アスペルガー症候群(AS)の治療と療育法は?薬は効果的なの?

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アスペルガー症候群の治療や薬にはどんなものがあるのでしょうか? 何歳から始めたらいいのか、どんな内容で治療を進めていくのか、子どもと大人の治療法は違うのかなど、わからないことがたくさんありますよね。今回はアスペルガー症候群の治療と薬について一緒に学んでいきましょう。

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監修: 井上 雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授
応用行動分析学
自閉症支援士エキスパート
LITALICO研究所 客員研究員
目次 アスペルガー症候群(AS)の原因は? アスペルガー症候群って治療できるの? アスペルガー症候群の治療の判断基準は?いつから始めるべきなの? アスペルガー症候群の治療法・療育法 接し方で大きく変わる! アスペルガー症候群の子どもへの接し方のポイント 特性を理解し、良いところを伸ばしてあげましょう

アスペルガー症候群(AS)の原因は?

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アスペルガー症候群(AS)は社会性やコミュニケーションなどに困難のある障害です。アメリカ精神医学会の診断基準である『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』第5版)では自閉症スペクトラムの診断名のもとに統合されたため、診断名としては今後、減っていくことが予想される障害名ですが、行政や一部の医療機関ではICD-10の診断名であるアスペルガー症候群を引き続き使用しており、また、すでに確定診断をうけている当事者も多いことから、本記事では「アスペルガー症候群」について治療と療育法をご紹介します。

アスペルガー症候群が先天的な障害であることは確かですが、現代医学でもいまだにはっきりした原因はわかっていません。現在、研究やデータ解析が進められている段階です。

一番有力視されているのは「脳機能障害」で、脳内のネットワークの連結機能がうまくいかない、脳の部位の機能異常、脳内物質の異常などが考えられます。先天的に脳に何らかの障害が発現し、アスペルガー症候群を引き起こしているということです。ですが、この何らかの障害となる要因が解明されておらず、また複数の要因が複雑に影響し合っていると考えられることから、確かな原因は不明なままなのです。

アスペルガー症候群って治療できるの?

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アスペルガー症候群は原因と要因が明確ではないため、現段階では医学的な根本治療はありません。

しかし、アスペルガー症候群の特徴を和らげたり、学校や職場でスムーズに対応できるようにトレーニングや療育を受けることはできます。また、二次障害を抑えるための治療やトレーニング、療育、サポート学習なども本人の生きづらさを減らすために有効です。個々の特性に合わせたトレーニングや療育を積むことで実生活が過ごしやすくなったり、コミュニケーションがスムーズに取れるようになったりします。

これらの治療を行うのと行わないとでは、普段の生活や本人が感じる生きやすさに明らかな差が出るとされています。なるべく早めに本人の困難や生きづらさに気づき、診断を受けるなど専門家のサポートを受け、環境調整や療育などで適切な対処法を続けることが何よりの治療と言えるでしょう。

アスペルガー症候群の治療の判断基準は?いつから始めるべきなの?

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アスペルガー症候群は先天的な発達障害のひとつですが、そもそも診断自体、個々のケースによって障害が明らかになる時期がちがいます。

発達障害は、言語・認知・学習といった発達領域が未発達の乳児の時期には、特徴が分かりやすく出ることはありません。ですから、生後すぐにアスペルガー症候群の診断がでることはありません。またアスペルガー症候群の特徴は他の発達障害の特徴と共通し、併存することもあるので、診断が難しいことがあります。後から振り返って乳児期に目を合わせない、人見知りをしない、などの気がかりな徴候や何らかの育てにくさを感じたパパ・ママは多くいます。

そして幼児期以降、園などで集団生活が始まる頃になると、周りの子との何らかの違いやその子の特性が現れてきます。目が合っても笑わない、同年代の子と上手に遊べない、ストレートで他人を傷つけるような発言をするなどの特徴が顕著になり、困りごとが出てきた場合、家族がアスペルガー症候群の可能性に気づいたり、医療機関や保育士などに指摘されたりして、診断を受けるケースが多くなります。ただし、気づかないまま大人になってしまうことも大いにあり得ます。

ですが、アスペルガー症候群にとって、早期発見・早期療育が何より重要です。大切なのは、子ども本人が困っているという視点に立つことです。周りが「障害かもしれない」と気づき、そして専門家の助けをいち早く得ることで、本人の生きづらさが軽減できるのです。

