもあります。

なお発達期とはおおむね18歳までを指し、それ以降に事故や病気などで知的機能の低下が発症しても、知的障害および軽度知的障害とは言いません。

現在の知的障害の定義の多くは、アメリカ精神遅滞協会が提唱した定義を参考にしています。以下はアメリカ精神遅滞協会が定めた定義です。

知的障害は、知的機能および適応行動(概念的、社会的および実用的な定期追うスキルで表される)の双方の明らかな制約によって特徴づけられる能力障害である。この能力障害は、18歳までに生じる (AAMR,2002)

出典:http://amzn.asia/9EunXSe
知的障害は、染色体異常を原因とするダウン症のように出生後にすぐ診断できる疾病に合併する場合もあれば、自閉症のように生後すぐには診断できない障害に合併することもあります。

知能指数(IQ)と適応能力って?

知能指数とは人の知能の基準を数値化したものです。ここでいう知能(IQ)とは、いわゆる学力ではなく、目的に沿って合理的に考え、効率的に環境を処理する総合的な能力のことをいいます。IQ90~109が平均の知能指数であり、そこからどのくらい高いか・低いかと考えます。軽度知的障害のある人は、概ね知能指数(IQ)が50~69にとどまるとされています。

適応能力とは身辺の自立(食事・着替え・排泄など)や家事、社会的な対人関係の構築、読み書き・コミュニケーションなど日常生活や社会生活上における全般的な能力のことを指します。能力の測定は、自分の強み・弱みを理解するために行います。
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(厚生労働省の資料をもとに作成)
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この図は的障害の程度・区分を示した図です。横軸に「日常生活能力水準」、縦軸に「知能指数(IQ)」の程度を表しています。日常生活能力水準がaに近づくほど自立した生活が難しく、dに近づくほど自立した生活ができることを表します。同様にⅠに近づくほどIQが低く、IVに近づくほどIQが高くなります。

知的機能が低かったとしても日常生活への適応能力が高ければ、ひとつ軽度の程度で判断されることがあります。IQ36~50の方でも適応能力が高ければ軽度知的障害に含まれます。一方で、IQ51~70の方でも日常生活への適応能力が低い場合は、中度知的障害に含まれる場合もあるということです。

このように、知的障害は知的機能検査だけで判断されるわけではなく、知的機能と適応機能の2つが評価された上で診断されます。

またこの程度を分類する方式は、療育手帳を取得する際にも用いられています。ただし、療育手帳の取得には地域差があり注意が必要です。療育手帳については8章で詳しく説明していきます。
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軽度知的障害の原因って?

知的障害の原因は一つではなく、原因不明の知的障害の人も多いとされています。原因解明の研究が進んでいますが、現段階では内的原因と外的原因に分類することができるといわれています。

内的原因

内的原因とは遺伝子や染色体の異常など、子どもが先天的にもつ原因のことをいいます。病気や外傷など脳障害をきたす疾患で、これらの合併症として知的障害が一緒に起きることを病理的要因と呼びます。

この中にはてんかんや脳性まひなどのほか、ダウン症などの染色体異常による疾病も含まれます。軽度知的障害および知的障害の原因の約8割が出生前に発生していることが分かっており、以下のような疾病があげられます。

・ダウン症
・多因子性疾患
・てんかん
・脳性まひ など
(上記にあげたものは必ずしも知的障害をともなうわけではありません。)

また、中には特に疾病名などがなくても内的原因によって知能水準が知的障害の範囲内にあるといった場合もあり、生理的要因と呼んで区別されます。

外的原因

外的原因とは出生前後に起こった事故や養育環境などによる外的な要因が、原因となることをいいます。具体的には出生前に母体を通じて感染症や薬物・アルコールなどの大量摂取などにより、子どもに影響を及ぼす場合があります。

中には軽度知的障害だけでなく、発育の遅れや中枢神経に何らかの異常をきたす恐れもあります。

また出産時のトラブルでの頭蓋内出血、出生後の感染症への感染、事故などによる発達期の頭部外傷が原因になることもあります。このことを環境要因と呼びます。

・感染症
・出産時、出産後に起こった頭部の外傷
・出産時のトラブル など
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軽度知的障害の特徴の現れ方

軽度知的障害は知的機能と適応能力にやや遅れがあるものの、身の回りのこと(食事・洗面・着衣・排泄など)は自分で行うことができます。空間・時間・数量の認識に特徴はありますが、自ら学び取る力もあり、経験を重ねることで得られる知識や学びは広がります。

軽度知的障害の人の空間・時間・数量認識の特徴

軽度知的障害の方は空間・時間・数量の認識にどのような特徴があるのでしょうか。順番に説明していきます。

◆空間の認識:
「今いる場所」「何度か行った場所」「行ったことがない場所」と、自分と空間の関係を分類した場合、軽度知的障害の方は、自分が行ったことのない場所でも、その場所が存在していることを理解することできます。

知的障害があると、目に見えないものや、抽象的な概念を理解することは苦手と言われていますが、軽度知的障害の場合はある程度はその概念を理解することもできるといえるでしょう。