早期療育は効果が出やすいとも言われています。なにより、本人や周りが障害への正しい理解をし、早く適切な対処法を身につけることで、その子にとってコミュニケーションがうまくいかず、つらい時間を短くすることができます。これらの特徴やトラブルが顕著であれば「気になる」時点で専門機関に相談し、できるだけ早く治療・療育を実行していくとよいでしょう。

アスペルガー症候群の治療法・療育法

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療育による対応法

アスペルガー症候群は現代の医療では、完全に症状を治療することはできません。しかし療育を受けることによってアスペルガー症候群の特徴を緩和させたり、困りごとを軽減したり、また、子どものよい部分を伸ばしていくことが可能です。療育は言葉や身体機能など発達に遅れのみられる子どもについて、生活への不自由をなくすよう専門的な教育支援プログラムにのっとり、トレーニングをしていこう、というものです。またその目的や分野についてはさまざまな種類があります。

会話が苦手な子であれば、絵を描くことでその子の感情を読み取ったり、話題になりやすいような工夫をしてあげることが可能です。絵本や図鑑などを見ながらその子の特性を把握したり、その子が興味を持つ事柄を探り当てたり、集中しやすい物事は何なのかを確認していく作業などが行われます。簡単な心理テストや適性検査を成長段階に合わせて行い、治療方向の確認や修正などをこまめに行っていくのが特徴です。

療育で行われる具体的なトレーニングは以下のようなものです。

■TEACCH(ティーチ、Treatment and Education for Autistic and related Communication handicapped Children)
自閉症スペクトラム障害の援助プログラム
※DSM-5において、アスペルガー症候群は自閉症スペクトラム障害に統合されています。

■ABA(エービーエー、Applied Behavior Analysis)
応用行動分析。広汎性発達障害に対する療育だけでなくスポーツ分野でも利用されている

■SST(エスエスティー、ソーシャルスキルトレーニング)
対人関係をうまく行うための社会生活技能を身につけたり、障害の特性を自分で理解し自己管理をするためのトレーニング

これらの療法の原理や要素を取り入れ、視覚的な支援や環境調整、動機づけをしたりやる気をあげたりするための支援など、様々なプログラムが行われています。
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薬物による治療法

症状を緩和させるため、投薬治療が行われることがあります。また、統合失調症や強迫性障害といった併存障害の治療で薬物療法が取られる場合もあります。脳と精神状態を確認しながら適切な薬を処方されますが、感覚過敏を抑えるために気分安定薬が処方される場合があります。

しかし、薬には副作用もありますし、人によって合う合わないがあります。低年齢の子どもの場合はより慎重に進めるべきという専門家もいます。主治医の先生と信頼関係を築き、よく相談した上で納得して治療を進めるとよいでしょう。不安に思うことや懸念点などはなんでも聞くようにし、適切な用法や用量を守ることが大切です。また、ただ薬を利用して子どもを落ち着かせるのではなく、落ち着いている時には必ずスキルトレーニングなどを行いましょう。

接し方で大きく変わる! アスペルガー症候群の子どもへの接し方のポイント

アスペルガー症候群の子どもを持つと、戸惑いや疑問点が多く、普段の生活でもどのように接していけばいいのかわからないと悩む親も多いようです。アスペルガー症候群の子は確かにこだわりが強く、コミュニケーションを取るのが苦手な面があります。障害のない子と比べて接し方が難しいと感じる点もあるかもしれませんが、親の接し方一つで、その子の長所が良い方向に延びる可能性は大いにあります。また、よりよい親子関係が築けるきっかけにもなります。

以下に具体的な接し方のポイントを5つまとめました。

1.アスペルガー症候群の特性を理解する

知的な遅れがなく、優れた集中力や記憶力を発揮することもあるアスペルガー症候群。そのため家族は障害をなかなか受け入れがたい気持ちにもなり、悩みは深いのではないでしょうか?また、周囲の無理解や誤解もあるでしょう。

アスペルガー症候群の子はコミュニケーションを苦手とし、対人関係を築くのを不得意と感じる子が多いです。家族に懐かなかったり、愛情を示すことも苦手な場合がありますが、周りの大人が正しくアスペルガー症候群について理解をすることがまずは第一歩。「この子はコミュニケーションをとるのが苦手なんだ」と一種の特徴として考え、接しましょう。対人的なコミュニケーション能力や人間関係構築のスキルは、専門機関や周囲の支援で訓練を受ければ改善が見込まれます。