◆時間の認識:
時計を見て「ご飯を食べる時間」「寝る時間」「学校へ行く時間」などと、時間帯とやるべきことを関連づけて理解できます。また過去や未来という概念も理解できます。一方で、時間の長さを計ったり、何時間後は何時になるという計算などになると、とまどうことがあります。しかし、トレーニングを積むことである程度は解消できるようになります。

◆数量の認識:
「100円玉2枚で飲み物を買うことができる」というように、自分の経験と結びつけて理解することができます。おつりがいくらになるかなど、細かい計算を瞬時に行うことは難しいですが、足し算や引き算などのトレーニングを積むことによってある程度のスピードでできるようになります。

軽度知的障害がある子どもは、自分が経験してきたことを元に物事を理解していきます。認識できる世界を広げていくためには、さまざまな経験をすることが重要です。

また、現代では地図を読んだり電車の時刻表を見たり、お金の計算をしたりといった軽度知的障害の人の苦手な部分はスマートフォンやアプリの利用によって克服できるものも多くなってきています。そういったデバイスを活用することで適応能力をアップさせることも可能と言えます。

周りの人たちが軽度知的障害の特徴に気づきやすい場面

軽度知的障害がある子どもは言葉の遅れ、学習の苦手さがあるといわれています。

言葉は話せても、抽象的な意味を理解したり説明したりすることが難しかったり、文字の読み書きや計算など学習面で全般的な遅れがある場合もあります。

また物事を記憶しておくことも苦手です。記憶には「短期記憶」と「長期記憶」が存在しますが、短気記憶を繰り返し思い出すことにより、長期記憶として蓄えられていくと言われています。

軽度知的障害があっても、身のまわりのことは年齢を追うごとに問題なく発達します。しかし物事を概念的にとらえて学習するよりも直接的・経験的に学ぶ方が多く、このため経験の範囲を超えた知的な要求が増える小学校高学年以降に障害があることに気づくことが多いのです。

軽度知的障害の診断基準と検査方法

軽度知的障害の確定診断は臨床診断と各種検査の結果によって総合的に診断されます。

臨床診断では何をするの?

医療機関を受診した際の臨床的な診断として、生育歴と行動観察について聞き取りを行います。

■生育歴
産まれてから今までの社会性や対人コミュニケーション、言葉の発達、幼稚園・保育園での様子や1歳半健診・3歳児健診での様子などをヒアリングします。発達面で知的障害の疑いがありそうか、発達にどんな特性がありそうかなどを見立てていきます。

■行動観察
遊びの空間で子どもを遊ばせ、それを注意深く観察することと保護者の方へのインタビューに基づいて行われます。

知能検査・適応能力検査・脳画像診断など

知能検査では主に田中ビネー知能検査や「ウェクスラー式知能検査などの知能検査によって知能指数(IQ)を評価します。また2歳未満の子どもの場合や医師から必要と認められた場合は知能検査に代わる記述式の発達検査や、新版K式発達検査などの実施式の発達検査を受けることもあります。適応能力の検査ではvineland-II(ヴァインランド)、ASA旭出式社会適応スキル、S-M社会生活能力検査などがよく使われています。

■田中ビネー知能検査 V(ファイブ)
2歳から成人まで受けることができます。就学する5~6歳の年齢にフォーカスをあて、特別な配慮が必要かどうかを判断するための「就学児版田中ビネー知能検査V(ファイブ)」という検査もあります。子どもが興味を持てるように、検査に使われる道具が工夫されています。日常生活において必要な知能と、学習する上において必要な知能の2つを測定します。

■ウェクスラー式知能検査
ウェクスラー式知能検査は、年齢ごとに3つのテストに分類されます。
・幼児(3歳10ヶ月〜7歳1ヶ月)→WPPSI
・学生児(5歳から16歳11ヶ月)→WISC
・成人(16歳〜)→WAIS
全般的なIQが求められるだけでなく、個人の中の強みや苦手さを下位検査を用いて導出し、総合的に判断することができます。

■新版K式発達検査
年齢において一般的と考えられる行動や反応と、対象児者の行動や反応が合致するかどうかを評価する検査です。検査は、「姿勢・運動」(P-M)、「認知・適応」(C-A)、「言語・社会」(L-S)の3領域について評価されます。検査結果としては、この3領域の「発達指数」と「発達年齢」が分かります。検査者は検査結果だけでなく、言語反応、感情、動作、情緒などの反応も記録し、総合的に判断します。

■vineland-II(全年齢)
0歳から92歳の幅広い年齢帯で、同年齢の一般の人の適応行動をもとに、発達障害や知的障害、あるいは精神障害の人たちの適応行動の水準を客観的に数値化する検査です。対象者にどんな特性があるのかを評価してくれます。また教育や福祉分野の個別支援計画の立案はVinelandの評価に基づいて行われることがあります。

その他にも適応能力の検査として、以下の検査がよく使われています。
・ASA旭出式社会適応スキル(幼児〜高)
・S-M社会生活能力検査(乳幼児〜中学生)

軽度知的障害の疑いを感じたら?

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