2.相手の感情を認識できるようにサポートする

人の気持ちを理解することが得意でなく、思ったことを悪気なくなんでも口に出してしまいます。例えば「太ってるね!」「あの人変な格好だね」など、相手の気持ちを考えずに発言してしまうときがあります。

そこで親は叱ってしまいがちなのですが、アスペルガー症候群の子はなぜ叱られているか理解できません。ただ叱るのではなく、はっきりと言ってはいけないことだと伝えます。「●●ちゃんに○○のことは言わないでね」と具体的に伝えると理解して、言わなくなります。相手の気持ちを認識できるように声かけもしましょう。「○○という言葉を言われると悲しい気持ちになるんだよ」「●●ちゃんは傷つくんじゃないかな?」など感情を認識させるという方向にシフトするように持っていきましょう。

3.ネガティブな気持ちを受け止めながら励ます

他の人とは違う、うまくできないなど悲観的になり、悩んだり落ち込んだりしやすいのも特徴です。そんな時は「うまくいかなくてつらいんだね」とネガティブな気持ちをそのまま受け止めてあげましょう。そして「自分は何があってもあなたを愛しているし、あなたが大好き」と肯定し、励ましてあげてください。

また、「ダメ」「いけない」や「○○しなさい」といった言葉は、たとえ日常会話で使っていたとしても、怒られているのではないかと過敏に感じる傾向があります。そういう意図でなくても本人は「怒られてしまった」と自信を無くしがちです。否定語や命令形の言葉を使うのは避けるようにしましょう。

4.伝え方を工夫する

アスペルガー症候群の特性がある子は、比喩や遠回しの表現を理解するのに困難を示すことが多いです。また、相手の表情やしぐさをよみとり行動するのも苦手と感じる子が多いです。指示するときやコミュニケーションをとるときは、特性を理解し、その子にとってわかりやすい方法を考えましょう。

■指示は分かりやすくはっきりと
わかりやすく短い言葉で具体的に指示を出してあげましょう。具体的な指示を出された場合はきちんと行動できることが多いです。「椅子に座ろうね」「電気を消してね」など、指示は一つずつ出すと、その子の混乱を防ぐことができます。

■言葉は省略せずに伝える
「履いて」ではなく「靴を履いてね」、「青い色の靴」、「マジックテープの靴だよ」などと省略せずに具体的に指示を出すことも効果的です。「あれ」「そっち」などの代名詞も避けましょう。

■視覚的な伝え方をする
言葉だけでは伝わりにくい場合もあります。そんな時はジェスチャーや写真、イラストなどを使って、視覚的にもサポートしてあげましょう。手作りカードを持ち歩けば、場所や環境が違っても落ち着いて指示に従えたり行動できる手助けになります。

■「いつもと違う」は事前に伝える
急な予定変更にうまく適応できない子も中にはいるので、予定はあらかじめ教えてあげるようにしましょう。

5.「叱る」のではなく「教える」ように努める

感情的に叱っても、内容は伝わらないうえ、「叱られた」というネガティブな気持ちだけが残ります。叱るのではなく、教えるというスタンスのもと、どのように日々生活すべきかを具体的に教えるようにしましょう。一度に多くの物事に取り組むのではなく、一つ一つこなしていけるように課題を提示しましょう。また、あいまいな表現はさけ、上で述べたように短い言葉で指示をっだしましょう。

特性を理解し、良いところを伸ばしてあげましょう

原因がはっきりとしていないことから、治療や薬に関して不安になってしまうことも多いでしょう。ですが、アスペルガー症候群は長所や強みを伸ばせば「天才肌」「芸術肌」と呼ばれる才能ある大人に成長することもあります。

子どもの特性を把握し、専門機関と一緒にサポートしていくことで親の負担も軽くなります。一人で抱え込まずに、その子と向き合いながらゆっくりと治療を進めるようにしましょう。治療や訓練に疑問が出たら、迷わず担当医や相談機関の支援員に相談してください。
図解 よくわかるアスペルガー症候群
広瀬 宏之 (著)
ナツメ社
発達障害の薬物療法-ASD・ADHD・複雑性PTSDへの少量処方
杉山登志郎 (著)
岩崎学術出版社
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